天の待ち合わせの相手は慧という名前の天と同い年の十五歳の少女だった。

 それだけではなくて、天と同じお嬢様学校に通っている名家のお嬢様だった。だけど、慧にはちょっとだけ問題があった。(この場合、問題と言っていいのか、よくわからないけど)

 慧はお嬢様学校では珍しく、自由で気ままな(性格を隠したりしない)少女だった。規則の厳しいお嬢様学校の中で問題ばかりを起こす問題児として有名だった。(久しぶりにこんな問題ばかりを起こす子を見た、といって先生たちはみんな頭を抱えていた)

 でも、慧は問題と言っても悪いことをするわけじゃなくて、あくまでお嬢様学校のがちがちの規則に対して不満をいい、その規則にしたがわないことがあるだけだった。(もちろんよくないことではあるけど、そんな先生にきちんとここがおかしい、とか時代にあってない、とかちゃんと不満を言う慧のことに密かに憧れている生徒たちもいっぱいいた)

 今日もこの場所で待ち合わせをしようと言ってきたのは慧だった。(理由は待ち合わせ場所として有名なところで一度、自分も待ち合わせをしてみたいからだった)だから天は苦手な人のたくさんいるところで、じっと遅刻してきた慧のことを(いらいらしながら)待っていたのだった。

 天がお嬢様学校の制服を着ているように、慧も同じお嬢様学校の制服を着ていた。(慧も目立つと思ったのか、たまたまなのかわからないけど、慧は制服の上に白いふかふかのコートを着ている。かわいいコートだと天は思った)

 慧も天に負けないくらいに美しい少女だった。

 美しい二人のいる姿は、街の中で(そこだけ周囲とは雰囲気が違っているみたいだった)とても目立っていた。(天はそのことを気にしていたけど、慧はそんなこと全然気にしていないみたいだった)

 天はお嬢様学校の中でも有名な慧のことは(名前と顔だけは)知っていたのだけど、慧は天のことを知らなかった。そんな天と慧が友達に(そうだよね?)なったのは、ある偶然のできごとがきっかけだった。

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