ジョージの中に確かに残っているモノ

「ほー、ここが荒川原あらかわはらダンジョン……」

「ヒロいね!」


 須藤さんからワイバーンが出現するというダンジョンの存在を聞き出した翌日、俺達は日も昇らぬ早朝から車を走らせた。一般道を抜けそのまま高速道路へと乗り、途中休憩を挟みながらも数時間――目的地である荒川原ダンジョンに辿り着いたという訳だ。


 結構大きな街の中にある故か、オーロラも言っていたように、受付の段階で広い。ヤマダがいた東荒ダンジョンも広かったが、それよりも広いな。もはやエントランスだわ。そして相応に他の冒険者もいる、と。まだまだ朝早いのにご苦労様なことだ。


 さて、いつも通りオーロラは認識阻害を使っているからバレてはいないと思うが……見られてるよな。まぁいい加減そういう視線には慣れては来ているから何食わぬ顔で歩みを進めて――受付の女性職員の前に立った。


「いらっしゃいませ。Aカードの提出をよろしいでしょうか?」

「お願いします」

「はい、ありがとうございます。――あら、これはこれは。改めていらっしゃいませ。普段のダンジョンからこちらは距離があったのではないですか?」


 Aカードを機械で読み取ったことで俺が木原譲二だと知ったのだろう、女性職員が一瞬周りを見回すと声のボリュームを落として話しかけてきたので、「まぁはい」と軽く返した。ありましたね、距離。

 その後は女性職員は特に俺に対して踏み入ったようなことを聞くことは無く、淡々と手続きを進めてくれた。……いや、別に今まで対応してきた職員さんたちのことを悪く言うつもりはないけれどこれくらいの対応で丁度いい……!!


「はい、これで手続きは完了です。木原様は当ダンジョンは初めてですが、車両のレンタルはいかがでしょうか?」

「車両?」

「はい、当ダンジョンでは走破車両貸与サービスというものを行っており――」


 山ダンジョンである戸中山ダンジョン。海ダンジョンである相模原ダンジョン。ジャングルダンジョンである東荒ダンジョンがある中で、ここ荒川原ダンジョンは荒野ダンジョンとなっている。

 その特徴として砂漠状のだだっ広い平地が挙げられる。普通のダンジョンよりも広いが、それ故に移動がひたすらに大変なのだとか。そこで走破車両貸与サービスだ。


「ダンジョンの中で走れる車やバイクがあれば移動が格段と楽になりますが、いかがでしょうか。勿論、極力抑えたものを用意しておりますが、走行音によりモンスターに気付かれやすかったり、故障の程度によってはレンタル料に上乗せで修理費を出していただくというデメリットもございますが」

「とりあえず今回は徒歩で臨んでみますけど、その車両を見せてもらうことって出来ますか?」

「えぇ、大丈夫ですよ。それではご案内しますので、こちらへどうぞ」



「やっば……中々イカすな……!」


 女性職員に案内されたレンタル車両を確認することが出来る部屋に、俺は今日一のテンションの上昇を感じた。様々なメーカーのダンジョン用の車やバイクが並べられているのだが、これが俺の中の男の子魂に火を点けた。


 基本的にどの車体もゴツい。スマートに魅せようとしている物もあるが、やはり荒野といったでこぼこ道や砂地を走る必要があるのでデカくゴツい。車なんて俺の身長を優に超えるものだってあるほどだ。いやぁ、車やバイクに特に詳しいわけじゃ無いから一日中とは言わないが、一時間程度だったら余裕で過ごせてしまえそうだ。


「あー、そうですね。初めていらっしゃる男性の冒険者の方は木原様のように楽しまれる方が多いですね。元男性でしたね」


 元男性ですね。これでも男の子の心は忘れた日はないつもりなんですけど。

 あらやだ、このバイクもいいゴツさしてるじゃないのさ。え、なにこれ三輪バイク!?何かこれ、下手なモンスターだったら轢き殺せそうな重圧感あるな。はぁ、車両名は犀繰サイクル。名前はアレだけどな。


 ちなみにオーロラは俺の肩の上で何も言わずにニコニコとしている。本当に何も言わないので、流石に気になり聞いてみることにした。


「オーロラさん、この良さ分かる?」

「ワカンナイ!」

「あ、ごめんなさい。そろそろ出発しますね」

「シヨウネ!!!」


 ごめんて、一部の男の子は定期的にかっこいいもの摂取しないといけないんだよ。ジャーキーあげるから許して。許されました。



 さて、無事荒川原ダンジョン内に入ることが出来たことだし、後から入場する冒険者と鉢合わせないようにすぐにその場から離れる。オーロラさん、確かにジャーキーはあげましたけど口にするの早すぎません?もう少し小腹が空いたときに食べた方がよろしいのではなくて?

 え?それはその時に貰う?ハハ、こやつめ。


「しかしなんだ。あらためて見ると俺と相性の悪いダンジョンだよな、ここって」

「ソウなの?」


 ソウなのだ。なんたって隠れる場所が少ない。所々に人っ子一人隠れられそうな岩が見受けらるがそれもまばらだし、荒野故か木々もろくに生えていない。基本的に隠れながら狩りをする俺にとっては隠れながら移動することができないのはキツいものがある。まぁ相模原ダンジョンも似たようなものだが。


「じゃあナンデ来たの?」

「そりゃあまぁ……ハイエルフとしてのスペックならゴリ押しできるかなって。あ、ほらなんか来た」


 荒川原ダンジョンに足を踏み入れてからの第一村人ならぬ第一モンスター。それは一頭のキリンだった。

 この場合のキリンは決して有名ビールのラベルにいるいわゆる神獣としての麒麟ではなく、キリン科キリン属に分類される偶蹄類のキリンなのだが……特徴的な胴体から伸びている首なんですけどね、二つに分かれているんですよね。双頭のキリン、デュオジラだったか?

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