第8話黒の女神の御加護

無事朝練に間に合い、いつも通りスリーを撃っていたんだが

澪のお陰か知らないが——


「今日、スリーの調子、めっちゃ良いんだけど」


今日はあまり時間が無かったため50本しか撃ててないが、殆ど綺麗にリングに吸い込まれた

その事をおれは、康太郎と久則に自慢げに語った

努力が叶ったっというところに注目すれば自慢ぐらいしても良いだろう


「それな、ずっと隣からスパスパ音が鳴ってたもんな」

「それを試合中にできたら神だけど」


痛い所を疲れた

結局の話、試合本番にめちゃクソ調子が良い、なんて滅多に無い

だから、シューティングをして、どんな調子でも入れる事ができる平均本数を上げるためにシューティングをするんだと思う

……まぁこれは持論なんだけど


「集合!」

「「「「はい!」」」」

「今日は元々休みだけど、明日、急遽休みになったから」


ここまで澪の御加護は効くのか

ゲームだったら環境キャラ確定だろ


急遽金曜が休みになり、キャプテン以外全員は舞い上がった、それもそのはず、うちのバスケ部は休みの日は火曜日と木曜日だけ、たまに祝日のおかげで土日のどちらかが休みになるがそれ以外では、この2日だけ


さぁどうしようか、見れなかったアニメ見るか、それとも、ゲームに当てるか


おれは、おもちゃを買ってあげると言われた子供みたいに考えた

楽しい事ばかり考えた

しかし、現実は甘く無かった、ここまでは流石に澪の御加護はは効かなかったみたいだ

「そのかわり、金曜は各自2km走り、監督に言う事」

「逆に言えば、それだけで良いんだよな」


副キャプテンの宗汰さんは期待の眼差しを向けながら聞いた


「あぁ……って事で、体が鈍らないように筋トレでもして各々過ごしてください」

「「「「はい!」」」」


そして、おれらは体育館から離れた


◆◆◆


「なぁ、蒼」

「……何」

「え、何でキレてるの?」

「今、この小説で殺人のトリックがわかる所なんだ」

「…そんな事はどうでも良い」

「おれの楽しみを奪うな」

「まぁまぁ、落ち着きなはれ」

「キモイ」

「そうかいそうかい、で、今日の放課後暇?」


今日は……多分暇


「暇だよ」

「じゃあさ、ジム行かね」

「おれん家の近くの?」

「もちろん、器具もいいし、ジムの後の温泉は無料、行かない以外選択肢は無いだろ」


それもそうだな

せっかくの2日連続オフだけど……アニメはいつでも見れるし、優先順位は筋トレの方が高いか


「何時から」

「午後7時はどうだ」

「いいよ」

「オッケー、……あ、後、数学教えて」

「それが1番聞きたかったやつじゃないのかな?」

「ありゃりゃ、バレてたか」

「まぁ良いけど」

「あさーす」


そして学校が終わり、午後6:50


もう少しで予定していた時刻になるのだが、なぜか、澪は運動着に着替えていた


「何してんの?」

「何って……私も筋トレって奴をしに行くんですよ」


おいおい、マジか……澪が筋トレだと

あの、運動嫌いな澪が……


「マジで言ってんの」

「……もしかして、私が行っては行けない理由でもあるのですか?」

「ないけどさぁ」


あんなに細い腕でベンチプレスをする姿を想像出来る人の方が少ないでしょ


「もちろん時間はずらしますし、30分ぐらいしか居ませんよ」

「まぁ、時間をずらすんだったら良いけど」

「……でも、蒼君がジムに行って筋トレ、なんて珍しいですね」

「まぁ、明日も休みになったからな」

「あー、だから川上さんがウキウキしてたんですね」


へー、久則でも嬉しいんだ

部活がオフになるのは誰でも嬉しいわな、そりゃあ


「じゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」


おれの家から、温泉付きのジムまでたったの5分

小学校まではお父さんと一緒に行ていた

普通に筋トレの器具も揃ってるし、温泉も広いから、有名になっても良いと思うけどな


「蒼さん早いね」

「案外普通だろ」

「はは、確かに…じゃあ行こか」



そして、今、おれはジムで下半身をメインに鍛えているのだが


絶対、おれのするメニューをパクってやってるよな


時間をずらして来ると言った澪も合流し、筋トレをしているのだが

さっきから、おれがした筋トレを同じ器具で同じメニューをしていた


そして毎回最初の一回はおれと同じ重量でし、上がらず、不貞腐れ、重量を下げる

その姿が何とも愛おしい


考えてみろ、自分の好きな人が、筋トレを頑張ってあげようとしたが、結局上がらず、不貞腐れる姿を——


おれは写真に収めたいと思ったが、康太郎に見られる心配があったので、その気持ちを心に止まらせ、筋トレを再開した


もう少しで20分経つんじゃないかな

そんな事を思いながら、澪を見ていると


ベンチプレスのバーが彼女の胸元に落ちて、澪が目をぎゅっと閉じて苦しげな顔をしているのが見えた。


澪があんな顔をするのを見たのは初めてで、驚きで思わず動きかける。


おれが動くのは簡単だったけど、康太郎が見ているかもしれないし、あからさまに助けに行くと俺と澪の関係性が不自然に見える。

澪の方をちらりと見やると、まるで助けを求めるかのような目でこっちを見ている気がして、申し訳ないが少し笑いそうになった。


とりあえず、助けに行くか


バレないにおれは掛け、澪を助けに行った


おれがバーを持ち上げると、澪は小さく安堵のため息をついているのが分かった。


「大丈夫? 初めてなら無理しないほうがいいよ」

「あ、ありがとうございます、あおく、柊さん」


この程度の会話だったら、単純に、澪をおれが助けに行った、ってだけに見られるだろう


そして、おれと康太郎が筋トレを終え、温泉に向かった

ジム内には、未だに、澪がいたので遠目に見守りながら


「…ほんとに、無茶するよな」


と苦笑を漏らしてしまった

















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