第90話

それから蘭と斗和とハン君がボードゲームで遊んでくれて、ハン君がバイトに行く時間になった。


蘭に頭をくしゃくしゃと撫でられ、敵なのに「また来てね」と軽く言ってくれた。


そんな様子に斗和も優しく微笑み、幼虫のぬいぐるみを持たせてくれた。


蘭と斗和は隣の701号室に住んでるらしい。


この702号室は凌久の家。


3人はネットビジネスと株で生計を立てているとか。



何だかんだこの場所が居心地がいいと感じてしまったのはやっぱり私が小さな子供だからかもしれない。



玄関でバイバイする頃には私も皆に満面の笑顔を見せていた。





ハン君に手を引かれ、洸太郎と凌久と4人でエレベーターに乗ると凌久が呟いた。



「せめえ場所はやっぱ血の匂いが濃いな。」



私の"狂喜の血"の匂いのことを言っているのだろう。


ヴァンパイアであり敵である凌久には吸われる可能性もあるのに、私は気付くと凌久を見上げこう言っていた。



「凌久、だっこ。」


「・・・・・・」



ちょっと目を丸くした凌久が直ぐにフッと笑うと私を抱き上げてくれた。


でもハン君はいい顔をしていない。



洸太郎が腕を組み皮肉を込めたようにせせら笑う。

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