コミュ障、貴族社会の仲間入り

星空

第1話 記憶の目覚め

目が覚め身を起こすと、どこか懐かしさを感じるけど知らない部屋。


―――― えっ、えっ、ここどこ?


どこかの城みたいな内装の部屋。

窓の外を見ると自分の近くにはなかった美しい庭園。

さっきまでの死にかけるの瞬間を思い出す。


―――― これってあれじゃん!転生?!


とっさに近くを探って鏡を見る。


「うおぉ、めっちゃイケメン!!スタイル良っ!!」


蒼く瞳に切れ長の目は冷たい印象を与える。

透き通るような肌にサラサラの銀髪に彫刻のごとく整った顔。

全体的に涼し気な、氷像を彷彿させる十歳くらいの美少年が写っていた。


―――前世の俺とは全然違うな


顔の悩みとはおさらばだぜぇ!


ひとり盛り上がるとふと辺りを見渡す。


いつも通りに感じる洋装の部屋。


今日の夢で、前の世界のただただ生きていた記憶を思い出した。




前の人生の俺はいわゆる陰キャでなおかつコミュ障だった。


コミュ力高くないくせに微かな期待を抱いて、陽キャが多いで有名な私立文系大学に行った挙げ句、ボッチで形見狭かったキャンパスライフ。


――― 俺、生まれ変わったんだな 


そしてこっちの世界で長らく過ごした記憶もある。


「不思議なものだな」


姿も声も場所も何もかも違うことをしみじみと感じながらも

部屋に来た執事に身支度を整えてもらう。


そのまま食堂に行くと誰もいなかった。

母上は魔術士で、繁忙期であるため研究所に泊まり込み。

父は仕事が忙しいのと時間が合わない。ちなみに兄弟もいない。

なので誰かと食べる方が珍しい。


「お待たせいたしました」


料理長がメニューを説明しながら料理を並べる。


―――おおおっ!さすが貴族っ、めちゃ豪華っ!


高そうな食器皿にのせられているのは、ふわふわ焼きたてパンに、いい感じに塩見がある柔らかい生ハム、如何にも高価そうなチーズ。しかもなんか、こう、何かは分からないが、色んなものがトッピングされているのだ。


「―――今日のメニューは以上でございます。」と説明が終わり、


「ごくろう。」とだけ言う。


――――いや、生意気って思うかもしないけど貴族ではこれが普通なんだよ


心のなかで言い訳しながらも食事を終えると、執事が話しかけてきた。


「坊ちゃま、領主様が執務室にお呼びでございます。」




これは、とある逆行転生小説の世界。

ヒーローは両親に愛されていないと孤独感を覚え、周囲に心を開くことはなかった。そして婚約者の令嬢とは冷え切った関係が続き、その妹に心を奪われてしまう。

それを見た令嬢が過去に逆行転生してやり直すというあらすじの小説。


そんなドロドロ恋愛小説のヒーローに転生したことを

コミュ障主人公は知らない。


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