第11話交渉
「ああ~ ちょっとすいません」
「…うん?」
「…なに!?今立て込んでるんだけど?」
「…邪魔…」
「…我々は今見ての通り大事なお話中でして…」
四者四様…もとい、三者三様の反応だ。三者三様の四字熟語は四人いても五人いても三者三様で表すんだったな。おっといけない。今はそんなことよりも…
「話は聞かせてもらいました。護衛依頼で問題があったとか…」
「…まあ、そうなんだが…見ない顔だな?新人か?」
「はい、昨日こちらの冒険者ギルドで登録させてもらった新人の冒険者のトヨカズ・ハヤブサです。以後よろしくお願いします」
「んっ?ああ~ そうかそうか!お前がそうか!グレースから話は聞いてるぞ?俺はこの冒険者ギルドのギルドマスターのグレンだ。昨日はなんでもポーションが不足しているのを解決してくれたらしいじゃないか!ギルドマスターとしてギルドもんを代表してお礼を言わせてもらおう。助かった。ありがとうな」
「いえいえ…こちらも材料集めを手伝っていただきましたので」
「いや、本当に助かった。もう少し話をしたいんだが…分かってるとは思うが立て込んでいてな?」
「ええ。そうみたいですね」
「ちょっと!?私達本当に大変なのよ!だから──「はい。ですのでこうして声をかけさせてもらったんです」……はっ?」
「…どういう事…?」
確か名前はリーンさんとリカさんだっけ?リーンさんは訝しげな表情で、リカさんは無表情ながらも首を傾げてこちらを見ている。
「早い話、リーンさんとリカさんの賠償金は俺が立て替えるという事です」
「…えっ?」
「…マジ…?」
「お、おい!?いいのか!?払えるのか!?言っちゃあなんだが、この二人の賠償金はかなりのもんだぞ!?」
「問題ないです」
サチが問題ないと言ってるしね。
『──イエスマスター♪問題ありません』
だそうだ。みんなには聞こえてないけどな。
「…失礼ですが…あなたは?本当にお二人の賠償金を支払えるので?」
そう言って俺に近づいてきたのは奴隷商の男性。
「ああ、すいません。昨日こちらの冒険者ギルドに冒険者登録させてもらったトヨカズ・ハヤブサです。私の身元というか身分とかについてはこの領地の領主であられるカシオペア公爵家のティア様に確認してもらえたら保証してもらえますよ?」
「「「っ!?」」」
ギルドマスター以外の三人が驚愕しているのが分かるな。まさか領主のティアさんの名前が出るとは思ってなかったみたいだ。ギルドマスターはグレースさんからネネさん経由で俺がティアさんのところで御世話になってるのは聞いてるみたいなのでその辺の驚きはない。
「…これは失礼しました。カシオペア公爵家と縁のあるお方だとはいざ知らず申し訳ありません」
「いえ…構いませんよ」
「申し遅れましたがわたくし王都近くの街で奴隷商を営んでいるドレイン・シュバルツと申します。ドレインと呼んで頂いて構いません。以後お見知り置きを…」
「こちらこそ宜しくお願いします」
さて…挨拶は終えた。ここからだろうな。本題は…
「それで…先程の件なのですが…」
「お二人の賠償金についてですよね?」
「ええ。ハヤブサ様を疑うわけではないのですが…わたくしと致しましては確認しないと先に進めないものでして…」
「それはドレインさんのおっしゃる通りですね」
「ご理解いただきまして誠にありがたい限りです」
「そこでドレインさんにお聞きしたいのですが…」
「はい、なんなりとお聞き下さいませ」
「賠償金は今すぐをご希望ですか?それともそれ以上に儲けたいとお考えですか?」
「…それは……いえ…話をお聞かせ願えますか?それからお返事しても?」
「勿論です。グレンさん?あちらをお借りしても?」
「んあっ?あ、ああ…それは構わないけど一体何するつもりなんだ…?そんなところで…」
「賠償金の元になる物をドレインさんに確かめてもらわないといけないので」
俺が手で指し示して借りたいといった場所はギルド内にある
まあ、余談だがバーの店員さんは正確にいうとこのギルドの職員さんだ。交代制で受け持ってるらしいんだ。なのでグレースさんがこちらを担当している時もあるらしいよ。グレースさん推しはその時を狙って冒険者ギルドに訪れたらいい。
『──グレースさん推しなんですか?』
とにかくドレインさんにはカウンター席に着いてもらった…。
『──ちょっと!?無視しないでくださいマスター!?』
サチがなにやらたわけた事を言ってるが気にしない。
「俺も座って構わないか?ハヤブサが何をするのか確認したいしな」
ナイスなタイミングでグレンさんがそう言ってきた。う~ん!ナイスですねぇ~
「はい、勿論です。その方がデモンストレーション販売にもなりますので…」
「で、デ~モ…ン……なんだって…?」
「要は実際にみんなの反応も見てもらった方がドレインさんにも分かりやすいという事です!まあ、なくてもドレインさんならコレがどういう事になるか分かると思います…。早速始めますね?──」
そんなわけでドレインさんは当然として、ギルドマスターのグレンさんとリーンさん、それにリカさんにも席に着いてもらう事に…。
♢♢♢
まずはアイテムボックスからユウショウ兎の肉を取り出して木のまな板の上へ乗せる。
「ほう…収納の魔法具を個人でもう持ってるのか…」
「ええ。ティアさんからお借りしてます」
サチがそういう風に言ってるのでそういう事にしておいた方がいいという事だろう。
「くっ…アタシ達でさえまだ持ってなくて、ギルドから借りてるっていうのに…」
「…羨ま…」
ドレインさんは俺がする事を黙してジッっと見ている。流石は商人っていった感じなんだろうな。何が商売に繋がるのかを一挙一動見逃さないようにしているようだ。
「まずはこのユウショウ兎の肉を包丁で叩いてから細かく切っていきます。あっ、この木の串を使っても?」
「ああ。ここにある物は全て使っても構わねぇよ」
「ありがとうございます」
何でも使っていいとの事なのでお言葉に甘えて使わせてもらおうかな。先程細かく切ったユウショウ兎の肉を串に刺していく。それと同時に設置してある火の魔法具を作動させる。この火の魔法具は何か?というと要はコンロみたいなもんだ。作動させれば火が点く。まあ、地球のコンロみたいに立派なものじゃなくて、三脚台の下にアルコールランプが置かれてるような簡易的な作りになってるんだけどね。
その上に鍋を置いてタレの材料を混ぜ合わせる。当然混ぜ合わせるのは醤油と砂糖。砂糖は水飴があるなら水飴を使った方がいいぞ?何故なら水飴を使った場合、独特のとろみと風味がでるからだ。話が逸れてしまったが、とにかくそれらをお好みで合わせて煮詰めていく。
「…砂糖は分かるが…その黒いのは…何だ…?」
「もう言ってしまいますがコレが賠償金代わりになる品ですね!」
「「「コレがっ!?」」」
「いやいやっ…コレでは賠償金にはならんだろっ!?」
「…あ、あたしもいくらにもならないと…思うわ…」
「…ふ、二人に同意…」
「…………ふむ」
三人の反応はそういった感じかな。肝心のドレインさんの反応はというと視線に鋭さが増していく…。俺はそんな四人を傍目に次から次にユウショウ兎の肉を木串へと刺した物を作っていく。
そして肝心のタレが入った鍋の方はというと、泡がポコポコポコ大量に出て徐々に煮詰まってきている状態だ…。ミリンなんかもあればもっと美味しくできたらしい。しかし俺のサチ様曰くこの世界の人からしたらこれでも十分味の革命と言ってるので問題はないようだ。
もう、分かったよな?俺が何を作ろうとしているのか。
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