重度の情緒不安定
「ブヒィイイ! 桜子たんの手作り弁当、ありがたく頂戴いたしますぞ! ブヒィイイ~!」
俺はなんだかテンションが上がり、無駄にビブラートをかけて叫んだ。
桜子はゴミを見るような目で俺を見てくる。
しかし、桜子はふざけたことをぬかしやがった。
「べ、別にあんたのために作ったわけじゃないから! 勘違いしないでよね!」
この作者はこれしかレパートリーがないのか?
「ブヒィじゃないわよこの豚野郎! クソカス人間! 雷に打たれろ! そして焼き豚になれ!」
ねぇ、やっぱ違くない?
これツンデレじゃなくない?
「……でも大好き」
桜子は小さく呟いた。
なんだよこれ。
ツンデレというか重度の情緒不安定じゃないか。
心配になるわ。
今の桜子の呟きは、作者による俺の設定に則れば俺には聞こえないことになっている。
俺は難聴系主人公だからだ。
「え? なにか言った?」
「べ、別に何も言ってないわよ」
が本来の流れだ。
しかし、今や俺はその呪縛から解き放たれている。
バッチリ聞こえたぜ。
俺はリスニング結構得意なんだ。
そもそも俺の聴力検査の結果は至って正常だった。
都合のいい時だけ耳が遠くなるわけねぇだろうがァアア!
フハハハハ!
「そうか、俺のことが大好きか。俺はお前のことあんま好きじゃないけどな!」
しっかり指摘していく。
思ったことを言えるって最高。
今までは心にもないセリフを作者に強要されていたから、ほんとに解放感がすごい。
桜子は顔を真っ赤にした。
「な、なに言ってんのよ! あんたのことなんか大っ嫌いなんだから!」
「それが本心であれ」
「あんたのことなんかいつか銃でぶち抜いてやるんだから!」
これもう親の仇みたいになってるじゃん。
お願いだから作者はツンデレを勉強してきてくれ。
桜子はまた呟いた。
「……ハートをぶち抜いてやるんだから」
キモッ!
このヒロイン気色悪いんですけど!
誰か助けて!
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