いつかまた

あすと

二人の出会い

第1話 出会い

 五月中旬。朝四時に起床し、何をするかというと。

 まず二段ベットから降り、リビングへ向かう。そして、テーブルにある私のスマホをとって、自室に戻った。

 二段ベット付属の机の電気を付け、椅子に座ると、私はポケ〇を開いた。

 ポケ〇は配信できるカラオケアプリだ。ここでは、配信者(枠主とも呼ばれる)が配信枠、つまりルームを開いて、インターネット上の人々と会話やカラオケを楽しむことができるのである。また、フォローやDM(メッセージ機能)、さらに歌ったものをアップロードすることができるのだ。

 私は「かいちょー」として配信を始めてもうすぐ二週間が経つ。歌うことが大好きで、ストレス発散のためにインストールしたアプリだったが、ネットでの友達ができたり、さまざまな人の歌や話を聞いたりできて、とても満足していた。

 ポケ〇を開いて朝から歌を歌うのか……否、歌うはずがない。私は配信開始ボタンを押し、配信を始めた。それから机に勉強道具を広げ、「ペンの音〈asmr〉」を始めたのだった。


 しばらくすると、誰かが私のルームに入ってきた。

 昨日の朝の配信にも来てくれた人だった。


「おはようございます」


 私は小声で挨拶した。相手は、


『おはよう』

『朝から勉強偉いわねぇ』


 とメッセージをくれた。


「ありがとうございます。まあ受験生なんで当たり前ではあるんですけど」


 私は中学三年生でバリバリの受験生だった。私が目指す高校、岩見崎いわみさき高校は地域のトップ高でかなり勉強しなければ合格しないだろう。


『私は朝の準備でもするわ』


 早々ルームを抜けていった。気にせず勉強を再開する。

 また誰かが入ってきた。


『初めまして!初見です』


 というのは、「初めてこの枠を見かけて初めて入りましたよ」ということである。

 数ある枠の中から私の枠に入ってきてくれたことに感謝しながら、私は相手のアイコンをタップした。そして出てきたプロフィール欄をチェックする。そこには『中3』とタグ付けされていた。初めましての人はプロフィールとタグを確認するのが私の中では当たり前だった。


「同い年だ!初めまして、さん」


『呼び捨てでいいよ!あと俺男ね』

『俺も受験生だし一緒に勉強頑張ろうな!』


「うん!がんばろ!」


 同い年の、しかも一緒に勉強するということは初めての体験だったので、集中を削ぐような音をたてないように気を使った。たいてい勉強枠に入ってくる人は、飽きてすぐ枠から抜けていくか、話をしていくか、ただ暇だからいるといった人ばかりだったので、一緒に勉強できることが嬉しくもあった。


『かいちょーって勉強してるとき唇ちゅうちゅうしちゃうんだね』

『なんか、ちょっとエロくて反応しちゃったw』


 ゆうがルーム内でメッセージをくれた。

 どうやら、私の唇を吸う音がエロかったらしい。というか、気を付けていたのにそんなことをしていたとは、申し訳なかったが。


「これー?」


 反応しちゃったと言われたら、ちょっとばかりいじめたくなる性格であるのが私。ちゅうちゅうと吸ってわざと音を鳴らし、意地悪っぽく笑った。


『ちょ、やめてw』

『たつw』


「いじめたくなっちゃうなぁ、そんなこと言われたら」


 今の私の顔はきっと、意地悪っぽくニヤリとしているんだろうなと思った。


『明日いじめ返すからな!!w』


「待ってまーす」


 クスッと笑った私は、再び勉強に取り掛かる。明日の仕返しはどんなのだろうと考えながら。

 これが私とゆうの出会いだった。

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2024年12月13日 00:00
2024年12月16日 00:00
2024年12月19日 00:00

いつかまた あすと @astoryforyou

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