ウルオシテ
「うっ……うぅっ……」
誰かのすすり泣くような声がする。
「誰か泣いてない?」
リプリオも聞こえる?行ってみよう!
私達は泣き声のする方へ駆けていく。
そこにはこの世界の端っこに小さく灯る青い光。
「ここは……どこですの……ううっ……」
「なあに泣いてんのよ!」リプリオが青に声を掛ける。
「えっ!?あなた達は!?」
青は驚いて泣く気持ちが収まったようだ。
「あたしは幻獣リプリオ。目覚めたばかりだけどね、元はあんたと同じ神様の能力のひとつよ。あんたは何になるのよ?」
「何に、なるとは?」
なりたい姿に変われるよ。なりたい自分を思い浮かべてみて。リプリオもそうやって目覚めたんだ。
「まぁ。そんなことが出来るのね。そう、じゃあ私は」
青い光がふわふわと縦長に大きくなっていく。ぱっと光は花が咲くように開き、そこから姿を現したのは。
潤んだ瞳は空を映したような青。髪は波をうち流れるように腰まで長く。真珠のようにつやめく人の肌の顔、首、肩、腕……胸からは偏光して煌めく鱗に覆われて、その先に脚は無く、しなやかに水面を打つ魚のような二枚の綺麗なヒレ。幻想的、という他無い。
「これが、私?そうよ、私だわ!私の名前は人魚マーイ、知恵と美貌の人魚として生まれたの!」
マーイが両手を上げ天を仰ぐと、歩いてきたところのずっと下から響くような音がする。
「な、何よこれ!」
リプリオの立っていた場所から半分に割れ、溢れ出す、流れてく。
一面溢れかえったそれにマーイは喜んで飛び込む。
「水よ、
マーイの望むまま水は幾重にも別れて流れ道を拓くように世界に行き渡っていく。水が流れて川や滝が生まれる、岩があったことが分かる。世界がみるみる潤っていくのをきっと全員が感じた。
滝つぼより先に広がるあれはなんだろう?
「……何よ、あれだけめそめそしておいてあんたすごいんじゃない」
見直したと言わんばかりにリプリオは言う。
「なんにもすごくないの、私はきっかけでしかないから」
「あたしだってそうよ。ねえ、マーイ。あたしはここに来るまでで疲れたから少し休むわ、次の色も見つかったみたいだし任せるわ」
「私なんかで出来るかしら……」
戸惑うマーイをよそに、リプリオは眠ってしまった。
「行くしかないみたいね」
ため息をつき、ぱしゃんと飛び込んでマーイの冒険が始まる。今、リプリオの片目が開いた気がしたけどそんなわけないよね。
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