.

────…トンッ…






君の逃げ道を塞ぐ俺は意地悪?



それとも



それでも逃げようとする君が小悪魔なのか?







「……………ッ」







─────カタカタ……。






俺に背中を向けてはいるけれど、微かに震える指が見える。




「…ふっ…」




笑みが漏れる。




ほんといじらしいな。



そんな一生懸命に隠れなくてもいいのに。




そこまでして背中向けても、もうバレバレやよ?





───…その震えてる指に手を重ねる。







────ビクッ!


 





怯んだ瞬間も逃さない。






「───…こっち向いて………?」






逃がしてなんか、やらない。






「………………」





ねぇ早く振り向いて。




そうやって俺が言った言葉に、やってる事に真っ赤になってる姿を俺に見せてよ。






「………………」





彩は観念したのか、ゆっくりと振り向く。




それでもまだ俺を見ようとはせず床を見つめてるとこは、最後の反抗って感じ?





「……あ………の………」






そんな風にしたらさ。








「───顔……上げて?」







いじめたく、なる。







やっと顔を上げ、俺を見つめてくれる彩の瞳。






「…………彩………」





その瞳が俺に向けられているって思ったら、そう。






───泣きそうになる。





だってこんな事、今までなかったから。




こんなシチュエーションも、チャンスだって。




俺には無縁だった。




だから───…




そうやって見つめてくれる事だけでも、俺にはすごい奇跡なんだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る