第063話 ヒロイン登場(攻略不可)
ギルドをあとにすると、住居区を見て回り、午前中に引き続き、観光客としてはしゃいだ。
そして、一通り見て回ると、夕方になったので夕食を食べ、別荘に戻る。
「美味かったのう」
「ホントですね」
「この土日は本当に堪能しました」
俺達は別荘のリビングまでやってくると、キョロキョロと見渡す。
「掃除されておるの」
「本当にやってくれるんですね」
「すごいです……」
まるでホテルみたいだ。
「まあ、ありがたい限りじゃな。では、帰るとするか」
明日は月曜か……
「そうですね」
「ちょっと名残惜しく感じますが、仕方がないです」
本当にそう。
名残惜しい。
「また週末に来ようよ」
「そうですね……あの、せっかくなんで金曜に泊まりませんか?」
「良いね。泊まって、そのまま冒険者ギルドに行こうか。サクヤ様、どうです?」
サクヤ様に確認すると、腕を組み始めた。
「うむ、そうじゃな……」
ん?
歯切れが悪いな……
「どうしました?」
「あ、いや、たいしたことではない。金曜じゃったか? 実は人というか神と会うことになっておってな。送ってやるからおぬしらは先に行っておれ。我も話が終わったら行く」
神様ってノルン様だろうか?
「無理ならやめますよ?」
「いや、せっかくじゃし、泊まれ。どうせならジュリアの酒に付き合ってやったらどうじゃ? 前にそういう話もしておったじゃろ」
あー、ジュリアさんが飲んでみたいって言ってたし、それに付き合う話をしていたな。
「ジュリアさん、どうする?」
「そうですね。ここで飲むのも良さそうです」
確かにここは良いだろうな。
「じゃあ、そうしよっか」
「はい。楽しみです」
ジュリアさんが可愛らしい笑顔で頷く。
「よしよし。では、今日は帰るぞ」
俺達は楽しい週末を終え、帰ることにすると、ジュリアさんの家に飛んだ後、自宅に戻った。
「ハァ……仕事か」
風呂にも入り、時刻はすでに9時を過ぎている。
ゲームをしているのだが、ため息が出た。
「仕方がないじゃろ」
「いや、わかってますよ。でも、週末が楽しい分、仕事がね……」
「人生はそういうメリハリがないと逆につまらんもんじゃぞ」
それはわからないでもない。
「前向きになれる言葉をください」
「ジュリアを嫁に迎える気なんじゃろ? 家族のために頑張れ。それが家長じゃ」
「はーい……よし! 頑張ります!」
切り替え、切り替え。
「それで良かろう。どうせ明日もジュリアはウチに来るじゃろ」
多分、ゲームをしに来るだろう。
「俺、もうちょっと料理を覚えようかなと思います」
「良いと思うぞ。我はカレーが良いな」
カレーならいける気がする。
明日はカレーにしよと思いながらゲームをし、週末を終えた。
翌日から仕事が始まった。
月曜日が辛いのは社会人だろうが学生だろうがほとんどの人がそうだろう。
俺も辛いなと思いつつ、仕事をしていく。
ただ、この時期は繁盛期ではないため、残業することもなく家に帰れた。
家に帰ると、サクヤ様の要望通り、カレーを作り、昼休みに声をかけておいたジュリアさんと一緒に食べる。
「おぬしとジュリアの料理の大きな差は綺麗さじゃな。人参も玉ねぎも均一じゃなさすぎるじゃろ」
「サクヤ様、人参は均一の太さじゃないんですよ」
無理無理。
「まあ、そうじゃの。うん、美味い……」
「食感が異なるのもそれはそれで良いものですよ。それに良く味が染みてて、美味しいです」
ジュリアさんはフォローの天才だな。
「いっぱい食べてね。サクヤ様、明日にでもノルン様にもあげてください」
ちょっと量が多いのだ。
「うむ。あやつは何でも食うじゃろ」
この日は夕食を食べ、ジュリアさんのゲームを眺めながら過ごし、翌日は逆にジュリアさんに招かれたので夕食をご馳走になった。
今週はそんな感じでほぼ一緒に夕食を食べ、一緒に過ごしていた。
そして、ようやく金曜になる。
この日は午前中から出先で打ち合わせがあったため、ジュリアさんの弁当は遠慮した。
「11時半か……早飯にしようかな……」
出先の駐車場で社用車に乗り込んで時計を見ると、昼時にはなっていたので会社に戻る前に昼食にすることにする。
車を走らせ、出先と会社の中間地点にある餃子が美味しいことで有名な中華料理屋にやってきた。
そして、店に入ったのだが、まだ人がまばらにしかおらず、空いている。
「いらっしゃーい! 何名様ですかー?」
店員さんがやってきた。
「ひとり――」
「3人です」
ん?
「テーブル席にどうぞー!」
何が起きたのかと思って振り向くと、ニコニコと笑っている超絶美人と評判のノルン様がおられた。
ノルン様はいつもの女神様っぽいペプラムではなく、こっちの世界の服を着ている。
さらにノルン様の隣には背が低く、サクヤ様と同じくらいに見える少女が立っていた。
ただし、サクヤ様ではない。
サクヤ様とは違い、黒髪だし、長さも肩口で切り揃えられている。
着物を着ているし、座敷童みたいだ。
「あの……」
なんでいるの?
そんでもって、こちらの少女は誰?
「まあまあ」
ノルン様は笑顔で俺の背中を押し、テーブルに向かう。
特に逆らいもせずにテーブルまで行くと、席についた。
すると、対面にノルン様と黒髪少女も座る。
「何にします?」
ノルン様はニコニコと微笑んでおり、ゲームをしている時の話しかけるなオーラを出している感じではない。
「餃子定食」
「私はダブルにしましょう。タマちゃんは?」
タマちゃん?
「私は天津飯」
「それだけでいいですか?」
「じゃあ、唐揚げも」
「だそうです」
ノルン様が見てきたので手を上げて、店員を呼んだ。
「はい、何にしますか?」
「餃子定食と餃子定食のダブル。それと天津飯と唐揚げをお願いします…………タマちゃん、ごま団子食べる?」
「タマちゃん言うな。食べる……」
食べるのね。
「それもお願いします」
「かしこまりましたー」
店員さんは頷き、厨房に向かう。
「ノルン様、どうされたんですか? あ、アサイノタマヒメ様におかれましては御機嫌麗しゅう」
「コロッと変わらないでよ……」
浅井の神様が何してんだろ?
中華を食べたかったのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます