第86話

興味無さげな洸太郎がふいに立ち上がり、ベランダへ出ると煙草をふかし始めた。


宗平は煙草が嫌いだと思っていたが洸太郎は好きなのだろうか。


というかさっき洸太郎は宗平に恨みがあると言っていたが2人は仲が悪いのだろうか?



私がベランダへ目をやっているのがバレたのか、凌久が私をぐりんっと半回転させ向かい合わせになるよう凌久の方を向けられた。


無理に向けられたにも関わらず、全く嫌な気はしない。


凌久は不思議だ。



「ベランダ見たいのか?」


「え?」



凌久が私を抱き締めながら立ち上がると、ベランダの窓の方へと歩いて行った。



でもベランダにある何か・・に気付いた凌久がベランダの窓を開けるのを躊躇ためらった。



「・・・・・」



安定した腕に抱かれる私を凌久がじっと見つめる。


凌久が私の小さな腕を掴み、むにむにと掌で押し始めた。



「煙草は・・・・怖いか?」


「・・・・・」



そっと優しく話し掛ける声が凌久の吐息と共に私の鼓膜から侵入し、


その見つめる金色の瞳には、小さな小さな私の姿が映っている。



きっと洸太郎の煙草に躊躇ためらいを見せたのだろう。


今の凌久の言葉で分かった。



でも今の質問は、

「小さな子供にとって煙草は悪いものだから」という意味で聞いたのだろうか、


それとも・・・・・

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