眷属 弐
案内された場所は祠の場所より少し離れた森の中だった。
あともう少し、と何度も言われようやくたどり着いたその先には新しく土が盛り返された掘り返された跡があった。
「ここです。この中です」
霊媒師はその跡を指して言った。
その言葉を聞き、すぐに四つん這いになって素手で土を何度も掘り返す。
それを見かねた梅貝さんも、慌てて手伝ってくれた。
数十分ぐらいで漸く、僕たちの手が止まった。人らしき物が見えてきたから。
顔と思しき場所の土を振り払うと、それは___
「睦美!!!!」
安らかな顔して眠っている睦美であった。
睦美の遺体を穴から出した。薄い黄色のワンピース。僕が誕生日にあげた服だった。しかしすっかり汚れてしまい、元の色とはかけ離れていた。
「・・・信じられないねぇ、あんた」
「疑わることには慣れております」
霊媒師さんは睦美の体に近づき、手を合わせてお祈りをした。
「睦美は、やはり殺されてしまったのでしょうか?」
「はい。それはとても恐ろしい何かによって・・・。今も睦美様の魂は、それによって少しずつ食べられています」
「霊媒師さん・・・睦美はまだ僕のそばにいるんですよね?」
「・・・はい」
僕は冷たくなった睦美の体を抱きしめながら、囁いた。
「睦美・・・見つけるのが遅くなってごめん。僕は睦美の事、今でも大好きだ。オカルトの話で盛り上がっている睦美の笑顔、僕は好きだ」
睦美の笑顔を思い出す。大学の入学式に出会って、友達ができなかった僕に睦美が話しかけてくれたんだ。それで、いつの間にかお互い好きになっていって、恋人になった。
「今まで信じていなかった幽霊の話も、今は強く信じているよ」
よく怪談話をしてくれた睦美。全く信じていない僕に、不貞腐れていたよね。そういう反応が可愛くて、ついつい意地悪することもあった。
「睦美、今までありがとう・・・」
一層強く睦美の体を抱きしめた。奇跡が起きて睦美が生き返るんじゃないかって、願いながら・・・。
コリ・・・と何かが耳元で音がした。
まさか!!と思い僕は睦美の顔を覗いた____
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?????」
さっきまであった睦美の顔の一部が、砕けていた・・・
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