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 ランはあまり別の種族と親しくしないんだけど、あのナギサって言うお兄さんに対しては好意が溢れでていた。名前が一致しているのと精霊たちに慕われていること、それからあの魔法の腕。それらから推測すると彼は間違いなく精霊王だろうね。


 あたしたちを攫った奴らは信じてなかったけど、お兄さんの言う通りあそこはたしかに海の中だった。海中にある建物なんて精霊王の宮以外にない。

 でも精霊王というのはもっと偉そうとか、脂肪を蓄えた権力者みたいな容姿とかそんなのを予想していたけど……全然違ったようだ。


 ザ・マイペースという感じで精霊らしく気まぐれなんだろうなとは思ったけど、しっかりとした芯の強さも感じた。それに容姿もこの世のものとは思えないくらいに整ってたしね。あと気安すぎやしないかい? 王と言うにはあまりにも驕ったところがなかったけれど……


 ああでも、精霊は穢れを嫌うと言うし、犯罪者なだけあって穢れていたのか人間であるあたしには分からないが、殴りかかろうとしてお兄さんと犯罪者たちの距離が縮まった時は殺気が出てたね。一瞬だけだったけどさ。その様子はさすが精霊王。迫力があったし美形な分、怒ると怖かったね。


「クレアはナギサ様と初めて会った?」

「ん? うん、そうだね。すごく綺麗な顔だった」

「うん。ナギサ様はかっこいいよね。それに強くて優しい。ナギサ様にまた会いたい?」


 どうだろうねぇ。まあ会いたいと言えば会いたいか。


「助けてもらった礼を言いたいかな。頼んでくれるのかい?」

「ん。多分良いって言ってくれると思う。許可もらったら宮に招いてくれるはず。ナギサ様の宮はナギサ様が招いた人じゃないと入れないし見つけることも出来ないから一応聞いてみる」

「ありがとう」


 精霊王はすごいんだね。招いてない人は入れないし見つけられないって言うのは、きっと一度は招かれたことがあっても例外ではないんだろうね。それは精霊も当てはまるのかな。おもしろいね、精霊王という存在は。


 ◇


「ナギサ様、朝ですよ……って起きていたのですか? 珍しいですね」

「おはよ、ルー。精霊に関することやこの国の歴史なんかを調べていたんだよ。本を読むのは知らなかったことを知れるし、知っていたことでも復習できて面白いものだよー?」

「ナギサ様はそういうところ真面目ですよね。尊敬します」

「学ぶことが好きなだけ。でも大勢で同時に学ぶのは暇で眠くなるから、一対一か自分で学ぶ方が俺は好きだけどねぇ」


 前世では小・中・高、すべて授業はまともに聞いていなかった。授業中はずーっと寝てるか読書。授業は聞いてなくても義務教育以上の知識は小学入学前から全てあったし、成績も良かったから誰も何も言われなかった。諦めていたのかもね。またか……みたいな感じだった。

 小中高一貫校だったけど入学・進級試験や小テストも含めて、初等部から満点以外を一度も取ったことがない人間に文句をつけられる人なんて普通はいないよね。

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