第17話 お客様、ということでエスケープ 

どうやら、俺たちを無事に狩ろうとして

やって来たのはリトのお客さんらしい、

放浪に厄介事は持って来たくなかったんだけど

よりによってお客さんって…

町の端から真ん中まで逃げ帰って来てしまった

ぜ…

俺からしたらこれから起きる災害よりも厄介

だ。


「ってお前誰に何売ったんだよぉ…⁉︎」


「だから、あの人たちに工場を、」


「え…もしかして、それに加えて恨みでも売ったんですか…?」

ヒスイちゃんナイスボケ!


「生憎だがボクはそんな恐ろしいものを売る気も売ったことも無いぞ!」


「じゃ、喧嘩か?」

刀持ち歩いてるくらいだし。

実はリトって案外、戦闘狂だったりするのだろ

うか。


「んな訳あるか!ほら話すから!」

言い訳がましくリトは声を上げる。

こいつ…可愛くねぇか?


「よろしい。話したまえ。」

我ながら何様だ、



すると、

「立ち話もなんだし、あちらの茶店でどうかし

ら?氷水くらいなら奢るわよ。」

真横から、冷たく、柔らかな声が耳を差す。



「ああ、そうかありがたい、

         ん?どなた様よ?」

あの後だからかやけに落ち着いてるな。

つか、俺たちに話しかけるとは

この町の人間じゃないのか?

めっっっちゃ他人ですけど、あと美人だ。

悪い気はしないな〜…


「今日は来客が多いですね。」

ヒスイちゃんはいつも通りの反応…


「どなた様?そうね、じゃあ私は

       お客様、ということで。

      ささ、早くお店に入りましょ。」


まーたお客様かいな、

そして、紫色の長髪のおねーさんに

促され、そのまま茶店に俺たち3人は

連れ込まれた…


窓から陽の光が差す明るい店だった。

あの書店のある町とは思えないほどの

外見だ。店員も客も相変わらずの目線だが。

リト、本当に有名人だな。


そして、3対1で席に着いた。


「え、えーっとお客様?」


「ん?何かしら?」


「お客様、というのならボクに用が

    あるということになるのだけれど」




「ええ、そうよ。あなたに用がある。

     お隣のお二人さんと同じ用事。」

思いもよらず、まさかのご用件。



「工場の件ですね、」




「よし!俺はしばらく外にいるからで話を聞くな!」


さて、察しのいい方にはもう分かっているだろ

うが俺はこの放浪にめんどい話を持ち込むつも

りは一切ない。そろそろこの町が終わる

という話も今のリトの工場の話も。


俺のしょうもない現実逃避には

いらないところまである。別に気にならないわ

けじゃないが、関わったら終わりと、

そんな感じがする。だから、後でまとまった話でも聞くさ、見知らぬおねーさんとそんな

難しそうな話、出来るものか。


「そんじゃ!話終わったら声でも掛けてくれ」


「だめよ、あなたも同席しなさい。」


「え゛お客様ぁ…」


「だとさ、エスケープ」


「はい…分かりましたよ」


「だから、おにーさんって本当に素直ですね」

ヒスイちゃんは見逃さない、


「いっ、いやあ?べっ別にぃ?

気にならんでもないし、外に出てまた

追い回されても厄介だし…

    つまらなくもなさそうだしぃ…

            ごにょごにょ」


瞬時に前言撤回、

しかも割とあっさりとダサい感じに…

まあいいかぁ


「あははっ、それじゃあ。

どうせいつかこうなるんだろうし

       早い方がいいだろう。」


「どうぞ!」



始まりました、リトのお話。

工場と呼ばれる、この町を眺む山頂にある

今となってはただの廃坑の話。

そして、


今は昔、この町『バルクラ』で

起きた災害の話。オネエの本にも載っていな

かった昔話。



この地は、火山に見舞われることが多く

人が住むには困難であった。

無論、隣町には災害が。

それでも、人はその地を動くことは無かった。

他にも住める場所はあるというのに。

傲慢、というのは言い過ぎなのかもしれないが

悪意は無いが、ある神はその姿を見て

目障りに感じた。本当に心狭いことだ。

だが、それでも流石に噴火させるほどの

暴挙は出ることは無かった。




それでも、人間はそこに住む他の生き物を

利用し淘汰し自由を奪った。

自由を愛する神はただ純粋な嫌悪で。

簡単に火山を噴火させた。



それでも、人は戻って来て生活を続ける。


隣町を巻き込んで災害をもたらす

それでも人は生活を続ける。



同時に両方を起こしてもそれでも────


だから見放して見るのをやめた

でも定期的に噴火するようにしておいて。

その神にとっての嫌がらせ程度のものを残し

て。



人間のことだ、何も変わらない。










───ある日

ひとりの男がその山に目をつけた。

その火山は本当によく動く。

活火山と呼ばれるほどのものですらも

到底追いつかないペースでの噴火。

効率の良いすばらしいエネルギー源として、

賢い人間もいたものだ。呪いというには

感情の篭らないただの火山に目をつけるとは。


当時、人々はその呪われた山を

鬱陶しいと思う程度の神とお互いに同じ見方。


利用することすら考えずに。

鬱陶しさ。邪魔でも何が出来るわけでもない。

怠惰だった。それでも居座る。


でも、その男は知らなかった。

怠惰を知る暇すらも無かった。

使えるものは使う。欲のためなら何でもする。

そのような事は怠惰なる人間には出来ない。

自分の望みだけではそんな事は出来ない。

その男にはこの世界の人間には誰も

知りえない目的があった。


そうやって男は工場を作り上げた。


人々はそれを見ることすら無かった。

その時まで。


それなのに今になって人々はそれを忌む。


何故だろうか?


誰かは言う。未知には攻撃的に。

それが普通であると。


その工場では何が作られてたのか?


今となっては知り得ない。その男の

執念のその先へ。



そしてある日、幾年か経ったその日

リトという少年は現れた。

自分の知を…


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回避スキル使いは現世から帰っても現実逃避をするようです。 玄花 @Y-fuula

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