第22話

床には熱い濁水が滴り落ち、男のブーツを濡らしていく。



欲望だけの女に徐々に侵食されていくように。



唇からはお互いの唾液と媚薬が行き来し、口から全身を流れ青年の熱い部分へと到達する。



青年が唇を離すと、彼女のいく瞬間を見計らって女の首筋に思い切り牙を立てた。



音を立て血を吸い上げると胸の青筋がずるずるとうごめき始める。



肌に開けられた小さな快感が、雛罌粟ひなげしを咲かせるように女の身体を赤へと染め上げた。



青年はこの機を逃すまいと女がいっては責め、いっては責めを繰り返し、いき狂う最中さなかでも責め続けた。



「いってる、今いってるのにぃッ!!!!」


「もっともっと僕だけを求めて、僕だけを愛してっ!!もっともっともっと!!!!」



指で壁を擦り、舌で突起を転がし、スライムに芽を吸い付かせ、


そして哀しくも怒張する彼のもので女を突き上げる。




『媚薬で私の美しい器を手に入れても、中身までは手に入らないかもね』



どこからか聞こえてきそうな彼女の声。



そのとぐろを巻く畏れを掻き消すよう、全身に幾つもの赤い紋を刻みながら青年は女を責め立てた────。








彼女から受けた媚薬が


青年の彼女へ向けた憧憬と恋心と嫉妬と畏れが相まって一つの毒となった。






その媚薬は甘い毒か、それとも猛毒か。









~case2. fin~

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