第25話疑い

始めに言わせて欲しい。俺は知らなかったと…。現世ならセクハラか逮捕案件かも知れない。


「言い訳があるなら聞いてあげるわよ?」


「…同意…」


 リーンとリカが距離を詰めてくる。


「言い訳というか…」


「何…?早く言いなさいよ」


「メルルが女の子だと知りませんでした!」


「そんな言い訳が通じるとでも…?」


「…普通気づく…」


 いやいや…マジで気がつかなかったんだよ。屋敷に帰ってすぐにメルルにクリーニングの魔法をかけたんだよ。それから屋敷の中に入り、リーンやリカにヘアアクセサリーをプレゼント。二人ともつけてくれというからつけてあげて…そして俺の与えられてる自室にメルルと一緒に戻ったんだ。


 すると、いつも通り侍女の女性がお湯を持ってきてくれたんだよ。クリーニングの魔法で綺麗になってるとはいえ、体は拭き上げたいだろ?日本人ならこの気持ち分かってもらえると思うんだよな…。とにかく上半身裸になって体を拭き上げているとメルルが不思議そうに見てたんだ。だから…「メルルも体拭き上げようか?」と、言ったんだ。今思えばこれが間違いだったんだろうな。メルルは纏っていた布の服を脱いで…


 そこで気がついた…。犬耳や犬の尻尾がついているのは言うまでもないと思う。だってメルルは犬人族けんじんぞくという種族らしいから…。まあ、それは置いておくとして…ついてなかったんだ…。股間にある筈のものが…。その瞬間悟ってしまった…。これはマズイと…。言っとくけどそういう意味のマズイじゃないぞ?第一メルルは小学生くらいだろうし、そういう対象では決してない。とにかくだ…。俺は慌ててメルルに服を着せようとしたところでリーンとリカが俺の部屋に入って来たというわけだ…。


 絶対サチはこれを分かっていた筈だ。なのにそれを教えないという事は…


『──その方が面白いからですね♪』


 いつかぶっ飛ばしたい…。


『──野蛮ですよ、マスター?』


 サチがそう言わせてるんだよ!とにかくどうすんだよ!?俺は単純に拭き上げてあげようかなと思って…


『──ぷふっ…リーンさんやリカさんからすれば全裸のメルルさんに半裸の男が迫っているように見えたでしょうね♪』


 笑ってんじゃないよ!?マジでどうすんだ?



「トヨカズ様は嘘は言ってませんよ?」


「「ティア様」」


 ああ…タイミングよく現れてくれたティアが女神に見える…。


「ティアが女神だったんだな」


「ふぇっ!?」


「あんた何をティア様を口説いてるわけ…?」


「いや、俺は──」


「…口説くなら私…」


「そうよ!リカの言う通り、口説くならあたしにしなさいよ!…って、違うわよっ!?そうじゃないでしょ!リカ!」


「と、トヨカズ様にそんな風に言われると…その…て、照れちゃいますね…えへへ…」


 えへへって…笑い方まで可愛くて本当天使だよな…。リーンとリカという鬼がいるけど…


「んなっ!?なぁんですってぇー」

「…もう一回言ってみる…?…」


「ま、またっ…可愛いって…あぅぅ…」


「お兄ちゃん、私はいつまで裸でいればいいの?」


「ごめん、メルル。リーン達が変な事を言うからさぁ。とにかくこの布を使って体を拭いてから服を来てくれる」


「…うん」



 まあ、ティアのおかげでなんとかなったな。それにしてもサチ…?助けてくれよな!



『──まあ、こうなる事は分かってたので…そんな事より服着なくていいのですか?じっくりねっとり、三人から視線を浴びてますよ』



 はははっ…面白い冗談を言うなぁサチは…。男の上半身裸なんか見るわけ…あっ…ホントだった。リーンとリカは凝視しているし、ティアも手で顔を隠してるものの指の隙間からチラチラこちらを見ているのが分かる…。俺の上半身なんて需要ないだろうに…。


「あんたも…いい加減それ隠しなさいよね!」


「…折角だから…私は凝視する…」


「は、早く隠していただけると…その…た、助かります…」



 俺は脱いでた服を着てから三人の方を向き直す。なんだかんだ言って三人とも残念そうな表情を浮かべてるのは気の所為だよな?


「ティア。さっきはありがとうな。この二人の誤解を解いてくれて」


「いえ…先程神託が降りまして…トヨカズ様が誤解を受けているので誤解を解いてあげて欲しいと言われましたので」


「女神様が?本当に助かったな…」


「それとですね」


「他にも何か?」


「はい、トヨカズ様に伝えて欲しいと言われてますのでお伝えしますね?お分かりだとは思われますがメルルさんはすでに成人されてます」


「…へっ?」


「ちょっと…あんたまさか…知らなかったの?」


「…犬人族は種族的にみんなこんな感じ…」



 成人…?俺より歳上って事!?


『──あっ、違いますよ?成人は成人でもこの世界での成人です。この世界では十歳で成人扱いになりますからね。メルルさんはちなみ十三歳ですね。余談ですがこの世界では十歳で結婚して子供を産んでる女性もいます。地球でいうと昔の貴族がそうだったでしょ?』


 そうなのか。は、早いんだな…。


『──ですので、女性の扱いにはくれぐれも気をつけて下さいね?普段から年下でも大人のレディとして接するのが一番です』


 了解。覚えておく。



「ま、まあ…あんたがそんな事するわけないか…あたしにも手を出さなかったもんね」


「さっきまでガッツリ疑われてたけどね?」


「そ、それは仕方ないじゃない!?あんたも紛らわしいから」


「…私は信じてた…」


「「嘘つけ!!」」


 リカに対して俺とリーンはすぐさまツッコむ。


「ふふっ…三人仲良くてなによりですね」


「そ、そんな事ないです…そ、そういうティア様こそ…いつの間にコイツを名前でお呼びになられてるんですか…?」


「…へっ?そ、それは…今日ですけど…?」


「あいつもティア様を名前で呼んでいますし」


「り、リーンさんやリカさんも名前で呼ばれていますよね!?」  


「そ、それは…そうですけど…」


「とにかく…誤解も解けたしメルルにご飯を食べさせてあげたいんだけど、作ってあげてもいいですか?」


「は、はい。勿論です」


「あたしも食べるわ」


「…私も…」


「と、トヨカズ様…わ、私もお願いします」


「了解です。じゃあみんな食卓に行こうか」




 そんなわけで、ご飯を作る。メニューはシンプルに甘めの玉子焼き、それにミノタウロスの肉野菜炒め、それからポテトサラダにした。ポテトサラダにはじゃがいもと人参は必要だろ?まあ、似た野菜があって良かったよ。味はほとんど変わらないしな。名前と色が違うくらいだな。じゃがいもに似た野菜は色は真っ黄色で【まんまる】と言って、人参に似た野菜は【ジンジン】。色は黒色だ。料理はメルルにも好評で美味しそうにいっぱい食べていたよ。


 とりあえずめでたしめでたし…だよな?









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