深夜三時の誘惑
今日はあんまりお腹が空いてないから晩ご飯を食べなくていいや。そんなことを思った夜八時の自分を呪ってやりたい。時計の短針と長針がてっぺんをゆうに過ぎた時間にお腹が空きすぎて目が覚めるという、なんとも情けないことになってしまった。睡眠欲に勝る欲求などないと目を瞑っても、一度空腹に気づいてしまった今眠ろうとすればするほど食欲が目覚めてくる。腹の虫が鳴くのを耳にしてようやく眠るのを諦めて布団から起き上がり、キッチンへ向かってミネラルウォーターを口にする。少しは腹に溜まることを期待したが、それとは裏腹に腹の虫は活発になる。もう一度ミネラルウォーターを口にしたとき、足音が聞こえて振り返る。きみは「もしかしてお腹空いちゃった?」と聞き、一瞬ためらいを見せた後頷くといたずらっ子のように笑う。「ぼくたち大人だから悪いことしちゃおっか」そう言って手を伸ばした先にあったのはカップラーメン。お湯を注いで三分で出来上がる優れものだ。眠たい目をこすりながら電気ケトルに水を入れ、せっかくだからチーズとかも入れちゃう? と提案するきみの背中や横顔を見ていたら、お湯が沸くまでの時間もきみ特製のカップラーメンが出来上がるまでの時間も楽しく過ぎていく。
時計は深夜三時を指している。深夜にこんな高カロリーなカップラーメンなんて食べたら太るなとか肌が荒れるなとか色んな考えが頭の中を駆け巡ったけど、美味しそうに麺を啜るきみを見ていたらそんなのすべてどうでもよくなってしまって、倣うように麺を啜れば美味しさが口いっぱいに広がった。
それは深夜三時がかけた魔法か、それとも。
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