きみとわたしのものがたり

@foxglove_tree

おんなごころと秋の空

 女心と秋の空ということわざは、秋の空模様のように移ろいやすい女性のことを表しているという。この言葉を知ってから九回秋が訪れたというのに、微動だにしないわたしの心は男なのかと自嘲して辞書を引けば、元は男心と秋の空から来た言葉だというのだからお手上げだ。

 ことわざを知るまでに訪れた三回の秋を足して十二年。年齢の十の位が〇だったはずが気づけば二に変わり、少女と言える年齢も過ぎ、取り巻く環境も、築いた友人関係も変化が訪れているのに、たった一つだけ変わらない。わたしの視線の先にはずっときみがいることだけが。

 紅葉を見に行こうときみは言う。いつからそんな趣味ができたのかと笑いながら足を運べば、昔のようにどんぐりやまつぼっくりを拾い集める。少年の頃にしたように、それらをポケットいっぱいに詰め込むことはなくなったけれど、拾ったそれらを手のひらにおさめて満足そうに笑む姿は変わらない。少年のように、少年のまま、あの頃と何も変わらなければどれだけ幸せだっただろう。

 わたしよりも背が低かったはずのきみはいつの間にかわたしを追い越して、きみの背中に回ればすっぽりとわたしが隠れてしまうくらい、きみは大きくなった。きみのあだ名がチビスケであったことを、わたし以外はもう覚えていないかもしれない。

 幾度も秋が訪れて、体だけ大人になって、きみの笑顔は変わらなくて。移ろってくれと願うのは、きみを思うこの気持ちか、誰かを思うきみの気持ちか。

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