第15話私の夫は助けてくれる
『
敵に囲まれて孤立し
—————助けがないこと
「これでお願いします!」
澪はアクセサリーに指さした
なんか、頭にビビって来たんだろう
こういうのって直感で選んだら案外良いやつだよな
澪はおれとさっき買ったブルーのワンピースに合うアクセサリーを買いに来た
アクセサリー店で歩き回ったところ、とあるアクセサリーを見つけた瞬間急停止した
そのアクセサリーとは
——アクアマリンのイヤリング
値段は1万2000
確かに、事前に、値段は気にしなくて良いよって言ったさ
でもね、おれも一応、男子高校生
色々買いたい物があるんだ、少しぐらい躊躇して欲しかったよ
でも、男に二言は無い
「それで良いね?」
「はい、これでお願いします」
「オッケー」
1万か
ただでさえ、バイトせず、親のお金でやりくりしてたのに……まぁ、これも澪を喜ばせるためだと思えば、あまり痛く感じないけど
「電子決済でお願いします」
「わかりました……失礼します」
店員がおれのスマホ画面に表示されているバーコードを読み込んだ
それと同時に、払われた際に出る音が聞こえた
バイトしよっかな
「おつけになられますか?」
「だってさ澪?どうしたい」
「で、では、お願いします」
澪は緊張していた
わかる
絶対痛いもん、なんで女子は耳に穴を開けたり、耳たぶを挟んだりしてるのに痛く無いんだよ
いや、わかるよ、神経の密度が低いからあまり痛く感じないのはわかるけどさ……
「お客様?」
店員さんはおれを見ながら言ってきた
え、なんかおれやらかした?
「僕ですか?」
「彼氏さんが付けるんですよね?」
「え?」
「は?」
澪も店員さんがしてくれると思ったんだろう
おれも思ってた
澪は小声でずっと
「彼氏、彼氏……ふふ」
なんというか、澪からしたらおれからしてもらったら嬉しいんだろう、でもね
したく無い
したく無かったさ
けどね、澪と店員さんの視線が痛いのだよ
「何処ら辺につけるのが1番良いんですか?」
「そうですねー、彼女さんの場合だったら——」
おれは真面目に店員さんの話しを聞いた
これで澪が変に目立ったらおれのせいになるしな
「ここら辺ですかね」
「わかりました」
おれはアクアマリンのイヤリングを紙からとった
一つ、また一つ
取るたびに心拍数がクソ高まるのを感じる
「いくぞ」
「はい」
おれは澪に痛みをあまり感じさせたく無かったので
爆速で両耳に付けた
「どうですか?」
澪にも、少し感想を聞く際の緊張があるのだろう
それもそうか、直感で選んだのが似合ってないって言われたらショックだもんな
澪はお腹の辺りで、手を組んでは解いてを繰り返している
「うん、バッチリ似合ってるよ」
「彼氏さんおっしゃる通り、お似合いですよ」
「ありがとうございます」
澪は微笑みながら言った
服と、アクアマリンのイヤリングも要因の1つかもしれないが、微笑んだせいか、澪は、1枚の風景画のように美しかった
美術館に置いてあっても、何も疑われなさそうなぐらいに
「又のご利用お待ちしています」
まぁ、当分は来ないだろうな
「買ってくださりありがとうございます」
「いつもお世話になってるからね、このぐらいはおれも澪に買ってやらないと釣り合わないから……後、トイレ行ってくる」
「わかりました、あそこのベンチに座って待ってますね」
おれはできる限り急いでトイレに向かった
そして、手を洗っていると、今、1番会いたく無い奴がいた
「よぉ、蒼」
「っえ、なんでいるの?」
そこには清隆がいた
え、詰んだ?
おれと澪の関係性バレたかな
とりあえず、上手い言い訳を言わないと
「珍しく、蒼が自主練もせず、筋トレもせず帰ったから、怪しくてね、ストーキングをしたのさ」
普通に頭おかしいだろ
確かに、いつも自主練or筋トレをしている奴が何もせず帰ったら疑うけどさ、ストーカーになるのはおかしいだろ
「で、柳田さんとは、どういう関係?」
「関係?」
「そう、関係、一緒にアクセサリー店から出てきたじゃん」
危ないねぇ
そこだけだったらなんとかなるね
「あー、それは、たまたまアクセサリー店で会ったからだよ」
「本当に?」
「もちろん」
「それ以前に、そもそも、なんで蒼がアクセサリー店にいるんだ?」
「お母さんがもう少しで誕生日だからね」
「お前の両親、フィンランドじゃないの?」
「お父さんが参考程度で選んでくれって言われて、今日写真撮ってきた」
「そうなんだ」
「じゃあ、おれは先に行くよ」
「どうぞどうぞ、おれはお腹が普通に痛いのでね」
完璧なのではないだろうか
そして、トイレから出ると、澪は知らない男達に囲まれていた
おれはすぐさま、走り、澪の元に向かった
◆◆◆
蒼君、早く助けて!
私は今、知らない男子高校生達に、囲まれています
「ねぇ、おれたちと遊びに行かない?」
「いま、1人だよね」
「楽しめると思うよ」
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて
私は、男子高校生たちに囲まれたせいで、足はずっと震え、まともに喋れることさえできなくなっています
「なぁ、行こうぜ」
「その、わ、私は」
「いいからいいから」
「っ、いや、やめ」
私は知らない男に腕を捕まれ、半ば強引に立たされました
蒼君、早く来て!
私は、ただ、蒼君が来ることを祈ることしかできませんでした
そんな絶望的な状況を打破したのは、たった1つの、私の大好きな人の声でした
「おい、お前ら、俺の彼女に何してる」
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