「リア充爆発しろ」とはなんぞや

 もう2月である。2月といえば、みんな大好きなのか大嫌いなのかわからないバレンタインがやってくる。ベルギーのルイ・メルテンス(Louis Mertens)首相は困っている。

「こんにちは!ベルギーのメルテンス首相です。最近、各国の首脳が戦国武将の生まれ変わりだという話を聞いたんだ。実は私もそうなんだ。小笠原長時、この名前を聞いてもピンとこない人もたくさんいると思う。簡単に言えば、武田信玄にやられたやつです。ところで、毎年2月になるとベルギーに日本人観光客が押し寄せてきて、なんて叫ぶと思う?『リア充爆発しろ』と言ってんだよ!」

 私には、なんで日本人がベルギーで「リア充爆発しろ」と叫ぶのかわからない。私とルーカスの関係、つまり男同士、それはリア充というのだろうか。


 14日が来てしまった。首相官邸の前で日本人がデモをしている。

「チョコレートを作るのなんかやめちまえ!」

「リア充反対!」

 そもそも、日本に生まれた時点でリア充だろうが。リア充って何の略か知ってるのか?「リアルが充実している」だから、アフリカの最貧国とか北朝鮮とか中東に比べればずっとリア充である。そういえば、スイスでも同じことが起こっているという噂を聞いた。スイスもベルギーも、チョコレートを作っていることが有名だ。ちなみに私は、信長だった頃とは違って独身だ。


 スイスのハンス・スチューダー(Hans Studer)大統領も、これに頭を悩ませていた。

「やあ、みんな。永世中立国として知られるスイスの大統領だよ。実は、私は小早川秀秋の生まれ変わりなんだ。絶対裏切るだろって思ったでしょ?まあそんなことはさておき、私にはある悩みがあって。それは、日本人がリア充爆発しろとか言っていること」

 あんなの、永世中立国のリーダーの前で言う言葉ではない。スイスやベルギーはチョコレートを作ってお金を稼いでいる。それすなわち、非リア充の不幸をお金にしていると思われているということだ。


 一方ベルリンでは、アーベライン首相がなにやら手紙を書いているようだ。おいお前、もう58歳だよな?いい年して誰かにラブレターを書こうだなんて、ちょっとそれは自重した方がいい。いや、彼の心は熱かった。ラブレターはドイツ語で書かれているが、読者が読めないため、日本語でここに書く。うぷ主、またメタいことやりやがったな。

「アロン・サイモン首相へ

私、エクムント・アーベラインもとい武田信玄はあのオーストリアの画家と一緒くたにされている。彼はユダヤ人から一番嫌われている人物に違いない。私もユダヤ人から嫌われてしまうのだろうか。すべてのユダヤ人が私のことを嫌いになっても、あなたは私を嫌うのだろうか。私たちは前世ではあまり関係がなかった。しかし今はお互いにイスラエルとドイツの首相である。暗い過去を乗り越えて、両国の友愛を築きたいと思う。愛しています、私の赤備えを継ぐ者よ。

エクムント・アーベライン首相」

 イスラエルとドイツがもっと愛し合うようになったら、イスラム系の国から過去の暗い歴史を指摘されるはずだ。アーベライン首相はそれによってだんだん傷ついていく。挙句の果てには自殺もありえる。っていうか、ドイツの首相で自殺したのは今までに一人しかいない、私の記憶が正しければ。そうそう、イランという国がイスラエルとドイツの愛を引き裂こうとしている。


 メルテンス首相は、日本人のうるさいデモに耐えられなくなって、こう叫び返した。

「じゃあなんだよ、ドイツの首相とイスラエルの首相はリア充っていうのか?もしそう思っているんだとしたらあんたたちはイランと同罪だ。あんたたち日本人はこういうダジャレを言ってるじゃんか、イランなんかいらん、と。そういえばフランスの大統領も非リアだからね。彼女がなんて思っているかは知らんけど」


 当の本人、フォルクレ大統領は実はこう思っていたのだ。

「上杉謙信、つまり前世の私は死ぬまで独身だった。だから生まれ変わった今でも誰とも結婚してない。あと最近変な噂が流行っている。それは、伊達政宗と上杉謙信はイスラム教であると。私がかぶっていたあの白頭巾はヒジャブではないんだよ、あれは仏教徒の服装だ。あとイスラム教では、男は妻を4人持つことが許されているらしいね。なんなら日本人、リア充爆発しろというのはイスラム教徒に言え、という話になってしまうけどね」


 伊達政宗は生まれ変わってイタリアの首相になっていた。その名を、カルメーロ・オルランド(Carmelo Orland)という。

「マジでいい加減にしてほしいんだけど。トルコとかパキスタンとかアゼルバイジャンとか、あいつら俺のパクリ。三日月はね、伊達政宗のトレードマークなんだよ。それが何だ、イスラム国の国旗に使われている。おかげで伊達政宗はムスリムとかいう変な噂出回ってんじゃねーかよ、そもそもあの兜の三日月は仏教が由来だからね?」

 うぷ主、なんか考えただろ?伊達政宗の一文字目はイタリアを意味するから、彼がイタリアの首相になっているんだろうな。戦国武将が世界中で流行っているせいで、武将達に関するいくらかのおかしな噂が流布しているのである。「伊達政宗はイスラム教徒」はまだしも「武田信玄はナ〇スの先祖」はさすがに酷すぎるだろ。しかもあいつは今ドイツの首相なんだ、こりゃ苦しいに違いない。


 私は、バレンタインデーで傷つく人はいるのだろうかということを考えていた。

「バレンタインデーというのは、女性が好きな男性にチョコレートをあげる日か。女から男、それに縛られているからマイノリティの人々が苦しむのかもしれない。日本人の『リア充爆発しろ』というのは、マイノリティの人々の心の叫びかもしれない。日本は同性婚を禁止している、それは実はこのアメリカもそうなんだ」

 自由の国なのに同性婚が禁止ってどういうことだよと、私はずっと思っていた。もしかしたら、私が命令したら日本も同性婚を全国で許可するかもしれない。同性愛者がリア充になれないのは、同性婚が禁止されているせいであり、異性愛者に嫉妬するんだろう。カタールとかいう恐ろしい国があったな、そこでは同性愛者は死刑にされるらしい。そんな国があるなんて、ゲイである私からしては許せない。よくもそんなところでワールドカップができるよな。子供の頃はそう思っていたが、カタールは崩壊した。あとサウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦(日本人もUAEと呼ぶらしい)も石油がなくなって崩壊した。いずれもマイノリティに対して凶悪な態度を取っていた国である。人々はイスラムの厳しい戒律から解放され、ほかの国々へ引っ越したり、キリスト教徒や仏教徒になったりした。アメリカ合衆国で、明日にでも同性婚を認める法律を出そうかな。


 次の日、私は人々の前で演説した。私は前世が織田信長であるということを思い出し、戦国武将は世界中の人々に知られているということを利用した。

「よく日本人は『リア充爆発しろ』と言っているようです。リア充というのは、恋人がいる人のことを指します。しかし私には、この言葉は愛し合っていても結婚できない同性愛者の心の叫びのように聞こえるのです。単刀直入に言います。私は同性婚を禁じるのは違憲であると思います。ゆえに、今日すぐにでも同性婚を認める法律を出したい。ほら、みんな大好き戦国時代には同性愛者が多かったようです。彼らを見習い、寛容な態度を取るようにします」

 民衆はざわついた。

「もしかして、大統領には男の好きな人がいるんでは?」

 私は赤くなって戸惑った。

「いや、そんなわけ...」

「顔が赤いのは図星ということですか?」

 大爆笑している人々に対して、私は頭を抱えることしかできなかった。気を取り直して私はこう言った。

「アメリカ合衆国、いや世界に自由を!」

 人々は笑うのをやめ、拍手喝采の場になった。


 日本とイタリアも、同性婚を認めないのは違憲であると最高裁判所が宣言した。これにより、両国での自殺の件数は急速に減っていった。


 オルランド首相は、ラブレターを書いたようだ。ドイツと同じかよ、ちょっとそう思ってしまった。実はその相手はイタリアの大統領である。いや恋愛を政治に使う国は見たことないかもしれない。ちなみにその大統領は片倉小十郎の生まれ変わりだそうだ。


 世界中で同性婚が認められ、苦しむ人々も減っていった。めでたしめでたし、ではない!いまだにそれを認めない国々もある。その国が意外と多いし、特にイスラムの国だ。これが、私、ガルシア大統領がイスラム教を滅ぼしたい理由の一つである。

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