4 水の大精霊

「……というわけで何か知ってることはない? ───ウンディーネ」

「というわけでって、何の説明も受けてないんだけどぉ」

「でも俺達のことを見てたでしょ?」


 海の奥深く、精霊王の住処の一つである水の宮。その玉座の間に水の大精霊ウンディーネを呼んだ。さっきのことを聞きたいからね。水の大精霊なんだから水場で起こった出来事はすべて把握しているはずだよねー? そんな思いを込めて微笑むと彼女は顔を引き攣らせた。


「呪いのことを言ってるならわたしは知らないよぅ?」

「精霊族は他種族に比べたら数が少ないけど、それでも数としてはすごく多いんだよね。だから殺されちゃうとか、何かあっても俺はすぐに気付けないんだよ。精霊王である俺よりは管轄域の狭い、大精霊のウンディーネなら知ってることもあるかなって思ったんだけど……ほんとに何も知らない? ウンディーネが知らないなら水属性の子じゃないのかなぁ。あれが呪いとも限らないし……でも精霊殺しによる呪いだった場合、どの属性の子が被害に合っていたとしても犯人は絶対許さない」


 俺はすべての精霊の親的な存在だよ。その俺の親たる存在は世界。大精霊が生み出した子でも俺にとっては自分の子とそう変わらない。精霊は皆仲間。そして俺が何があっても守り抜きたい、大切で大好きな子達なんだよ。それは俺が転生者であっても関係ない。


 精霊も恋はする。この世界に存在してる生き物だからね。そこに種族は関係ない。まあ別の種族同士で恋人関係になったりってあまりないんだけどねぇ。つまり何が言いたいのかというと、どの属性の子かも、誰が生んだ精霊かも、そもそも本当に精霊殺しによる呪いなのかもまだ分かっていないけれど、もし精霊が誰かに殺されていたのだとしたら……犯人は絶対にこの世から消えていただくことになるかな、と。


「何か分かったらちゃんと教えるから。だからそんなに殺気出さないでよぉ……普段は怒りを見せないくせに、身内のこととなるとあまり隠そうとしないよねぇ」

「助かるよ、ウンディーネ。じゃあ用件はそれだけだからまたねー」

「ええぇ! ちょっと待っ、」


 玉座に座ったまま手を振って、腕置きに軽く扇を打ち付けるとウンディーネはぐうから出て行った。

 俺の意思一つで人を招いたり追い出したり出来るんだから本当に便利な仕組みだよね。セキュリティ面で見れば精霊王の宮以上は絶対にないでしょ。


 サッと自分の部屋まで転移して布団に横になる。精霊王の宮はそれぞれの場所に合わせた造りや装飾にされていて、この宮は水路がある料亭? みたいな、赤い橋などがある和風の造りになっている。床も畳になってるしね。だけどとにかく豪華。

 元は日本人だからこういうのは落ち着いて良いよー。この宮は結構好き。しばらくはここに滞在しようかな。


 そうして俺は今度こそ眠りについた。後から聞いた話だと、俺に追い出されたウンディーネは少し怒っていたらしい。水の精霊が身振り手振りで教えてくれて可愛かった。

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