第14話 推しの子

 恋人として好きではなく、二次元という憧れで好きだという想い、それは推しの子。


 大人気売れっ子アイドル、星野ほしのアイの子供として転生し、彼女の愛の育みで育った双子の兄妹アクアとルビーがそのルックスを生かし、芸能人として活躍する作品である。


 ──大人気漫画をアニメにした第二期の本作では『東京ブレイド』という十代の若者が中心の2.5次元の演劇の劇場が舞台となり、少し前まで恋愛リアリティショーで恋人同士となったアクアと黒川くろかわあかねが出演することに……。


 そこへGOAが書いた舞台の脚本に難があると、漫画家の鮫島さめじまあびこ先生が脚本のリテイクを強く希望し、脚本は白紙に戻る。


 あびこは休憩がてらに別の演劇を見に行き、現作とは表現が違う、舞台での物語作りの難しさを身を持って思い知るのだ。

 こうしてGOAとの共作によりページは書き直され、今度の新しい物語は何があっても自己責任というルールの元で新しい形の東京ブレイドの稽古を再開する。


 だが、アクア自身に問題があり、感情を表に出さない性格であるせいか、このままでは演技に支障が出ると金田一きんだいち監督からの厳しい指摘があった。

 アクアは幼少の頃にアイドルで大好きだった母親がファンの一人の手によって失うのを目撃し、深い心の傷、つまりトラウマを抱えていたのだ……。


 アクアはこの傷さえも大きな武器になるとあかねに打ち明け、役者になったきっかけが『大人気アイドルのアイの人生を奪った犯人に復讐すること』だと伝え、じゃああかねも一緒に復讐してあげると同意する。


 その影の表情を見抜いた監督もアクアに対し、何もかもさらけ出し、役者も心も成長したいのなら、刀鬼とうきの感情を上手く表現してみろと……。


 一方でいつも誰かの肩を支え、自分は目立たず、主役じゃなく調整役に尽くす有馬ありまかなに、監督の言葉で息づいた刀鬼を演じるアクアの思いがけない一言に、有馬は主役のあかね以上に輝いてみせる。


 ──アクアも失ったアイを救えたらと悔やみながらも愛する人、鞘姫さやひめ(あかね役)を絶たれた刀鬼に想いを重ねて憎しみの演技をし、初日の舞台は幕を下ろす……。


 ──幾つかの舞台のスケジュールを終え、毎度のように飲み会に参加するメンバーにさり気なく加わったアクアは、アイのことを知っている金田一と接触するが、肝心の情報は掴めないままだった。

 そこで人気俳優の姫川大輝ひめかわたいきが会員制のガールズバーに金田一を誘うが、金田一は酔い潰れて眠り、恥ずかしい過去話は聞けず仕舞いに終わる……。


 アクアはこの機会を逆手に取り、実は姫川が狙いだったと言い張り、依頼結果のDNA鑑定からして姫川に自分アクアと父親が同じことを伝えるのだった……。


 ──GEMNによる主題歌は『ファタール』。

 芸能人という偽りの仮面を外し、転生前の顔を見せるシーンや、ビルの屋上にて幼少期の姿で大切な人に手を差し伸べる場面などの暗い流れから、サビでは東京ブレイドの賑やかな稽古風景へと切り替わる。

『あなたがいないとアイがないと生きていけない』と好きな人への一途な想いの歌詞を永遠に綴っている楽曲だ。


 エンディング曲は羊の方が響きが良いからと羊文学ひつじぶんがくによる『Burning』であり、重厚なギターが交差するハードロック。

 時に静かにリフを刻み、うねるようにストロークをかき鳴らすさまは彼女らにしか出来ない形で、タイトルの炎のようなに熱い内の想いを秘めた激しいロックサウンドだ。

 喪服姿のルビーが命を燃やしながら走り、次の人生へのドアノブに手をかける所でエンディングが終わる。


 ──元は産婦人科をしていた敏腕の医師が子供を身ごもったアイと出会い、彼女の推しのファンだった彼は彼女を応援する形となるが、ある日、アイの熱烈なファンによって崖から突き落とされ、彼は命を奪われてしまう。


 しかし今度はアイの双子の子供、アクアとして転生し、妹のルビーと共に順風満帆に第二の人生を謳歌するのだが、今度はアイが狙われてしまう悲劇に……。


 アクアはアイを殺した首謀者を見つけ出すため、アイが過ごしていた役者の道へと歩み出すという憎しみに満ちたダークファンタジーが見え隠れする物語となる。


 ──登場人物も個性豊かで芸能界の汚れた裏側が見えるという新感覚の物語でもあり、『クズの本懐』などの作家とタッグを組んだ作品で一気に有名作へと上りつめた。


 その人気はアニメだけに留まらず、実写ドラマや映画化にもなり、東京ブレイド編は実写舞台にもなるほどの勢いだ。


 原作やアニメと違い、実写バージョンはコスプレ色が強く、キャラ設定も難ありだが、あの『彼女お借りします』の実写版のように、これも一つの過程かなと思っていたりもする。


 ──第二期ではルビーの出番は少なめだが、彼女がアイのようなアイドルとしての殻を破り、第二のアイとなるシーンは近い。

 気分でしかアイになれないあかねとは違い、常に両目にスター性を秘めたルビーがアニメでどう化けるのか、今後の流れに期待したい。

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