第27話男は単純

「歌ってみたってボカロとかアニソンの方が多く視聴されるのでしょうか?」

「もしかして…やる気っすか?」

「とりあえず一本だけ、出してみようかなーって」


咲茉ちゃんは目を見張っていました。

それもそのはず、私はただでさえ人前に立つのは苦手、極度な人見知り

投稿者になる場合一番いらない、克服しないといけないお荷物を背負っています

そんな私が1本上げる

他の人からしたら小さな1本かもしれませんが、私にとっては偉大な1本です


「その時は教えてね、私が1番のファンになるから」

「私の最初のファンは蒼君です」

「いや、そこは譲れないね、早い者勝ちと行こうか」

「そうですか、とりあえず次は咲茉ちゃんの番ですよ」

「はいはい」


私はマイクとタブレットを咲茉ちゃんに渡した。


◆◆◆


「バイト、どうしようかな」


外では蝉達がうるさいほど鳴いている中おれしかいない家に1つの声が広がる


記念日までにお金を集めるのは無理、澪には申し訳ないけど、記念日にお金をかけるのは無理だな

澪の誕生日である11月20日までにはある程度お金を集めてそこにお金をかけよう

……バイトだけでどのくらい稼げるんだろう?


おれはそう思い、スマホで調べてみた


『バイト 時給平均高校生』

「900から950が多い……」


かけ30で2万7000……でもこれ、東京とかの場合だろうな

鹿児島はこれよりどんぐらい低いんだろう、2万2000とかかな

これだったら、バイトしながら何かするってのが妥当かもな


何かするって言っても何ができる?

ネット通販で売りまくって、稼ぐ……ありだけど、11月までに何個売れるかわかんないしなぁ


……澪に申し訳ないけど、今からバイトして稼いだお金で祝うか……でも、もう高校生だし少しは大人が買いそうな物をプレゼントしたい、澪にはお金をたくさん使って上げたい、喜ぶ姿をみたいにからな

………

「……一旦ゲームしよう」


おれは疲れきった脳をリフレッシュさせるために2階でパソコンを立ち上げ、ゲームをした


「こいつを売るかぁ……」


おれのゲーミングパソコンは性能が良い部類に入る、だから、結構高値で売れると思う

だけど、これはお父さんに合格記念で買ってもらった物だし、売りたくなかった。

てか、これが無くなるとおれの精神安定剤が澪だけになる

それだけは避けたい、澪に迷惑をかけたくないし、澪からしても、たくさん絡まれると嫌になってくるだろう

嫌われたくないから売るのはやめよう


数時間後


「っあ、12時か」


外から12時を告げるチャイムがなった

おれは何を食うか考えていると


ピコン


「ん?」


スマホから通知がなった

チャットアプリからの通知で、誰だろうと思い見てみるとそこには久則という字が書いてあった


ちょうど良いタイミングだと思い、おれは久則を外食に誘ってみる事にした

しかし、チャットアプリを開くとそこにはおれが書こうとしていた事が書かれていた


『飯行かね?』

『あり寄りのあり』

『いつもの所行こう』

『りょ』


いつもの所とは、前澪と行った定食屋

バスケ部の溜まり場となっているそこは一年のおれらも外食行きてーってなったら絶対に候補に上がる店だ


唯一の欠点と言えば、市内という事

定期があるとは言え、電車に乗るのめんどくさい

……まぁ、それでも誘われたんだし行かないとな


おれはパソコンの電源を落とし、すぐさま部屋着から外出用の服に着替えた。


◆◆◆


『今中央駅着いた』

『何人か来るから待ってて』


「だってさ」


おれは一緒に来た康太郎にスマホを見せた


「じゃあ、あそこのベンチにでも座ってようぜ」

「そうだな」


今日おれらが行く定食屋——薩摩さつまの家、に行くのはおれと康太郎の電車組と、久則、志歩、義隆のチャリ通組で来た。

他の1年生は全員友達と遊んでいたり、おばあちゃん、おじいちゃんの家に居るとかで無理だったらしい。


蝉のクソうるせぇ合唱会を聞きながら、適当にSNSを見ていると


「やぁやぁやぁ、少年達よ」

「え、どうした?」

「あー多分あれだよ蒼、こいつ薬オーバードーズしちゃったんだよ」

「あれだけやめろって言ったのに、医者の言うことはちゃんと従えって言ったのに」

「…………」

「一旦、お前ら久則をオーバーキルするのやめようぜ」

「そうだよ、たとえ日頃から思ってたとしても言っちゃだめだよ」

「志歩、今日奢れカス」

「無理っす」


会って早々、おれ達は久則をいじり賑やかに、蝉のうるさい大合唱にも負けないぐらい賑やかに薩摩の家に向かった。


「どうせ、皆いつもの物でしょ」

「愚問だねぇ」

「一旦黙れ志歩」

「仕方ないねぇ……すいませーん」

「おい」

「え、決まったんじゃないの?」


まぁ、おれはさばの味噌煮しか頼まないから良いんだけど


志歩は申し訳無さそうに言ったので、久則は何も言えなかった


「決まったけどさ」

「じゃあいいじゃん」

「ご注文は何になさいますか?」


久則、志歩、おれ、康太郎、義隆の順で言った。


「おれらのマネージャーって2人いるじゃん」


食べている途中に義隆が聞いてきた


「どっちが好みだ」


テレビで流れる甲子園に出場する鹿児島代表の特集が店内に広がっている中、一人の男は何故か真剣な眼差しで言った。


食器に当たる箸の音

水を注ぐ音

コップを地面に置く音

会社員の愚痴


店内には色々な音が広がっている、そんな中この質問はおれ以外3人の手を止める質問になった。


もし澪がマネージャーになったら、即決だけど……これは答えれない質問だな


3人は箸を置き、熟考しているようだった















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