第46話 スラヤミィの秘密
ここは宵闇の城、儀式の間。
僕は先程までスラヤミィで、オイラは先程までは少年セディだったっス。
あれ?
何が何だか分からなくなってきた……っス?
「Nyx'Kel-Rth@F91-Qz3L^Thar! Ryz@Th'Lom9-X4KvQo%L^Nak……」
魔王はこちらに背を向けるようにして祭壇に向かい、呪文のようなものを唱えている。
祭壇に置かれたインフィコアから膨大な量の何かが魔王に流れ込み、おそらく宵闇の力となってそれが放出されていた。
少し離れた場所には、このような状況にも関わらずのんきに寝ている黒猫が一匹。
ああ、確かスラヤミィが言ってたっけ、儀式が始まったら魔王に眠らされたって。
でも、スラヤミィって僕じゃなかったっスか?
いや、オイラはセディだったはずだよ。
……もしかして、セディとスラヤミィが混ざり合ってるのだろうか……っス?
(……)
……落ち着こう。
僕は竜宮城で水神様、水面の君が加工したインフィコアで過去を眺めるような旅をしていたはずだ。
だから、僕はセディのはず。
だけど、僕とスラヤミィが混じった原因として考えられるとしたら……。
まず、セディがダイアがぶっ叩いたスライムの破片を浴びたこと。
そして、スライムが落としたらしき黒い石を拾ったら、セディの存在が取り込まれたこと。
最後に魔王がそれを持って帰り、そこから使い魔スラヤミィが生まれた。
もしかして、その際にセディとスライムが混ざってスラヤミィ化したとか、まさかね……。
〈まあ、正解に近いと思って良い〉
今の声、魔王?
背を見せている魔王に変化はない……いや、魔王と僕の間に何かの存在がある!
突然の圧が来た。
目の前に濃密な何か、はっきりとは分からない何か、それはニタリと笑った気がする。
次の瞬間、圧は消えた。
(何だったんだ、今の……)
周囲を見渡すが、先程の濃密な何かは既にない。
祭壇の前に魔王が倒れ伏していて、どうやら儀式は終わったようだった。
(あの後、スラヤミィが先に目覚めていて、僕が起きるのを待っていた)
黒猫はまだ眠りこけていた。
(正解に近いと思って良い、さっきの声は言っていた)
あれは何だったのだろうか。
単純に考えると、記憶を失う前の魔王そのものだと思うのだけど……。
記憶を失う前の魔王、それは黒の魔王の封印されていた石を拾った少年●●●のこと。
記憶を失った魔王、それはスライムの残した黒い石を拾ったセディ少年のこと。
両者は別の存在だったということだ。
つまりは、今の儀式によって、魔王●●●が抜け出して、セディの存在が残された。
いや、スラヤミィの中に眠っていた僕自身が、儀式で分離され魔王の身体に移されたということだろうか……。
〈今度は、ほぼ正解だ〉
また声が聞こえた。
(えっと、さっきので消えたと思っていました)
〈消えたさ、あの場からはな〉
見回すと儀式の間ではなかった。
(あ、魔王の私室だ)
〈ここは疑似的に作り出した空間だ。本来の余はもっと別の場所にいる〉
(確かにここには僕だけで誰もいませんね。では別の場所ってどこですか?)
〈今のお前に説明しても理解できるとは思えん。それに余のいる場所にお前が来てもその存在が耐えられまい。それよりも、お前とスラヤミィのことだ〉
(僕とスラヤミィのこと……)
僕とスライムの存在が混ざり合ったというのが正解に近くて、儀式でスラヤミィから分離して魔王の身体に移ったのがほぼ正解という……。
(つまりは、どういうことなんですか?)
〈スライムには核と言うものが存在しているのは知っているな?〉
(人で言う心臓みたいなものですよね)
〈その認識で良かろう。あのスライムは実験体でな。疑似的に宵闇の石を核としてみたが、あの様だ〉
ああ、ダイアが叩き潰したアレね……。
で、あの落とした黒い石が宵闇の石だということか。
〈元は黒の魔王が封印されていた石に、余が宵闇で染め上げて強大な力を持たせた石だった〉
(そんな強大なスライムが、女の子の木の枝攻撃で簡単にやられたんですか?)
〈染まらなかったのだ。核として生命維持の役割は果たしたようだが、宵闇の力を発動することはなかった〉
(そういえば、スラヤミィがニュートラルとか言ってましたけど、それと関係が?)
〈特殊な事情があってな。普通のスライムなら宵闇に染まって強大な宵闇のスライムになったはずなのだ〉
だがな、と付け加えて魔王は言葉を続ける。
〈不幸中の幸いか、お前が石を拾った〉
(それで、僕は石に取り込まれたみたいですけど、どういうことですか?)
〈取り込まれた、すなわち宵闇に完全に染まったのだ。本来なら二度ともとの人間には戻れない。宵闇の化者とはわけが違う〉
(ならどうして……あ、スライムの破片を浴びたから?)
〈そういうことだ。スライムがお前を守ったのだな〉
(しかも核はあの石だから死んではいなかったと……)
〈その通り、お前という核を内包してスラヤミィが誕生したのだ〉
なかなかに衝撃的な事実だ。
だが、魔王は更に僕を驚かせるようなことを言った。
〈先程、あのスライムには特殊な事情があると余は言ったな。お前はスラヤミィがニュートラルと言った。その理由はな、あのスライムの最初の核がインフィコアだったのだ〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます