第18話 カミエラビ GOD.app

 前回の主人公でもあり、街中のスクランブル交差点で能力を暴走し、その場にいた204人の通行人と共に消滅した小野護郎おのごろうこと、ゴロー。


 全世界のてっぺんの存在にあたる殺し合いによって選ばれる『カミエラビ』はゴローの消滅と共に一旦中止となった……。


 ──あれから12年の時が流れ、興信会ごぜかいのビル内部でフードで顔を隠した小野螺流おのらる(ラル)が侵入。

 相手はまだ小学生であり、呼吸を整えながらも大事そうに盗品を抱え、繁華街へと逃げていった……。


 ──次の日、小学生の佐々木依怙ささきえこ(エコ)は学校の課題でもある自由研究として、ゴロー消滅事件のことを詳しく捉え、教室での発表で熱弁していた。


 ──あの事件は集団幻覚による828事件と呼ばれるようになった。


 エコが興味津々なのも無理もない。

 事件が起こったことの記憶はあるが、その時にいた首謀者のゴローという人物の存在が完全に抜け落ちていたからだ。


 現代の科学では追求もできず、この奇怪な事件は袋小路に入ったままでと……。


 ──さらに事件の被害にあった人々は意識障害を持ち、歳をとらない不老者となるセミパーマネントという障害を負ってしまうが、それを生かし、一般社会で共に働くことが許された。


 現代、事件の現場は立ち入り禁止で、関係者以外は入れなくなっており、国が監視しているという状況だ……。


 ──しかし小学生には難しい内容でもあり、先生はヒイてしまい、大人な自由研究ですねと話を切り上げさせ、次の生徒による大きくさせるカブトムシに注目が行く生徒たち……。


 ──エコは事件に関わった人々が皆揃って、光の中で神様を見た、願い事を叶えてくれたかもという共通の発言で、自身の夢の中でも見た一人ぼっちの神様と境遇を重ねる。


 謎を解明するために商店街を彷徨いていると店のシャッターに『12年前の事件を起こした男を知っていたら、情報を求む』の貼り紙によるエサに釣られて……。


 ──昭和時代の歌謡曲みたいな緩やかテンポのオープニングテーマ曲は『風化』。

 ギター演奏が一切なく、アコーディオンに繊細なピアノの流れに加わる女性ボーカル、名無なな之太郎のたろうの凛とした歌声。


 そこへ、第一期のような映像の展開で、この第二期シリーズで起こる出来事を流してくる。

 出だしはキャラたちが抱える葛藤、サビでは激しいバトルシーン。

 ネタバレじゃないラインで抑えつつ、予知夢のように先読みで見せてくるのだ。


 エンディング曲は四人の組ロックバンド、LEEVELLESによる『幸福のすゝめ』だ。


 早口のボーカルからサビはサウンドが強調される主題歌のようなロックな楽曲。


 エコのお人好しな人助けの心情を巧みに表した歌詞に、この最悪の世界での自分の価値観とは何だろうと……。

 こんな歪んだ世界を愛したら、僕だって幸せになれるだろうか……というラルの心境も交差する内容だ。

 持ち前のスマホがくるくると逆時計回りをする映像は第一期と同じ作りでもある。


 ──第二期になり、能力をぶつけ合う殺戮したバトルだった物語は急展開を迎える。   


 まずは新たな主人公となるボクっ娘なエコの存在だろう。

 泣いてる人がいたら手を差し伸べすのが人間だと言う心優しいエコがリョウの銃撃からラルを庇う中、12年前にゴローと最後の戦いをしたリョウは盗んだスマホを返してとラルに迫るのだ。


 ──ここで第一期のリョウにスポットを当ててみる。

 元は重い病気により、ろう者で車椅子生活だったが、亡くなった兄の能力により、奇跡的に回復し、今は銃撃しながら自由に動けるという身に驚いてしまうだろう。


 しかもゴローの弟として生まれてきたラルだけはゴローのことを覚えており、彼を蘇らせるにはこのスマホが必要不可欠だと言い張るのだ……。


 ──このような練り込まれた作風の割りに、作品自体の評価はほとんどなく、異様なほどに知名度は低い。

 第一期の放送でよくありがちなストーリー設定とネットで叩かれ、キャラがフルCGで作られており、動きに違和感があるという点も。

 その他の人物には灰色のマネキンのような映像となっている手抜き感もあり……。


 この世界を選ばれた一人の神が創造すると大それた設定の割には街中でしか動きがないという箱庭のような感覚も変わらない。

 舞台設定もダークな内容で明るく楽しい学校生活というものもまるで無しだ。


 ──叩けば叩くほどにホコリが出てくる作品のゆえに第一期を全話視聴していても意味不明な箇所が異様なほどに目立つ。


 エコの性別はお嬢様呼ばりからして女の子なのか、ラルはあの日消えたゴローとどんな繋がりがあるのか……などと第二期を観ていても色々と謎が多すぎるのだ……。


 ──神を決めるためのデッドオアアライブのような第一期よりかは、狂っていたキャラたちが障害を持ちながらも、善人へと気持ちを入れ替えて共存して暮らすという内容となり、幾分かは人間性が柔らかになった。

 それを中心にキャラクターの深みが増したような気もする本作でもある。


 単なる神の座を奪うための争いからストーリーが細かく練り込まれ、実写ドラマみたいな作りへと変化した。

 新たな視点での物語となったシーズン2とも言えるだろう。 


 ──この物語は前にも記したが、街中で平然と神になるための死のバトルが続く。

 決して万人向けの作品ではないが、TVゲーム感覚で観ていると不思議と物語に引き込まれる。

 佳境に行くにあたって、これまでの謎が解けてきて、この作品の意外性を目の当たりにするだろう。


 ──まだこの淀んだ世界は終わっていない。

 そう、救いの手を求めて……。

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