第37話

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜



往焚(璃久) Side




大地とるみ、俺は街の状況を見るために外に繰り出した。



パーカーのポケットに手を突っ込んで歩く。




2人はずっと無言だ。


集められた部屋ではうるさかった大地も今は真剣な顔で歩いている。





湊さん、やっぱり悠がいなくなって落ち込んでるのかな。




なんてことをさっきから考えているが、あの女の居場所なんて知らない。

役に立たない自分は歯噛みするしかない。




秋信も、そんな湊の様子を見て何か考え込んでいた。

あとで2人で湊について話してみよう。



居場所もつかめてないから、まずはそこからか。





秋信は頭がいいから、案外すぐに見つかるかもしれない。








「おい!往焚。ぼーっとすんなよ」


「あー、悪りー」


「足手まといにならないでよ?」


「はいはい、すんませんね」





あー、こいつら両方とも高飛車でうざい。

さっきまで黙ってたくせに。





ーーーーカランカラン…




カフェの一つに入ると、見知った背中があった。


「あれ?澤部さん、なんでここに?」


「蒼もか?なんか用でもあったのか?」




大地が俺の前を立っているせいで、店内はほとんど見えなかった。


見ているだけバカバカしくなってきた。

最後尾にいた俺は、店に入らずにそっと離れた。





何かわかるものを持ち帰りたい。

あんな茶番に付き合ったせいで収穫もなく帰るのは嫌だ。




バレないよう視線を動かしながらひたすら観察を続ける。



…こんな道、あったか?

いや、なかった。



店と店の間に細い道がある。

本部に行く時に通った時点ではなかった。


つまり、この数時間で現れたわけか。

ということは罠か?



とりあえず保留にしてそのまま先に進む。


人がかなり少ないのは、核ミサイルの宣言後に国外へ避難した人が多いからか。




繁華街のはずなのに、閑散としている。

シャッターが閉まった店も多い。



一通り歩き、さっきの道も覗く。


これといって何も収穫がないまま繁華街へ戻り、再び歩き続けた。





ピタリ、と立ち止まる。






「往焚!お前、かってにどっか行くなよ!」



足音が2つ。その後ろからも2つ。

考えなくても誰が来たかはわかった。



ポケットに手を突っ込んだまま振り返ると、予想通り4人が入って俺の元に来る。


3メートルほど離れたところで立ち止まり、呼吸を整えている4人を眺めながらサッと時間を確認した。




本部から出て1時間半たっている。

そろそろ帰った方がいいか。




「悪りー悪りー。俺暇じゃなくて」


「酷い言い方ね。それじゃまるで私たちが暇みたいじゃない」


「るっ、るみちゃん!そんな言い方よくないよ」


「蒼は黙ってろ!こいつ、さっきから生意気なんだよ」




いや、特に何も生意気なことをした覚えはない。

言いがかりだ。



「澤部サンと蒼チャンは別にやることあんじゃねーの?」


「あぁ。私たちはあのカフェにいる情報屋と取引していたんだ」


「へぇー。そうなんだ」


「ゆっ、往焚君は、何か見つけたの?」


「あー、まぁ。特に何もないな」




怠い。

時計を見れば、15分たっていた。



「俺、そろそろ帰るわ」


「えっ!」


「ちょっと!さっきから自由すぎない⁉︎

何のために3人できたと思ってるのよ!」


「何のためにって…俺が聞きたいんだけど」




思わずため息が漏れた。


激怒した大地とるみがこちらに迫って来る。

むやみに動けば通行人に被害が出る。



さて、どうしようか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る