外伝 誠央学園はトラブルが多い?(悠姫視点)
「どういうことですか!?」
星稜学園の生徒会室に女の子の叫び声が響き渡った。
「
「話し合うって……私達は全く聞いていませんよ!?」
眼鏡を掛けた誠央学園の女の子が抗議の声を上げた。
だが,そんな彼女に対しても
「
「何故ですか!?星稜学園にはまだまだ優秀な方々いるはずです!それに
「
誠央学園の男子生徒が抗議している女子生徒を静止しようとした。
「っ……何で
「…………」
「もう知らない!!」
眼鏡を掛けた女の子は今にも泣きそうな顔で止めに入った男子生徒を睨むと生徒会室から飛び出して行ってしまった。
「
「
彼はもう一度,
「……会長,何か誠央学園の生徒会って荒れてません?」
「
生徒会室にいた星稜学園の生徒会メンバーを見ながら
「
――星央会。
誠央学園の卒業生で作られた懇親会であり,政財界に大きな影響力を持ち,本来は政財界と繋がりのある卒業生しか入ることが許されないと言われている。
しかし,毎年学園の首席卒業者や生徒会に所属していた有能な人材は関係なく招かれており,入れば普通の卒業生達以上の将来が約束されている。
――だが,その栄光は年数が経つに連れて徐々に影響力を失いつつあった。
そんな状況の中で夏休み前に星央会が崩壊する事件が起きてしまったのだ。
「皆もニュースでは知っているよね?夏休み前に起きた誠央学園の横領告発事件」
理事会と星央会の重役達が長年隠し続けていた学費の横領問題。
しかも,横領以外でも学園の教職員達だけでなく学園の在学生やそのご家族達が所属する後援会まで関わっていると分かったのだ。
それを,現政権の大物政治家である
報道局は特ダネとしてこの事件を徹底追及した結果,彼が提出したリストに書かれた者達は全て検挙・逮捕されることになり,在学生に至っては退学処分にもなった。
「それによって誠央学園は色々と運営が難しくなり,星央会の会長であった
「お前達もその歳で苦労したな」
「
「
「でも会長,話を聞く限りではその子は悪くなそうに聞こえ……」
「失礼します!委員長,よろしいでしょうか!」
「どうした?」
「少しトラブルが……」
顔を近付けて周りに聞こえない様に話すと
「
「わかったよ。あまり大事にはしないでね」
「心配するな。行くぞ,
「はい。では,私もこれで。失礼しました」
丁寧に
「
「誠央学園の男子生徒が料理部の女子にちょっかいを掛けたらしい。
――
兄さんは部活紹介ではなく誠央学園のクラスメイト達を案内する方だと今朝言っていたので家庭科室にはいないはず。
要するに,今料理部には女子生徒達しかいないということだ。
「――風紀委員会だ!邪魔するぞ!」
「お,
家庭科室に入ると料理部の部長さんが軽く手を振っていた。
「
「いっちゃんならあそこ」
指をさした方を見ると数名の男子生徒達にお説教をしている最中であった――が,1名だけまったくと言って話を聞いていない男子生徒もいた。
「あなた達!自分達が何をやったのか分かっているの!?」
「いちいち口煩い先輩だなぁ。折角の美人が台無しなっちまうぞ?」
「おい,
黒髪の長い髪をしたクールな女子生徒,風紀委員会の副委員長である
「はぁ~。
「あんな陰気臭い女に案内なんかされてたまるかよ。やっぱり,案内してもらうなら美人の方が……」
「おい」
話を聞いていた
――ただし,鬼のような形相でだ。
そんな先輩を見て男の子達は怯えた表情をしていたのは言うまでもない。
「だ,誰だよ,あんた……」
「風紀委員長の
先輩が怒るのは無理もない。
彼等はこの学園で一番――やってはいけないことを口に出してしまったからだ。
だが,流石に初日から星稜学園と誠央学園で問題を起こすのは
「
「
特に先程まで
――やはり,彼等もまた兄さん意外の男の人と同じだ。
溜息が出そうになったが,彼等に気付かれないように笑顔を向けた。
「皆さんも初めての学園に浮かれていたのかもしれません。ですが,彼女達が困っているのも事実です。今回はお咎めはしませんので引いては頂けないでしょうか?」
「ちょっと,
口を挟もうとした
「こんな美人が星稜学園にいたとはな。お前が案内してくれるなら考えて……」
「おい,
「構いませんよ。ですが――」
私の言った発言に驚いたのも束の間,一番前にいた男子生徒は何処から現れたか分からない鋭い目付きの男子生徒2人に警棒を向けられていたのだ。
「私と一緒に回るなら彼等もお供に付きますがよろしいでしょうか?」
「なっ!?……チッ……」
流石に突っ掛かっていた彼も行き成り現れた彼等に驚いたのだろう。
冷や汗をかくと舌打ちをして慌てて逃げ出していた他の男子生徒達の後を追って自分も家庭科室を走り去っていった。
「――姫様,ご無事でしょうか?」
「問題ありません。それと……
「別に構わん。どちらにせよ,あいつ等にはいい薬になっただろうな」
男子生徒に警棒を向けていた二人を見ると肩をすくめていた。
「でも,
「でしたら,私が見回りをしてきます。ついでに,一狩してきますので」
「一狩って,ちょっと,
「姫様,如何様に?」
「スケさん,カクさん。親衛隊の皆さんに連絡を。問題が起これば直ぐに私か風紀委員会にいる親衛隊の方まで連絡をするようにと」
「「
後ろに控えていた二人は早々に何処かへ立ち去って行った。
――そんな状況の中,急に自分のスマホが鳴り出した。
画面を見るとそこには金髪の男子生徒と自分が恋人のように腕を組んでいる写真が映っており,見ると最愛の兄からメッセージが届いていた。
「兄さんからメッセージ?」
何か用事でもあるのかなと思い,メッセージを開くと書かれていた文章を見て微笑んでしまった。
――そういえば,あの二人も誠央学園だったなぁ。
先程のことで少し憂鬱な気分になりそうであったが,女学園時代の親しい人達との久しぶりの再会に胸を踊らせていると少し頑張ろうと思い,私は微笑みを浮かべて学生達の輪の中に消えて行った。
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