第42話 オメガはアルファに求婚する

「ルノ」


 オレは彼の側に近付いて、その手を取る。

 オレよりも大きな手は、見た目のたおやかさを裏切って固くて少しザラザラしていた。


「オレの、ルノ」


 オレのダメダメアルファに。

 オレはお前と一緒にいることを自分で決めたのだと、伝えたい。


「愛してる」


 大きな手を口元に引き寄せて、その指先にキスを落とす。

 少しザラつく男らしい指先の持ち主は、驚きに固まった。

 これでもか、というほど大きく見開いた青い目が愛おしい。


「ねぇ、ルノ」


 オレはポケットから、王妃さまたちからのプレゼントを取り出した。

 ルノの傍らに片膝ついて跪き、それを掲げ彼に問う。


「オレと一緒に生きてくれませんか?」


 王妃さまたちからのプレゼントは、太くてゴツイ、ペアリング。

 王家の紋章があしらわれたソレには、シェリング侯爵家とランバート伯爵家の紋章も入っていた。

 ゴツすぎて女性の指には相応しくない指輪だが、男同士のオレたちであれば似合いのペアリング。

 一対の指輪は、笑ってしまうほど太くてゴツくて必要以上に立派なモノで。

 普段使いには仰々しすぎる。


「アナタを愛しながら生きることを、オレに許してくれますか?」


 それでもきっと、この先の人生は。

 この指輪が相応しいほど、特別になる。


「ァッ……」


 オメガから求愛プロポーズされたアルファは、面白いほど動揺していて。

 喉に絡まった言葉を吐き出せないようだつた。


「心から寄り添い、生きていくことをオレに許してくれますか?」


 しっかりしろよ、侯爵さま。

 伯爵令息ごときに振り回されてるんじゃねぇ~よ。


「……はぃ……はい!」

「よかった」


 一生かけてぶん回してやるよ。


 覚悟しとけ!

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