第4話
線路が数多く並んでいるというのはどこか人間の本能というのを刺激してくれる。
これは本能というよりも感情の方が近いのかもしれない。誰かの元にまで近づいていきたいという生命の神秘というやつだ。
それでもまた会えるとは限らないのが夢と現実との差異という。忿怒は鉄道はそこまで好きというわけでもない。だがだとしても、どうしてもこの線路というのに心が惹きつけられる。
海を越えていかないのが一番悔しい出来事の一つではあるのだが、そんなもんは誰も知ったことではない。夢を求めていくのが人間だというのなら、感情を燃やしていかなければ一瞬にして更に強い炎によって焼き焦げてしまうことだろう。
であれば今はここに映るサンドバックをひたすらに殴り飛ばしてやればいいという話だ。願った全てが叶うとは誰も言ってはいない。流れ星に希望を託して前にへと進んでいこうとするそれは馬鹿の所業だ。
どこかにへと消えてしまった大事な人との再会を望むというのであればその手を伸ばして誰かのその拳を掴んでいけというんだ。
いくらその片方なんていうのがない倉庫にいてもそれは思ってしまう。線路の片側がないというのであればそれはつまり進むべき先は一つしかないということ。
限界を超えて突き進むというのは不可能に近い。というか基本的にそれは何もかもを求めるのと変わらない。限界というのはどこまでも限界でしかない。
そんなもんは純粋な馬鹿による計算によって導き出された結果である。
忿怒の周囲にへと揃っている怪物は何とか撃破することには成功した。流石にもう動いてくることはないとは思うのだが、だとしてもかなりの体力を消耗したことを自覚する。
「ゼェゼェゼェ、散々手こずらせてきて。それでも勝利をもぎ取ったのであれば御の字というところか」
忿怒は息を切らしながらもなんとか命からがらといった様子で怪物どもの討伐に成功する。とにもかくにも相手がやたら強かったのは実感としてある。
それに………………………………面倒を背負ってしまったのも事実である。苦労してもこの面倒は背負う価値があったというモノ。それですら出来なくなってしまえばせっかく再開したというのにあいつらの顔を真っ直ぐに観ることが出来やしない。
「おう、無事か。無事であれば返事も出てくるというのか、それとも無事なのを実感として得たらもう感激で言葉も出ないというのか」
そして忿怒が後ろを振り返ってみればそこにいたのはすやすやと寝息を聴かせながらを寝入ってしまった未だ小さな少年であった。名前も聞いてはいないがそんな余裕などもなかったこと。
まぁこんな顔を見てしまえばこの子がどんな理由でここにいるのかというのは後回しになるというモノだ。隅で泣いている子を放ってはいられないというこの性分というのをやめられないのはどうにも嫌になる。
だが起きてくれないというのも困ったものだ。このような場合にはどうするべきかと思えば………………容易く進むべき行動を選んで実行することは可能だ。
どうにか拾い上げていけばそこからこの車両倉庫から離れていくことを選んだ。そうでもなければ流石に危険であるというのは理解している。
既に体力などは傷だらけの消耗をしてしまっている。それにあの撃破した怪物というのは何度か咆哮を鳴らしていたのが気になってしまうからして。
それにこの周辺であれば顔見知りの隠れ家もあることだしそちらに失礼させてもらう方が忿怒にとっての心の安心というのだ。あぁ心のだ。
あの秘密基地にはとても戻れはしない。今の自分を皆に見られるのはとても勘弁して欲しい。これ程に手を血にてドロドロに溶かして破砕してくれば気分も悪くなる。
「だぁ、この世界はいったいどうなってしまったのか。ゾンビ映画とかでもないだろうにどうしてッ」
そこで必死に泣き言を叫んでいる人物が目に入ってくる。それがどこなのかといえばかなりの大きさを有している建物だ。というかそれはショッピングモールではないかよ。
(ゾンビって速すぎではないか?いくら何でも俊敏が過ぎる。ゾンビというのは速度が出ない分だけ物量でというのがお約束ではないか)
さっきから街中をひたすらに逃げ回っていたのだがそれでもこちらを追いかけてくる存在というのがいることが視界から離れてくれない。尋常ではない速度で駆けているのだが、それが恐ろしいくらいにタンパク質を腐らせたような容姿をしている。
そしてその肉塊というのは多少離れているというのに死臭が漂ってくるのがどこまでも気持ち悪い。相手にするのを避けたくて逃げ惑っているだけであったのだが制圧する術が強力なのがいやらしい。どうやらショッピングモールにへと迫っている勢力というのはこちらを追いかけていている個体とは直接の連携を取っているわけではないらしいのが更に忿怒の胸をざわざわさせてくる。
(人情などを言い出したら建物に籠っている者達にへと加勢するのも特に間違っているわけではないのだろうが、だとしてもそれはつまりあの高速で動いている個体までをも一緒に連れてくることになる。そんなことは認められない)
「であればここで迎撃するのが得策か」
忿怒はここで立ち止まる選択を取る。振り返っていき後方にてこちらを狙っているゾンビかというその存在をしっかりと見据えることをする。そこはあるのはやはり変わらずにこちらにまで近づいてくるゾンビ………………姿のこういう怪物なのだろうてな。
恐らくは何かしらの系統だった進化を遂げた種族の一個体に過ぎないのであろう。
それにあちらさんだって戸惑っている様子だ。今まで逃げの一択だったというのにどうして急に止まってしまったのか。これは面倒だとも思う。何せただ俊敏であるだけであるだけあるのならよっぽどでない限りは敗北するつもりはない。
ただ、できるだけの消耗を避けたかったというのが本心だ。先ほどもかなりの熱戦を演じてきたばかりであればそれも致し方なし。その際にかなり苦労したのが相手が仮にも格上であったということ。かなりの時間をかけることになってしまったが業としては未熟というほどであったために何とか生き残ることに成功したというだけ。
だからこそ、こちらを警戒してくる誰かというのを相手にするのが面倒になる。
戦闘狂であるつもりもない。つもりがないだけで他者からの評価というのは違うのかもだが。
建造物の立ち並ぶ中でその上に立っている自分たちであるのだがそれはそれとしては足手まといがいることを思いだした。そして都合よく傍に足元にへといるではないか。向かっていた隠れ家の主ではないが忿怒にとっての顔見知りであるためにそこまでの問題ではない。顎で遣ってもそこまで心が痛まないのが助かるところ。
背負っていた子供をそちらにへと滑り落としていくことをする。そうすれば確かに受け取ってくれるのが非常に嬉しい限り。そちらに向けてサムズアップを向けていくのだが。これには受け取った方だって戸惑っている様子である。どうしようもなく今の状況を呑み込めていないらしい。
「ちょっと⁉何よこの子は誰の子なのよ」
「知らん。そこらに落ちてたのをさっきばかし拾ってきただけ。それ以前のことなど識ヨシなどあるはずもないだろうに」
突き放したように告げたのだがそれには信じられないとばかりに唖然とした表情で突っ立っていた女性の姿があるだけ。まぁ当然ながらこんなことをしてしまえば目立つのは間違いない。
(それくらいで慌ててしまうほどには弱くない。それをオイラはよく知っている事だろう)
そして彼女の周辺にへと襲い掛かってくる存在というのも目に入ってしまう。だが構っている余裕などない。目の前にいるのが相応の強者であるから。
「
「なんだこいつは。追いかけてきた理由でも詰めて掛かろうかとも思ったがそんな能力すらも奪われているのか」
ゾンビであれば自我を失ってしまうのもおかしくはない。精々が生前立派な人格者であるのを望むばかりである。だがこれほど俊敏であるのならなぁ。訓練を経て手に入れた力と見て取れるのが
レベルが違うというのがあれば相手をする方であっても苦労するというモノ。苦労ではなくて成す術もなく消滅するのが想像できてしまう。が、その内容までは思い至らないのが忿怒としては難しいところ。出来るモノか。
「これ程に強いのに相手をする方は大変ですね。こちらは生き延びる方法には長けていますから安心しておいてくださいね」
足元の方からはしっかりと少年を担いでいた女性の姿が既になくなっていたことに安心を憶える。彼女であればここら周辺にいるゾンビの集団から逃げ切るだけであえれば荷物の一つぐらいが増えたところで大した差ではない。
そしてシノビ刀を持ち出して俊敏なゾンビにはもう目を丸くするしかない。
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