第073話 仕事の成果


 岩山に埋まっているルージュ石をなんとか掘りだすと、50センチ四方くらいの大きな結晶だった。


「すごいの……」

「綺麗ですね」

「これ、飾る?」


 魔石の10倍らしいけど、そこまでの値段にはならないだろう。

 だったらこんなに綺麗だし、飾っても良いと思う。


「良いんじゃないか?」

「良いと思います。アロマキャンドルで照らすと綺麗かもしれませんね」


 ジュリアさんはおしゃれだなー。


「じゃあ、ちょっと形を整形するよ」


 このままでは無骨なので切る魔法で良い感じに整形していく。


「ブリリアントカットですか?」

「多分、それ。宝石っぽいやつ」


 あまり詳しくないが、似たような感じにはできる。


「破片は売るか」


 サクヤ様が整形する際に落ちた破片を拾い、ビニール袋に入れていく。

 そのまま作業を続けていると、っぽい形に整形することができた。


「こんなもんかなー」


 巨大なブリリアントカットのルージュ石ができた。


「ハルトさん、お上手ですね」

「おぬし、本当に器用じゃなー」


 昔から工作とかこういうのは得意なのだ。


「サクヤ様、これを別荘に送ってもらえます?」

「任せい」


 サクヤ様にルージュ石を渡すと、すぐにサクヤ様の手の中から消える。


「もう4時を過ぎてますけど、どうしましょう?」


 ジュリアさんに言われたので時間を確認すると、4時10分だった。


「サクヤ様、帰りますか?」

「そうじゃの。歩いて帰ってギルドに行けば、良い時間になるじゃろ」

「では、そうしましょう」


 俺達は元の道に戻り、来た道を引き返すことにする。

 帰りもベビードラゴンが何匹か出たが、ジュリアさんの剣か俺の魔法で仕留めた。

 そして、住居区に戻ってくると、ギルドに向かう。


 ギルドは午前中に来た時とまったく同じでシンディーさん以外は誰もいなかった。


「おかえりなさーい。無事に戻られて良かったですー」

「ただいまです。あのー、他のお客さんは?」

「今日はハルトさん達を含めて、10パーティーですねー。ここは正直、儲かりませんからー」


 そうなのかな?


「ワイバーンは?」

「あれを倒せる人はそういませんよー。ハルトさんはフロック王国から来られたんですね? あっちの方が儲かりますもーん。ここで仕事をするのは地元の人くらいですー」


 だから受付が1つなんだな。


「なるほど、じゃあ、今日の成果です」


 そう言うと、サクヤ様がビニール袋の中から魔石を取り出し、カウンターに置いた。


「えーっと、10個ですねー。では、ベビードラゴンの討伐料が銀貨2枚ですので全部で金貨2枚になりまーす。一応確認ですけどー、魔石は売られますかー?」

「魔石は魔法ギルドの方で売ります」

「ですよねー。では、こちらが討伐料でーす」


 シンディーさんがカウンターに金貨2枚を置いたので財布に入れる。


「ありがとうございます」

「これから魔法ギルドに行くんですかー?」

「ええ。ルージュ石の方もありますんで」

「じゃあ、パパにお仕事頑張ってーって伝えておいてくださーい」


 もう夕方なんだけどな。


「わかりました。伝えておきますよ」

「ありがとうございまーす」


 俺達は冒険者ギルドを出ると、今度は魔法ギルドを目指す。


「………………」

「言いたいことがあるならどうぞ」


 歩いていると、サクヤ様が微妙に何か言いたそうだったので促してみた。


「いやー、どうも好きになれんな。ジュリアもそう思うだろう?」


 ジュリアさんに振るなよ……


「うーん、まあ、人はそれぞれですから……サクヤ様が好まれないもわかりますけどね」

「あれ、絶対に友達が少ないぞ」


 まあ、わからないでもない。


「女性より男性に人気そうだなと思います」


 ジュリアさんがオブラートに包んだ言い方をする。

 はっきり言えば、同性に嫌われるタイプなんだろう。


「じゃろ?」

「まあ……どちらかといえば、私もそっちのタイプの人間なような気がしますけど」

「おぬし、嫌われておったのか?」


 はっきり聞くな。


「いえ、そういうわけではないです。ただ、私は女子高、女子大でしたし、共学に通ってたらどうかなーっと」


 少なくとも、男子には人気だったろうな。


「ふーん……おぬしは家柄も器量も上じゃからな。そういうこともあるかもしれんのう」


 この話、やめた方が良いな。


「そんなことよりも夕食はマグマ亭でいいです?」

「そうじゃの」

「空いてますかね?」


 それがあるんだよなー。


「ダメじゃったら別の店に行っても良いし、待っても良いじゃろ。それにまだこの時間なら空いておると思うぞ。さっさと魔法ギルドに行って、転移で別荘に飛ぼう」


 トロッコを使わなくても住居区から繁華街に飛べるしな。


「じゃあ、そうしましょうか」


 俺達は足早に魔法ギルドに向かい、中に入る。

 魔法ギルドは冒険者ギルド同様に受付にいる一人しかいなかった。

 だが、その一人の存在感が強すぎる。


「冒険者ギルドとの差が……」

「うーむ……我、反省。シンディーも悪くなかったかもしれん」

「ちょっと怖いですよね」


 俺達は扉付近でひそひそと話す。


「前にもネタになっていると、言っただろう。おそらく冒険者ギルドの娘のところから来たんだろうが、それも含めてもネタだ」


 そっすか……


「あのー、やっぱり座ってくださいよー」


 そう言いながら受付に向かう。


「わかった」


 ハワードさんが素直に座った。


「パパ、お仕事頑張ってー……だそうです」

「いや、あと1時間もせずに終わるんだが……というか、お前が頑張れ」


 それは俺も思った。


「可愛らしい娘さんですね」

「やらんぞ?」

「既婚者ですって」


 まだだけど。


「いや、お前は稼いでそうだし」


 あー、そういや複数嫁がオーケーな世界だったな。


「俺はジュリアさんだけでいいので」

「そうか……それで? 仕事はどうだった?」


 ハワードさんが本題に入る。


「ベビードラゴンを10匹倒したので魔石の換金をお願いします」


 そう言うと、サクヤ様がカウンターに魔石を置く。


「10か……ベビードラゴンの魔石は銀貨2枚だ。金貨2枚だな」


 討伐料と一緒か。

 ゴブリンよりかはずっと良いが、ファイアードラゴンの後だから安く感じる。

 まあ、同じドラゴンという名前でもまったくの別物だしな。


「お願いします。それとルージュ石ですね」


 そう言うと、サクヤ様が採取した50セントくらい塊と破片をカウンターに置いた。


「ほう……! この木っ端は微妙だが、このサイズのルージュ石は良いな。これなら金貨10枚で買い取ろう」


 おー、高い!


「木っ端は?」

「全部で金貨1枚だな」


 まあ、そんなもんか。


「じゃあ、それも売却でお願いします」

「わかった。となると、全部で金貨13枚だな」


 ハワードさんが金貨13枚をカウンターに置いたので財布に入れた。


「ありがとうございます」

「また頼む」

「わかりました。では、これで失礼します」


 俺達は金を受け取ったのでギルドを出る。

 そして、転移で別荘まで戻ると、マグマ亭に向かった。

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