第24話 彼氏としての役目を
「――
振り向くとそこには申し訳なさそうにしている
「
不思議そうに首を傾げると彼等は一度顔を見合わせて僕に頭を下げた。
「
「前々から悪目立ちするとは思ってたけどここまでするとは思わなかったんだ!俺達も全員あいつとは縁を切る!本当にすまない!」
頭を上げて言った彼等の言葉に僕は肩をすくめると
「悪い,
「何処から予想がはずれたの?」
不思議そうに聞いた僕の顔を見て一瞬,能面のような顔をすると何故か急に笑い出して僕の髪をクシャクシャにした。
「最初から全部だわ!ほぼお前達が原因だけどな!」
「ちょっとやめてくれない!?今セットしてないんだから!」
「悪い悪い――
真面目な顔で
「おい,バスケ部の奴等,星稜学園の奴と仲良さそうにしているぞ」
「まさか,ワザと負けていたんじゃないでしょうね!?」
「……何か君達まで睨まれているけどいいの?」
僕の言葉を聞いて彼等は周りにいた誠央学園の生徒達を見た。
「な,何だよ……」
「
「なっ!?やっぱり,お前達って……」
「俺達だって将来は不安だ。だがな――お前達みたいに人を誹謗中傷してまでポストなんて欲しくない!この試合が終わったらお前達とは縁を切る!
「そんな!?この試合はあなた達が頑張って……」
言いたいことが終わったのか彼等は
「何だか
「あれだけ色々と言われているのに
「だって,彼女って全くの無関係でしょう?」
先程と同じように能面のような顔をする
「……お前みたいなのが
そう言って
「おかえり,
「酷い言われようですね」
「でも,事実だろう?んで,作戦はどうするんだ?」
「う~ん,もう適当でいいかな」
「
僕の言葉にトミーや
「
正直に言うと怒ってないというのは半分は嘘であった。
あれだけ彼等のために必死になって考えて動いている
なので彼等に実力を示して反省してもらおうと思う。
「やっぱり,
「あはは……。ところで,
「あっちだぞ」
少し離れた所に義妹達と一緒に居るのが見えたが,
「お前が暴言を吐かれているのを見て本気で泣き出しそうにしていたぞ。自分が蒔いた種で無関係の人がまた傷付いたって」
――やっぱり,君達も彼等を許せないんだね……。
「んじゃ,適当で行くから頼んだぞ,
「うん,任せておいて」
話し終えたちょうどいい頃合いに電磁掲示板が鳴り,トミー達は先にコートの中に入って行った。
「――
コートに入ろうとすると近くにいた
そこには彼女だけでなく
「――ごめんなさい!誠央学園の学生達があなたを……」
「さっきのことはもういいよ。それよりも,
僕は小さい時の影響で暴言に耐性があるが,彼女はそうでもないだろう。
「ええ。私はあまり言われてないから大丈夫だから」
先程も思ったが大丈夫だと無理して作っていた笑顔は本当に痛々しいと思った。
どうすれば彼女の心は和らいでくれるだろうかと思っていると――ふと昔に母が書いていた小説の一文を思い出した。
――凄く恥ずかしい台詞で義妹達には笑われるかもしれないけど致し方ない。
「……できれば,君には笑っていて欲しいな」
「――
「そんな落ち込んだ顔で見送られたら勝てる試合でも勝てなくなるからね」
「…………」
僕の言った台詞に
まあ,そんな顔をされて当然――というか,後ろで笑いそうになっている3人!
僕だってこんな台詞,恥ずかしいんだから笑わないでもらえるかな……。
そう思っていると我慢できなくなったのか
「か,
「い,意外過ぎて,お腹が……」
「僕だって恥ずかしいんだから笑わないでくれるかな?」
「ふふっ,ごめんなさい,兄さん」
不貞腐れた顔で義妹達を見ると
「
「ご,ごめんなさい。
笑いを堪えている彼女を見て安心したが,何だか納得がいかなかった。
「ありがとう,
「うぐっ……」
出来ればその話は試合が終わってからにしてほしいと思った。
色々と思うことがあるのか今の彼女はジト目で僕のことを若干睨んでいたのだ。
――まあ,あれだけいい物を触らせてもらったら怒られても仕方がないだろう。
「まあ,その話はあとでじっくりと聞かせてもらおうかしら。……それから,試合に負けても特に気にしなくていいから」
「
「こちらが負けても私との関係が無くなるだけでしょう?それに,そうなったら私自身で
「……本当にそう思っているの?」
僕の言葉に彼女は黙り込んでしまった。
大丈夫と言っているが,
――大丈夫じゃないに決まっているじゃないか。
そう思った瞬間,僕は彼女の頭に手を置いていた。
「か,
「まだ,依頼を受けていないけど――少しは彼氏として頑張らせて欲しいな」
驚いた彼女から手を離すと僕はコートの中に入って行こうとした。
「じゃあ,行ってくるよ――――」
「――えっ……」
背を向けて急に名前を呼んだ僕を彼女はただ呆然と見送ってしまった。
「……おいおい,本当にあいつ
「でも,さっきの見たでしょう!?彼,
コートに入った僕を見てやはり会場にいた者達は驚いていた。
「
「色々と事情が合ってね。それよりも,そろそろ試合が始まるから準備して」
未だに問い詰めて来るトミーを
「面白い物を見させてもらったぞ,
「試合前にそんなニヤニヤした顔をしないでくれる?あと,そっちの彼等も僕に殺気を送らないでくれるかな?」
何だか別の意味で彼等に火を点けてしまったようだ。
「それでは,改めて試合を再開致します!」
――おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
体育館に歓声が沸く中,審判の合図でボールが投げられると試合再開となった。
試合が開始されてまず最初のボールを
「こちらは10点取れば勝利だ!落ち着いていくぞ!」
「「おう!!」」
――だが,
「何処に投げているんだ!?」
「あっちには誰も居なかったはずだぞ!?何の意味が――!?」
彼は驚いて一瞬,目を疑ってしまった。
先程までそこには誰も居なかったはずなのに――いつの間にかその場所には黒髪の男の子,僕が走っていて
「いつの間にあそこに移動したんだ!?しかも,フリーじゃないか!?」
叫んだ彼が驚いたのも束の間,僕はそのまま一人で攻勢を仕掛けた。
「
「
ボールを持った僕はそのままリング近くまで来ると相手チームの二人がこれ以上は通さないぞという目で立ち塞がった。
「最初の点数は打たせるか!!」
「ここは絶対に死守するぞ!――って!?」
二人でなら余裕で防げると思っていたのだろう――それが間違いであった。
彼等に突っ込んで行った僕は後ろにいたトミーにそのままの体勢でボールを投げて渡すと受け取ったトミーはそのままシュートを決めた。
「トミーが入れたぞ!」
「
先制点を入れられたことで応援する星稜学園の学生達と違って休憩席にいた
「……なぁ,
「1回だけでは判断することができないな。だが,俺達の予想通りのことをしているならあいつは相当にやばいぞ」
誠央学園のチームは何かに気付いたらしい。
そして,彼等の予想は最悪の予想で現実となってしまったのだ。
「また,
「くそっ!何であいつがいつも誰もいない所にいるんだ!?」
「おかしいだろう!何であんなデタラメな投げる場所が分かるんだ!」
これで5度目だ――
そして,問題はそれだけじゃないのだ。
「一人で突っ込んできたぞ!誰にもパスを渡させるな!」
「「おう!!」」
さっきから一人で突っ込んで来ては相手の位置が分かっているのか直ぐにマークしていないメンバーの所にボールを投げるのだ。
しかも,初動がまったくないから動きが掴めないでもいたのだ。
「
「さっきから思っていたけどやっと
「まあな!色々と背負わなくて済んだからな」
今までは賭けのことや先程拘束された交代したメンバーのことを気にして全力を出せなかったのだ。
今の
――だが,今の僕は
「ごめんね,
「何で謝――って!?」
フェイントを入れて
「……マジかよ!?あの身長でダングってどれだけジャンプ力あるんだ!?」
「はははっ,やっぱあいつ凄いな!」
「笑っている場合か,
そして,僕に対して盛大な応援がされる中,勝利に執着していた誠央学園の学生達の中にはある心境の変化が現れる者達が出始めて来ていたのだった。
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