第22話「歓迎会」

食堂




ガチャ




「お、もう結構、集まってるな。」




と、建物の中に入った熊人族の新鎧大善が言うように、食堂の中には先程、大演習場で別れた3期生達や、未良と刀花、千躰、優愛、それとまだ初めましての魔現師達が集まっていた。




「ここは、基本的に朝昼晩と、料理人さんが作ってくれた料理を食べるところなんだけど、こうやって今日みたいにイベント事を開かれることも多いかな。」




勇輝の背中を押し、食堂の中に入らせながら、森人族の菊池友樹は話す。




「ここで料理を食べる場合って、お金はいらないんですか?」



「うん。バーニアタム所属の魔現師は全員、無料で食べ放題だよ。」



「すご…」



「だろ?笑。しかもめちゃくちゃ美味いんだ。」



「うわぁ〜食べるのが楽しみになってきました!」



「笑、歓迎会が始まったら、料理が出てくるだろうから、もうちょっと待っててね。」



「はい!」




食堂の入口側から近い、右端の円形机の席に座りながら、勇輝は返事をし、新鎧と菊池は話を続ける。




「あと、この食堂で教えとくことは……あ、喧嘩だけはご法度だから、ここは。喧嘩をするなら、近くの演習場で……って、そう喧嘩するタイプじゃねぇか、勇輝は笑」



「喧嘩……よく起こるものなんですか?」



「いや、滅多に起こりはしねぇよ。ただほら、酒に酔った勢いでってのはあるから、お前がそうならないように気をつけるのはもちろんのこと、他のやつのその喧嘩に巻き込まれないように、注意しろってことだ。まだお前は、未良の訓練も始まってないんだから、仲裁にも入れねぇだろうし。」



「分かりました。気をつけます!」



「笑、特に酔っ払った時に面倒臭い、あと、面倒臭そうなのは……ほら、あそこにいる2人。」




そう言って、菊池は、勇輝達から見て、中央にある1番大きな机を挟んで、さらに奥にある机で、周りの魔現師と話している身長低めの金髪の男と、入口の扉を挟んだ向こう側にある机で、妹と何やら言い合いをしている虎人族の男を見る。




「岩本天弥君ですか?」



「うん笑。まだ一緒に飲んだことはないけど、何となく人に強めに絡みに行くタイプじゃないかな、って思うんだよね。まぁ、あれで泣き上戸だったら面白いけど。」



「シラフの時でさえ、アイツは人に喧嘩をふっかけるからな。年頃ってやつだろ。笑、まさかの勇輝も既にふっかけられたか?」



「いや、喧嘩をふっかけられたというか……子供だな、とは言われました。」



「子供……あぁ、確かに見た目的には勇輝君、人族の10歳ぐらいにしか見えないもんね。内魔素の封印のせいで。」



「それで、アイツはお前のことを子供だと笑。多分、実年齢的にはほとんど変わんないだろうに。」




そんな感じで、天弥のことを話しながら、チラチラと本人がいる方を見ていると、その視線に天弥が気づく。




「おうおう、なんだなんだ。人のことをジロジロと見て。」




そう声を上げながら、天弥が勇輝達のいるテーブルにやってくる。




「おっす、天弥。模擬戦おつかれ。」



「ふんっ、別に疲れてねぇし。で、それよりもなんだよ!ずっと俺のことをチラチラと見やがって。確か、阿閉勇輝だったか?なんだ、文句があるなら面と向かって言い…」




勇輝や他の面々が入る隙間もなく、天弥が喋っていると、食堂内に1本の青い稲妻が走る。



そして…




バチンッ!!




「いてっ!!!」




その稲妻の先…天弥の真横に現れた、金髪の男は、天弥の頭をぶっ叩いた後、頭を勢いよく下げながら、こう言った。




「すんません!大善さんに友樹さん!!!」



「お、おう。」



「クソっ、何しやが…」



「黙れこの野郎!先輩方に生意気な口を聞きやがって!」




バチンッ!!




「いっ!!……」




再び、天弥の頭に平手をかます。




「ったく、新人が。先輩への礼儀から教えないとだな。」



「まぁまぁ、吾門。落ち着けって。」



「でも、コイツがお2人に失礼な態度をとったのを見ていられなくて。すみません。ほら、お前も改めて謝れ。」



「チッ、なんで俺が…」



「あ?次はもっと強くいくぞ。」




恐ろしい表情で、天弥の顔を見上げる金髪の男。




「っ……すみませんでした。」



「頭を下げろ。」



「……すみませんでした。」




天弥は渋々といった感じではあるが、金髪の男の横で、新鎧と菊池に頭を下げた。




「おう。俺達は構わねぇが、そういう先輩後輩関係をかなり気にする人もいるから、そこの吾門みたいにな。これから、お前も依頼で色んな人と接していくことになるし、改善していけ。」



「大善の言う通り。天弥君もこれから学んでいこう。」



「……はい。」



「よし。来い、天弥。早速俺が礼儀を…」



「あ、それはストップね。今から歓迎会だし、礼儀を教えるのは、歓迎会以降でよろしく。」



「分かりました、すみません!友樹さん!」



「それに、勇輝君ともちゃんと挨拶しないとだし。」



「勇輝?……お前か。」




金髪の男は、菊池と大善の間に座っている勇輝の方を見る。




「今日から、バーニアタムの魔現師研修生になりました、阿閉勇輝です。これからよろしくお願いします!」



「おう。さっき、未良さん達が話してたヤツだな。俺は、バーニアタムの2期、"速瀬吾門はやせ あもん"だ。よろしく!」




ニカッ、という感じで笑った速瀬は、勇輝の方に手を伸ばし、勇輝もその手を握る。




「笑、コイツは酔っ払うとさらにキレやすくなるから、気をつけろよ、勇輝。あと天弥も。」



「ちょっと、大善さん笑」



「……」



「天弥君と勇輝君は、既に挨拶を交わしてるんだよね?」



「いえ、ちゃんとした挨拶は……岩本天弥君ですよね。改めて、阿閉勇輝です。これから、よろしくお願いします。」




そう言って、勇輝は、速瀬に叩かれた頭をさすっている天弥に手を伸ばす。




「…あぁ。」




ギュッ




「ってかよ笑、ここで誤解は解いとくべきじゃねぇのか?」



「誤解……笑、確かに。勇輝君、天弥君に年齢を教えてあげて。」



「年齢だ?小人族じゃねぇなら、10歳いかないぐらいの子供じゃねぇの?お前。」



「いや……15です。」



「えっ?!!」



「マジか笑」




勇輝が年齢を言うと、天弥と速瀬は驚くと共に、もう一度、勇輝の全身を見て、首を傾げる。




「ほんとか?」



「はい、一応…」



「……タメかよ。」



「お、良かったじゃねぇか。この魔現師界隈での同い歳は中々見つけることができないからな。しかも同じクランで、同期……いや、天弥が3期で勇輝は研修生だから、正確には同期じゃねぇが、ほぼ同期だなんて。運命的だろ笑」



「確かにね笑」



「うんうん。特に、俺や菊池さんみたいな長命種は、自分の歳を覚えているやつも少ないからな。そういう、同い歳っていうコミュニティが作れる、お前らが羨ましいぜ!」



「……よろしく。」




先輩達の言葉を聞き、心に変化が起こったのか、天弥は顔を背けながらボソッとそう言う。




「よろしくお願いします!」



「…ってか、その言葉遣いやめろよ。タメなんだから。」



「えっ……と、じゃあ……よろしく、天弥君。」



「呼び捨てにしろ、勇輝。」



「笑、分かった、天弥。」



「おう…」




そんな2人のやり取りを見ていた人達は…




「若いって良いな笑」



「いや、大善は僕と吾門に比べたら若いよ。ね?」



「はい!」



「…長命種と比べんなし。」






「はぁ……ほんと兄貴はバカ。もう、兄貴があんなんだと、妹の輝愛が恥ずかしいんだから。」



「まぁまぁ、そんなこと言わないの。」



「来栖の言う通りだぞ、輝愛。家族は大事に……」



「大事にしないとだよ!」




言葉を途中で止めた騎道の背中を、軽く叩きながら、莉理香はそう笑顔で言う。




「……は〜い。」






「ニコニコ笑」



「笑、随分と未良は嬉しそうだね。」



「だって、勇輝に友達ができたみたいだからさ。逆に、刀花は嬉しくないの?」



「そりゃ…嬉しいよ笑」



「でしょ?笑」




という未良と刀花の会話を聞いた優愛と千躰は、笑う。




「笑、なんか2人は、勇輝君の親みたいだね。」



「それな笑。まるで、自分の子供の成長を見ているみたいじゃん。」



「…実際、親とは違うけど、ここでの保護者として、私は勇輝を見守り、育てたいって思ってるよ。」




未良は決意の眼差しで、2人を見る。




「ふ〜ん笑……ま、良いんじゃん。未良がそうやって覚悟を決めてるんなら。勇輝の育成と共に、ちゃんと依頼はこなすだろうし。」



「それはもちろんだよ。勇輝を立派な魔現師に育てるのに、その私自身が魔現師としての背中を見せられないんじゃ、元も子もないからね。」



「じゃあ、未良はこれまで以上に依頼をこなさないとだ笑」



「うん。ってことで、刀花。よろしく。」



「はいはい笑」



「でも、未良と刀花が依頼で外に出ている時は、誰が勇輝の面倒を見るの?」



「ここに残ってる誰かに任せる。」



「誰かって例えば?」



「それこそ、今、勇輝と一緒にいる男メンバー達や、あとは……亜麗?笑」



「え、亜麗?マジで言ってんの?」



「大マジ。多分、勇輝が目指す魔現師の戦い方は、亜麗と似たようなものになると思うから。」



「……なるほど、確かにそうだ。」



「やっぱ、刀花もそう思うでしょ?」



「うん。改めて考えたらね。」



「だから、勇輝が亜麗のお眼鏡に適うか次第だけど、私は勇輝の育成を、亜麗にも手伝って欲しいの。もちろん、場合によっては、連火や優愛にも。」



「笑、しょうがないな〜」



「手が空いてたらね笑」



「よろしく!笑」




と、それぞれで話していると、キャプテンである紫明と槻谷が会場に来ると共に、他の魔現師達も来て、歓迎会が始まり、美味しい料理を食べつつ、3期生と勇輝は先輩の魔現師達と交流を深めるのであった。





to be continued

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