1000字に向けた文語的な表現
某日の事。私は自室で過ごしていた。
寒くなるかと思えば気温が上がり、昨日の予報で雨と聞いたのに今日カーテンを開ければ晴れている。
そんな毎日であるが夜間の気温は少しずつ下がってきているようだ。
冷房に頼らずとも窓を開ければ快適に過ごせる事に季節の移り変わりを感じていると、些細なアクシデントが発生した。
蚊だ。
動物の血を吸い、痒みを与える。疫病を齎す。到底有難い生き物とは言えない。
それが室内に入り込んでしまった。
間もなく眠る予定である。日中でも気になるというのに非常に迷惑な話だ。
仕方なく寝支度を一時中断し、私は厄介な訪問者退治に乗り出す事となった。
先ず手で叩いて退治しようとするも、取り損ねて見失う。実に宜しくない。
暫く探してみるが、発見出来ない。本当なら殺虫剤でも撒いてしまいたいが、体質的に薬剤が得意ではないので夜は使いたくない。
それではと別の手段を検討する。先ずこれ以上の侵入を防ぐ為に窓を確認した。網戸は閉まっているのだが、どこかしらに隙間があったのだろう。手でしっかりと押さえて閉め直す。それから室内の光で集まってこないようカーテンの位置を調節する。窓だけは開けたままにしておいた。
アロマを焚いて扇風機を壁に当たるように調節し、扉を開ける。
これで動きがあるのではないか。
倒れてくれるなら上々、部屋の外へ出て行ってくれても眠る事は出来る。
そのままぼんやりアロマの匂いを嗅ぎ、扇風機の風を受ける。
何の気配も感じられないがそろそろ良いんじゃなかろうか、と扉や窓を閉めに動く。すると視界に黒い物が入り、あろうことか目の前を通過していった。
タイミングに少々腹が立つ。しかし姿が見えたのは好都合、と飛んで行った方向を確認する。陰やらピン留めの跡やら、紛らわしい物に騙されて余計苛立ちながらもやっと天井に止まっているのを発見する。
高さがあるので手は届かない。また逃げられても困るので慎重に、目を離さないようにしつつ塩梅の良さそうな隙間用掃除道具を掴んで目標の真下へ入るとそれを振った。
見事我完遂せり。
染みにならないよう後始末をして、再び私は平穏な夜へと戻ったのだった。
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