どうやら超未来の滅んだとされている異星人になったらしい。とりあえず近くの星を確認したら憧れの異世界があったので、行ってみた
ちょす氏
いんすとーる
⋯⋯突然なんだが、知らない天井だ。
僕はどうやら寝ていたらしい。
「あれっ」
起き上がって色々思い返すが、前後の自分の記憶がない。
暫く考えてみる。
すると過去の事はふわっと頭の中にやってきた。
「地球⋯⋯あー伊東⋯⋯?」
少し思い出せたのは、自分の名字が伊東だという事。そう認識した瞬間、じんわり思考が広がっていく。
あー伊東俊平だ。そうそう。
俺の名前は伊東俊平。合ってるはずだよな?
「何処だここ⋯⋯」
どうやら俺は、身に覚えのない場所で横になっていたようだ⋯⋯ん?
「うえっ!?」
う、浮いてる⋯⋯!?
床から10cm以上も浮き上がっていて、思わずその場でジタバタした。
だが空中でよくわからない動きをしている変な奴になってしまい、一分近く足掻いた結果、冷静になって落ち着く。
「おー⋯⋯」
その場で胡座をかくと仙人のように浮いたままだ。
って、あーそうじゃない。とりあえず何がどうなってるから確認しないと。
「広いな」
パッと見、特にモノがある訳ではなく、ただ某ゾンビゲームのような研究施設っぽい枠組みに装置なんかが撤去された簡素な部屋みたいだ。
その中心に多分今俺は胡座をかいている。
「⋯⋯全く記憶を思い出せない」
俺は何でこんなことになってるんだ?
それに。
「何だこの服?どうなってんだ?」
随分変な服装だ。
宇宙人みたいなピッタリとした全身スーツを身に着けているみたいだ。
「⋯⋯もしかして」
──一つ、頭に浮かぶ。
もしかしたら宇宙人になんらかしらのタイミングで遭遇し、見られたくないものを見てしまったとかそういう理由で誘拐された⋯⋯そう考えるのが自然だ。
もしそうなら、俺は今、宇宙にいる⋯⋯とかそんなロマンあふれる状態なのか?
動けるか確かめる。
結論無理。やったことなさ過ぎて全くうまく行かず、その場でジタバタしている変な奴(2度目)にしか見えん。
「んー⋯⋯⋯⋯」
どうにもならないので、カッコつけて顎に手を当ててみる。⋯⋯どうやらこの空間はかなり広いぞ。
だって、奥まで見えるけど、行き止まりがどこにも見当たらないって事は、それくらい広いって認識になる。
それから数分色々頭で考えてみるが、何も解決しない。どうすればいいかと腕を組んで悩んでいると、ふと気が付く。
「腕時計?」
なんで気付かなかったんだ?
あまりに自然なフイット感だったから、全然視界に入っていても気が付かなかった。
「スマートウォッチ的なデザインだな」
いろんな角度から見ても普通だ。宇宙空間(仮)だとしても、こういうのは変わらないのかもな。面白い。
とりあえずちっさい画面に触れると、とんでもない違和感に気付くことになった。
「⋯⋯ん?」
んん?んんん?んんんんん?
⋯⋯!!!!!????
頭の中が、ドンドンその違和感に追いつけず、思考回路がおかしくなっていく。
「うっ、えっ?⋯⋯はっ?」
──なんじゃこりゃ!?
時計の画面を見ても、特に光ったり起動した様子はない。ただし、俺の目にはしっかりと2つの画面が当たり前のように浮いている以外には。
「⋯⋯え、なになにこれ。怖っ」
瞳の動きに応じてネット検索のタブが着いて来るような感覚。あまりにも自然で、絶妙な気持ちの悪さがある。
別に悪い訳ではないのに、自分の神経と一体化している変な異物感。
なんとなくの冷静さは取り戻したので、タブの1つめを覗く。
あるのは至って普通のスマホのホーム画面。
若干PCのホーム画面と似ているような気もするのだが、なんか変な感じがする。
「アプリは結構入ってるな」
しっかし、全く読めん。
何語なんだ?時々読める漢字はあったりするんだけど。
「⋯⋯⋯⋯謝謝?」
なんか読めると思ったら。
⋯⋯これ、中国語か!
て、解決なんかしないよなぁ。中国語なんて読めんし。漢字でなんとなくの雰囲気を感じるならまだしも。⋯⋯どうしよう。
と、同時に2つのタブが目に入り、そこにも似たような文体で文章が書かれていたのだが。
「⋯⋯こちらを、ダウンロードしてください?」
今度は読める。日本語だ。
いや、時計なのにダウンロードって。
とはいえ、ここは宇宙空間なのだから、科学技術なんかもスケール感が色々あるだろう。言われた通りにするしかないよな。
だけどどう押すんだ?なんて思ったより僅かに早く、カーソルに近いものがダウンロードをタップしたような反応を示した。
マジで?そんな事あんの?
『ダウンロード開始』
『完了』
じゃあさっきのは視神経と同化してる的な事なのか?すげぇわ。宇宙。
などと独り言を言っている5秒の間に完了した。
ネット回線のえげつなさが凄い。
"まずはこの文章をお読みいただき、誠にありがとうございます。
恐らく、私のことを不審に思われるかもしれませんが、どうかご安心ください。
証拠の一つとして、今あなたが言語パックを素直にインストールしていただいたおかげで、この文面をお読みいただけております。これが信頼に足る証でございます。
次に、こちらの項目にあるパックをインストールしていただく必要がございます。少々負荷がかかり、また過睡眠状態に至るかと思いますが、どうかご安心ください。次に目覚めた際には、起動して「タブで扉」と検索していただければ、問題は解決いたします。
長々と失礼いたしました。その時が来るのを私たちはお待ちしております。
⋯⋯ん?
一つ目のタブにこんなのあったか?
半信半疑で文章を読むと、どうやら俺がインストールをしたのは言語を分かるようにしたものらしい。
てことは、さっきの中国語のようなものが、インストールした事によって読めるようになったと。
すげぇな。マジで未来の技術やん。
文面からも色々気遣いが見て取れるし、まぁ信じる以外に今情報がないってのも現実だ。
過睡眠というやつがどういうものかは字面でなんとなく予想できるし、横になるか。
と、横になって画面にあるこのもう一つの項目を見て頭の中で若干意識したその瞬間⋯⋯気持ち悪さと意識が混濁し、俺はそのまま力尽きたように瞼が閉じた。
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