第43話 額より気持ち

~峠~


川岸「あっ。またパンクした」


富沢「2回目やな」


川岸「もうスペアチューブ持ってないぜ。困ったな」


富沢「しゃーない。俺の使え。TPUでええなら貸したる」


川岸「ありがとう。助かった! お礼に、今日の昼飯は奢らせてくれ」


富沢「おお、嬉しいこと言うやんけ! ごちそうになるわ」


川岸「……いや、まあ、俺の財布にも限界はあるし、富沢の感覚だとショボいもんになっちまうけど」


富沢「お前の財布がTPUチューブ並みに薄くて軽いのは知ってるわ。そうやないねん」


川岸「え?」


富沢「お前が礼におごってくれるっていう、その心意気が嬉しいねん。なけなしの金をはたいて恩を返そうとする、そういうお前が好きやねん」


川岸「富沢……そうだな。よし、腹いっぱい食ってくれ」


富沢「何食わせてくれんのやろ。楽しみやな」


川岸「この先に製麺工場があるんだが、その裏のゴミ箱は監視カメラが無くてな」


富沢「チューブ返せ」

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