自殺人

@meme216

第一章 第一話 神谷つむぎ

いつからだろう私が心から笑えなくなったのは...

いつからだろう他人の目ばかり気にするようになったのは...

いつからだろう私の居場所がなくなったのは...

いつからなんだろう


私の名前は神谷つむぎ。高校3年生。楽しい高校生生活を送っている...訳では無い。正直、学校は嫌いだ。他人が勝手に作ったイメージ通り演じなければならない。そんなの気にするなって?そんなの無理に決まってる。そうしたら私の周りから友人と呼べる人はいなくなってしまうのだから。こうして今日も私は、神谷つむぎという役を演じている。


今は、夏休み。だけど、やることがなくてすごく暇だ。優等生な神谷つむぎちゃんはすぐに宿題を終わらせた。家は、母子家庭だから、旅行になんて行けるわけがない。だが、私は毎日欠かさず行っている日課がある。それは、地上十階建ての廃虚ビルの屋上に行くことだ。なぜって、生きるのが辛くなったときにここから飛び降りるつもりだから。さて、今日もそろそろ行こうかな。弟のしんは部活、母は仕事で家にいないから二人が帰ってくる前にちゃちゃっと行っちゃお。


ふぅ〜。やっぱり暑いなぁ。汗をかきながら階段を登り終えるとそこには一人の青年がいた。私より少し年上なきがする。雰囲気的に。青年もこちらに気づくと会釈をした。私も慌てて頭を下げると青年が話しかけてきた。

「こんにちは。俺の名前は、櫻井そうた。君は?」

「私は、神谷つむぎ。」

「つむぎちゃんか。つむぎちゃんはよくここに来るの?」

いきなりの名前呼びに驚きつつ、

「うん。そうたさんも?」と答えた。

「うん。俺もよくここに来るんだ。今まで、会ったこと無いよね。」

「そうだね。ある意味奇跡かも。」

久々に家族以外の人との会話を楽しんでいるとあっという間に時間が過ぎた。

「もうこんな時間!!私、そろそろ帰らないと。そうたさん明日もまたここ来る?」

「うん。多分来るよ。」

「じゃあ、また明日もたくさんおしゃべりしましょ。明日もこのくらいの時間に来るね。バイバイ。」

「うん。気をつけて帰るんだよ。」


私は、走って家に帰った。幸い、まだ二人とも帰ってきていなかった。私は、夕飯とお風呂の準備を始めた。いつもよりも準備が捗ったのは明日も、そうたさんに会えるからだろう。早く明日にならないかなぁ。しかし、私がそうたさんと再び話す日はもう二度と訪れないのだった。


次の日。私は、朝のニュースを見て唖然とした。

ー廃虚で火災発生。一人の焼死体発見。近くに落ちている免許証から櫻井そうたさんだと考えられる。ー

私は、気分が悪くなって母に朝食はいらないと伝え部屋に戻った。私は、部屋で布団にくるまり体の水分がなくなるくらい泣き続けた。


私は、あのニュースを見てから家にこもりっぱなしになった。流石に家族も心配するだろうから、家事は今まで通りやるようにしていた。


ニュースの報道が落ち着いてきた頃、私はそうたさんにお花を供えようと思って花屋さんに行った。ただ、廃虚ビルの前は、まだ消防隊や警察官でいっぱいだったからとりあえず私のマンションの屋上に供えることにした。そして、そのまま死んでしまおうと思い、遺書も書いた。私が、柵を超えたとき、一人の男がいることに気づいた。



私を愛してくれてありがとう!!

はかなく短い命だったけどすごく楽しかったよ

こんな娘でごめんなさい。どうか許してください。

六歳の頃のこと、あまり良いとは思っていません。

さすがに、私もしつこいことはわかる。でも、しんを傷つけることだけはしないで。

れいぞう庫の中に、プリンが入っているから二人で仲良く食べてね。

たのしい時間を大切にしながら生きてね。こんな娘で本当にすみません。

                                   つむぎ





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