第16話本領発揮

「もう一度聞くけど…本気?」


「あ、うん」


「そう…あたし…コレでもDランク冒険者で、もうすぐCランクになろうとしてるのよ?そんなあたし達に戦い方を教えてあげるだなんて…あんたの腕があたし達より上って言ってるのよね?」


「…リーンはともかく…私の魔法より凄いとは思えない…」


「ちょっと!?いい加減あんたの中であたしはどういう立ち位置なのかじっくり話し合う必要がありそうよね?」


「…お構いなく…」


「何がお構いなくよ、全く…」



 闘技場に着いてすぐに二人はメイド服から冒険者として活動している時の服に着替えた。二人が手にしている武器から分かるようにリーンさんは大剣、リカさんは杖と短剣を使っているようだ。リカさんはそれに魔法かな?本人も言ってるしな。



『──二人のステータスが気になりますか?』


『そりゃあ…気になるかな。二人とも強いんだろ?』


『──私から言わせてもらえばまだまだなんですけどね?ただ今後はマスターのお陰で伸びると思いますよ?』


『まあ、サチから言わせたらそうなるか…どうして俺のお陰で伸びるかは分からないけども』


『──それはマスターが彼女達に指導するからですよ。まず、彼女達に【鑑定】のスキルを使ってみて下さい』


『いつの間に覚えたんだ?』


『──今朝醤油を錬金している時です』


『そっかぁ。じゃあ了解。【鑑定】』




 鑑定を使った瞬間頭の中に情報が流れ込んできた。すぐさま分かった事は二人のステータス。まあ、こんな感じだ。



❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉


名前∶リーン


年齢∶16

職業∶魔剣士まけんし

レベル∶18

体力∶70

魔力∶33

力∶65

俊敏∶45

器用∶25

知力∶35

運∶30


装備∶ミスリルの大剣 冒険者の服 ウエストポーチ(収納の魔法付与)


パッシブスキル∶剣技Lv4 武器質量0


スキル∶加速 雷斬り パリィ 回転斬り ジャンプ斬り  


魔法∶サンダー ハイサンダー ヒール ハイヒール 


❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉




❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉


名前∶リカ


年齢∶16

職業∶軽魔士けいまし

レベル∶18

体力∶53

魔力∶80

力∶30

俊敏∶48

器用∶30

知力∶45

運∶20


装備∶魔法使いの杖 ミスリルの短剣 魔法使いの服 ウエストポーチ(収納魔法付与)


パッシブスキル∶杖技Lv4 短剣技Lv4


スキル∶言霊


魔法∶ファイア ハイファイア ボム ハイボム ヌマヌマ アクア ハイアクア


❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉




 えっ…と…ステータス高くね?大丈夫なんだよな!?結果二人を煽ったようになってるんだけども…。



『──無問題です。あの時マスターにこう言ってもらいましたね?『俺がリーンとリカさんによかったら戦い方を教えようか?』と。これはマスターが二人に対してガイドするという事。つまりアドバイスするという事になります。アドバイスするという事は当然二人よりも強くなければアドバイスできませよね?と、いうわけで次はご自身のステータスを見ちゃって下さい』



『えっ…と…分かった。ステータス』


❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉


名前∶隼 豊和 (はやぶさ とよかず)


年齢∶14

職業∶ガイド

レベル∶1

体力∶10

魔力∶100(∞)

力∶3

俊敏∶3

器用∶30

知力∶30

運∶20


装備∶学生服


パッシブスキル∶ガイド (サチ)オート戦闘(サチ) 指導者 上位互換 剣技LvMAX 質量0 杖技LvMAX 短剣技LvMAX


スキル∶アイテムボックス 付与 鑑定 言霊 加速 雷斬り パリィ 回転斬り ジャンプ斬り


魔法∶クリーニング サンダー ハイサンダー ヒール ハイヒール ファイア ハイファイア ボム ハイボム ヌマヌマ アクア ハイアクア



❉❉❉❉❉❉❉❉❉❉




 ステータス低っ!?…ってレベル上がってないから当然か!?魔力だけは三桁いってるけども…。


『──マスター。注目すべき事はそこではありません』


『いや…流石に見ただけでそれは分かるよ。スキルやら色々増えてんだけど…?しかもコレって?』


『その通りです。マスターのジョブの本領発揮ですね♪』


『本領発揮…って…チート過ぎないか?』


『──色んな事を指導する立場になるわけですからそれは当然かと』


『…そんなもんか?』


『──そんなもんです♪』




「──で…そろそろいいかしら?」


 リーンさんがそう言いながら訓練場のリングの真ん中で剣を構える。


「…いいよ」


 サチが大丈夫と言ってるし、さっき自分のステータスを確認した時にピンときた。コレってあのスキルが発動すると思うんだよな?そんな事を考えながら訓練場に備えられている木刀を手に取ってリングへと上がった。リーンさんと向かい合う形で木刀を構える。その距離五メートルくらいだろうか。


「真剣に対して木刀…?怪我して後悔しても知らないからね?」


「…じゃあ…やろうか?」


「…いくわよ」


 言うと同時にリーンさんの姿が消えた──


『速過ぎるだろっ!?』


『──いえ、遅いですね』



 そりゃあサチからしたらそうだろうけどな。俺からしたら速すぎなんだけどな。



「…なっ!?」


 そんな声を上げたのは俺じゃない。リーンさんだ。リーンさんからそんな驚いたような声が洩れたんだ。


「…嘘…?」


 リング外にいるリカさんからもそんな声が聞こえた。


「…見えなかった」


 リーンさんがそう呟くのは無理もない。リーンさんが消えたと思った瞬間…俺も動いてたみたいなんだよな。まあ、そういうわけでどういう事になっているのかというと、俺はそんなリーンさんの背後に周り込むと同時にリーンさんの首筋にそっと木刀を添えているってわけだ。


『オート戦闘が発動したんだな?』


『──イエス。マスター。いかがです?』


『いかがですって言われてもな。凄いとしか』


『──マスターから凄いをいただきました♪』


『いつも言ってるよな?』


『──何度でも嬉しいものですよ?褒め言葉は♪』



 とりあえず動きを止めたままのリーンさんに話し掛ける。


「えっ…と…まだやりますか?」


「…認めるわ。あたしにはあなたの動きが全く見えなかったし…真剣だったら終わってるもの…」


 俺はその言葉にホッと一先ず安心してリーンさんに添えていた木刀をおろす。リーンさんならてっきりもう一回よ?とか言ってきそうな気がしたんだけどな。


「何よその顔…?あたしが納得できなくてもう一回よ!とか言うとでも思ってたわけ?」


 心を読まれた!?読心術か何か持ってたりする!?


『──マスターが分かりやすいだけです。表情に出やすいので気をつけて下さいね?』



「リカもあんたも一度あたしの事をどう思ってるのか話し合う必要がありそうよね?」


 俺も!?ヤベッ!?ここは…困った時のサチえもーん!!!


『──私ドラ◯もんじゃありませんからね?まあ、マスターに頼られたら悪い気はしませんので助け舟をだしますけどね!そんなわけでこうおっしゃって下さい』



「あの…リーンさん」


「…なによ?話し合いは絶対だからね?」


「今朝の朝食のフレンチトーストを覚えていますか?」


「…忘れるわけないわ」



 俺はその言葉を聞くと同時にリーンさんに近付くと耳元でリーンさんにだけ聞こえる声で呟くように言った。


「リーンさんにだけアレをもっと美味しくしたものを提供しますので…」


「ちょっ!?近い近い近いっ!?わ、分かったから…は、離れなさいよ!?」


「あっ…すいません」


 おい、サチ?サチが言ったんだぞ?そうしろって?


『──問題ないです!マスターにはまだ分からない事なので』


 …分からないって…失恋な…。



「さ、三枚…いえ、ご、五枚は食べるんだからね?」


「あ、はい」



 メープルシロップはどうやって手に入れるんだ?


『──メープル蜂という魔物の血から錬金できます。冒険者ギルドに素材があるみたいなのでグレースさんに言って帰りに分けてもらいましょう』



『了解』




「後…あんたに色々と教えてもらう事にするから…その…宜しく…」


「その件も了解ですリーンさん」


「…リーンでいいわ。それと…歳も変わらないんだし…タメ口で構わないから…」


「…デレたリーンはどうでもいい…そろそろ私の相手する…」


「んなっ!?で、デレるって何よっ!?そんなじゃあないんだからね!?あんたは後で本当に覚えておきなさいよね?」


「…さぁ…やる…」



 続いてリカさんと戦う事になった。リカさんも確かめたいんだろうな。リングにあがり、合図とともに魔法をぶっ放してくるリカさん。


「偉大なる火の精霊よ…全てを焼き尽くす火となりて我が敵を撃たん!ハイファイア!」



 なるほど…詠唱する事によって魔法の威力が上がるのが【言霊】のスキルな訳か…。普段口数が少ないのがリカさんなので魔法を唱える時はまるで別人みたいに感じてしまうな。


「だけど…」


 俺に向かってきた中型の火の球に向かって手を振るうと何もなかったかのように火の球が消える。サチに聞いたんだけど火の球の魔力に干渉して霧散させたらしい。そんな事できるの!?と、内心驚いたもんだ。


「…っ!?…私の魔法が…かき消され…た?な、ならっ…!?」


 

 魔法は駄目だと悟るがいなや二振りの短剣での素早い連続攻撃に切り替えるリカさん。サチが言ってたんだけど、二人のこういう察するところがまた高ポイントなんだとか。


 まあ、とにかくリカさんの連続攻撃を全部軽くいなして、リーンさん同様に首筋に木刀を添えて…


「…私の負け…」



 んで、リカさんにも色々と教える事が決まったのだった。まあ、その後はグレースさんからメープル蜂の血を分けてもらい、それを錬金ギルドの錬金室で錬金してメープルシロップに。屋敷でご馳走する訳にもいかないので錬金ギルドの厨房を借りてフレンチトーストのメープルシロップがけをご馳走する事になった。当然リーンさんに多めにご馳走して、リカさんとケイトさんにもお裾分け。



 翌日…どこからかその事がティアさんとネネさんの耳に入り…当然ご馳走するはめになるのは言うまでもない事だな。









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