第8話

どうやら少しの間気絶していたようで、ふと意識が戻る。すぐには理解が追い付かなくて、確か何者かに背後から殴られたと思い出す。

 そう考えている間もズキズキと痛む頭。あまりの痛みに目が開けられない。




 これからどうしたものかと途方に暮れてると、2人分の足音と、女の声。


「あら、意識あるかしら」


「さぁ?分からん」


 すると、初めに口を開いた方、声の高い女の方のスマホに連絡が来たみたいだ。


「あー、はい。……はい。……あー、ちょっと救急の人迷ってるみたいで、コッチに呼んでくるからこの子の意識確認しといて」


「はぁ?…あー、ハイハイ」



 ザッ、と音とともに1人分の足音が遠ざかり、それに反して1人分の足音が近づく。

 ちらりと視線を動かして辺りの様子を見れば、俺を襲ってきたであろう奴らが数人倒れている。この女が、やったのか?





「お前、樺月 珠優だな?ちょっと失礼。…頭か、…意識あるか?おい」


 近寄った方の声の低い女、其奴に少し首元を触られ痛みから呻いてしまう。


「ぐ…っう」


「…わりぃ。ちょっと我慢してくれ。私ら歩きでな、今救急車呼んだから…とりあえず寝てろ」


「…だ、…ぇ…」


 誰だ、そう言いたいのに言葉にならない。

その言葉を聞いたソイツは、名乗った。





「…扇木 紅華(オウギ コウカ)だ」




 ────この街の頂点の名を。

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