【仮題】退屈なセカイの楽しい終わりと始まり
@HazukiKaito
第1話 感謝
思い付いた事、一通りの事はやったと思う。
野球にサッカー、バスケなどのスポーツ、ピアノやヴァイオリンなどの音楽、剣道やその辺にある道場の武道武術、漢検に英検、美術、習字そろばんクイズサブカルアルバイトなどエトセトラエトセトラ。
どれもある程度はやった。どれもハマらなかった。後半は自棄になって目に付いたもの片っ端からやってみた。が、結局心が躍らなかった。
スポーツは熱くなれた気がした。音楽は心が揺らいだ気がした。武術は技を磨くのが楽しかった様な気がした。検定も美術も習い事もあれもこれもそれもどれも、
――心が躍った、気がした。
気がしただけだった。そのいずれも心が躍る様な気持ちになれただけ。
一応、それでもはじめのは気持ちになれたという錯覚で良かった。そんな気持ちになれているというだけでも良かった。納得させてきた。この想いを、この心を。偽りでも、ホンモノではなくとも。けど、それでも、頭の中、心の奥底で、
「それで良いのか?本当に?そのようなまやかしで良いのか?」
そう聞いてくる奴がいた。何度も何度も、何をしても、そう聞き返してくる奴がいた。
実際、時間が経つに連れてそのまやかしも薄れていき、最後には何も感じなくなった。躍ったという錯覚が消さった。どんなに頑張っても頑張らなくても、上手くても下手でも、どんな理由をつけても、最後には何も心が躍らないという事実に突き付けられる。良くないことだと教えてくる。
そんな、そんな、つまらない人生に飽き飽きしていたんだ。
あの日が来るまでは。
敵ができた。生まれ落ちた。この星にあふれるほどに、世界各地の至る所、町に、国に、地中に海に、空に。かつての星の支配者。「神」が、その眷属が。再び現れた。
それからは、何もかもが変わった。文明も人も、世界すべてが。
そこからは「楽しく」なった。「気がした」ではなく「まやかし」でもなく「偽り」の無い「ホンモノ」の気持ち。これを求めていた。嬉しかった、この気持ちを得られて。初めてだったから、こんな気持ち、この想い。
「だから、今はただ、あなたに感謝を。――生まれてくれて、ありがとう」
もう手放さない。
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