第14話 健からの着信

着信履歴ーーー健。


健の名前を見た瞬間、ぼろぼろと涙が零れた。

忘れようとしてるのに、どうして電話なんてかけるの?





コウさんは脱いだパーカーを私の背中に掛け、部屋を出た。

ドアの閉まる音。


私は健に電話を掛けた。


『美琴?』

「うん。どうしたの?」

『ちゃんと家に着いたか?』

「うん。大丈夫、着いてるよ」

『それならいいんだ。美琴んちのあたり、金曜日の夜って酔ったヤツが多いから気になってさ』

「そっか。心配してくれてありがとう」

『なんか、声おかしくないか?』

「‥‥寝てたから」

『ごめん。起こしちゃったな』

「うん」

『じゃ、おやすみ』

「おやすみなさい」


心配なんてしないで。

結婚するなら花ちゃんだけに優しくすればいいのに。

こんな風に心配してさ。連絡してきてさ。

必死になって諦めようとしてるのに、これじゃ忘れることなんてできないよ。


通話が切れたスマホを握りしめて、また私は泣いてしまうのだった。







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