第5話 星稜学園の異端児
「は~い,それじゃお昼からはさっき言った通り部活動の見学ね~」
お昼休みが終わり,午後から誠央学園の生徒達は星稜学園の各部活動の自由見学となっていた。
逆に星稜学園の生徒達は部活動の紹介に回る人と誠央学園の生徒達を案内する人に分かれることになったのだが……。
「――チクショウ!!何で
「そんなこと言われてもね」
トミーを筆頭に教室の男子生徒達に羨ましそうに睨まれてしまったが,こればかりはどうしようもない状況なのだ。
「申し訳ありません,
「気にしないで。これは会長が悪いから」
申し訳なさそうにする
「みはるんも連れて一緒に来てくれって急だね」
「会長も
「そうだけどよ!!美少女3人に囲まれるってズル過ぎるだろう!!」
「「うんうん」」
男子生徒達は同じように頷いた。
君達って本当にこういう時は団結力あるよね?
「なあ,
「そうだね。それじゃ,僕達はそろそろ行くね」
「皆さん,申し訳ありません。また,お時間がある時にでも別の場所の案内をよろしくお願いしますね」
申し訳なさそうに頭を下げる
「
「
「いや,やっぱりお前って見てて面白いわ」
バシバシっと肩を思いっきり叩かれてしまった。
「そういえば,
「今日が顔合わせと聞いていたので。どういった方がいらっしゃるのですか?」
「う~ん,正直に言うとパッとしないっていうのが本音かな」
――僕が生徒会に勧誘され続けている理由が実はこれであったりする。
先代会長,現会長は有能を通り過ぎて最早異端児であったのだ。
先代会長も現会長の時も同期の3人だけで生徒会を回していたという。
「でも,一般的な生徒会メンバーならそれで十分じゃない?」
「私もそう思う。誠央学園の生徒会は事情があったから多かったけどね」
「う~ん,本来はそうでもないんだよね」
先代と現在の時は人数が少ないが,実際は全学園が揃う1学期に20名前後は生徒会メンバーが居たと説明すると驚かれた。
まあ、これには深い理由があった。
「星稜学園の生徒会ってね,学生に対しての行事を全て学園から委託されているんだよ。修学旅行先の取り決めも毎年決めているから。だから,毎年は人数が多いんだけど今は1年生が大半で10名を切っていたね」
そして,そんな少ない状況であっても先代会長と現会長は今まで以上に生徒会の運営を問題なく行っていたのだ。
そんな有能な二人の後に自分が生徒会の会長を務めることが出来るのかと今の生徒会の1年生達は悩んでいたのだ。
――おまけに,それを更に助長させる原因になっているのが風紀委員会という。
「今期の1年生の優秀な生徒の大半は風紀委員会に行ってしまってね。おまけに僕達の代の風紀委員長は義妹で決まっているからそれに対等になれるのは僕ぐらいって言われていて……」
「だから,生徒会に誘われていると?」
首席でもなくこんな見た目である僕が生徒会の会長候補に選ばれる理由。
自らが会長を降りた将来的なことを考えても
――2学期までは……。
「誠央学園の学生達が編入してきたから生徒会メンバーの人数が増えて大丈夫かなと思われてきたんだよね。あと,僕じゃなくても会長候補も来てくれたようだし」
隣にいた
誠央学園でも次期生徒会長と噂されていた彼女。
首席でもなく目立ってとりえもない僕がなるよりも十分にいいと思う。
だが,誠央学園の生徒だけで生徒会を任せるのも問題と言われているのでどちらにせよ自分の勧誘は諦められていない状況ではあった。
「少し気になったのですが,
「人望があるのは義妹の御蔭だよ。あと,成績に関しては少し特殊だから」
「「特殊?」」
僕の成績に関しては先生達の間でも有名な話だ。
ある時の小テストでは学年1位を取ったと思ったら,別の授業でのテストは赤点ギリギリであったりと点数の差が激し過ぎるのだ。
「何でそんな点数に……」
「理由がある――っとここが生徒会室だよ」
話していると目的地に着いたようだ。
扉の上には星稜学園生徒会室と書かれており,扉も他の部屋に比べて豪勢というよりも厳重な作りにされていた。
――コンコン。
「は~い,どちら様~」
「
僕が扉の前でそう言うと扉が開き,薄い黒髪の男の子が出て来た。
「お疲れ様,
「そうだよ。皆に紹介するね。生徒会庶務の
「
――荒れている?
そっち側ということは誠央学園の生徒会メンバーも既に来ているということだ。
まさか,出会った瞬間に喧嘩でもしたのかと思って入ってみた。
「
入った瞬間,ムギュウッと知らない女性に抱き着かれてしまった。
物凄く甘い香りがして顔が柔らかい感触に包まれて……って,誰!?
「あれぇ?
「
後ろにいた
視界がはっきりすると目の前には茶髪のロングウェーブの髪の女子生徒がいた。
榛色の瞳が印象的でほわほわした優しそうな雰囲気をする女性に見えた。
「あらあら,ごめんなさい。てっきり,
「いえ,大丈夫です。役得で……ゲフンゲフン。特に何もないので」
背後から冷ややかな視線を感じて慌てて言い換えた。
隣を見ると
別に狙ってやったわけじゃないんだからそんな目で見なくても……。
「
生徒会長と書かれたプレートが置かれた立派な机に座っていた少し小太りな男性が僕達に声を掛けて来た。
茶髪に眼鏡を掛けて見た目は僕と同じ陰キャのように見える存在。
だが,それが彼の唯一の欠点と言われている三大勢力の一角,
――
歴代星稜学園の生徒会長の中で五指に入る有能な会長でもあった。
「遅れてしまって申し訳ありません。……ところで,何かあったんでしょうか?」
「ちょっとしたトラブルが合ってね。今は
「
背後から声が聞こえて振り向くとそこには強面の男子生徒が仁王立ちしていた。
――余程,恐ろしく見えたのだろう。
男性恐怖症であった
だが,それも
「あぁぁ!!お兄だ!!」
「
「お前達も生徒会室に来ていたのか。てことは,そっちが……」
チラッと
だが,その対応が余程ショックだったのだろう。
少し落ち込むと僕を含めた生徒会室にいた人達が笑い出してしまった。
「やっぱり,
「う~ん,
「これは生れ付きだ!!何か悪いか!!」
部屋に入って来て
流石の
「……
「そそ。私の義兄。前々から強面だから気を付けておいてって言ったでしょう?」
「
「まあまあ。ところで,
「あいつなら一狩り行ってきますと言って対処が終わったらそのまま取り巻き達を連れて見回りに行ってるぞ。おそらく,他にもトラブルの……」
そんな光景を他所に今まで静観をしていた
「
「
表立っては秘密だから内緒にしてねと付け加えると納得はしてくれた。
「ところで,
「荒れているぞ。正確に言えば,荒れていただな」
「荒れていた?」
「実はね,誠央学園の生徒達の一部がトラブルを起こしちゃってね」
「トラブル,ですか?」
僕は不思議そうに首を傾げた――が,その話を聞いていた
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