第71話 一週間後、問題発生
例の挑戦状を叩きつけられてから一週間。僕たちは平和に過ごしていた。お昼ご飯を食べて、ノートと教科書を開く。
「津川先輩、ここの解き方が分からないんですけど」
「貴由先輩、これどういう意味?」
「津川先輩、歴史上の人物ってどうやったら覚えやすいですか」
「えーとね……」
みんな、先輩である津川先輩に質問をする。津川先輩はひとつひとつに、答えようとするけれど――
「ここは確か、この数字を、いやこっちの数字だったかな」
「ありをりはべり、か。えーと、古文はこういうルールになっているとしか」
「がんばって覚えるしかないかな」
はっきり言って津川先輩の教え方はへたくそだ。中々その日の課題も進まない。
「こんな感じで、テスト大丈夫になる?」
昼休みが終わる十分前。教室に戻った倉野さんはみんなが当然思っている疑問を口にする。水上くんが口の端をひくひくさせながら言う。
「し、しないよりはましと思うしかないよ」
「いざとなったら、個人個人で勉強するしかないね。早い人はもう学習室を使っているらしいし」
学習室はパーティションで個室に区切られている部屋だ。よく先生が気まぐれに顔をのぞいてくるし、周りも勉強に来ている人ばかりだから、私語も少ない。使ったことはないけれど、集中できるらしい。
「あ、若狭くん」
「加賀くん」
園芸部のクラスメイト加賀くんが話しかけてきた。学園祭以来、仲良くなって休み時間にはよく話をする仲だ。
「えーと」
なにか言いにくそうにしている。
「どうした、加賀」
「うん。それが……。キミたちトレジャーハンター部は学園祭で評価がかなり上がったわけなんだけど」
「うんうん」
水上くんが頷く。照れくさいけれど、確かにみんなが見る目が変わったのは分かっていた。
「それが今はダダ下がりなんだ」
「「「えっ‼」」
まさかの発言に、僕らは目を白黒させる。
「何もしていないのに……」
「うーん。何もしていなからだね」
加賀くんも困ったような表情をしている。だけど、ひとつだけ心当たりがあった。
「もしかして、挑戦状を無視しているから?」
「そうだね。……うん」
「そんな! わたしたち、勝手に挑戦状を送られただけ!」
さすがにトレジャーハンター部の部長は黙っていない。可哀そうに無関係な加賀くんは倉野さんの圧に怯えている。
「そっ、その挑戦状も何か事情があって送ったんじゃないかな」
「事情? 何も思いつかないけれど」
「僕たちの誰かを負かしたいとかかな」
水上くんがそう言うけれど、僕らは四人集めれば結構がんばれるけれど、ひとりひとりはへっぽこだ。
僕らが話していると、加賀くんは困った顔で黙っている。
これ以上、彼を困らせてはいけない。
「とにかく放課後、放送部のところに行こう。挑戦状のことを聞いてみるんだ」
僕らの名誉を取り戻すには、それしかないみたいだ。
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