僕は名無しのフリー。名の無い少年だ。

花華

僕はフリー。名無しの男だ。 一章

プロローグ


夕焼けが舞い降りる。戦後の僕を安らげてくれているようだ。

実は前に、ある強者と戦い、勝った事がある。その後から世界中からアレ…… 魔物は居なくなった。その男、強者が仕込んでいた世界的事件だったのだが、無事に解決をしたのだ。そして世界は元通りに普通に動いている。

それなので、僕と知り合い達は元通りにしている。静かだな……。

こうして、山の天辺の絶景から降りて自然を堪能するのを終える事にした。


一章


山の登頂から降りてきた彼、名無しのフリーは家に帰宅をし、兄貴分であり、良き年上の友人だと認識をしているタクトと連絡を繋げた。


フリー「先生。タクト。僕だ。今、帰宅をしたんだ。」

タクト「おおフリーか。どうだった?山の天辺の景色は。感性が癒されたか?」

フリー「ああ。最高だった。まあ、足は痛いが」

タクト「なるほど。それで俺に通話を掛けてきたのか。ようし。良いぞ。今からそちらに医療具送る。それを患部に塗っておけ。自然に良くなる。」

フリー「ああ。サンキュ。」


通話を切って僕は腹を括る事にした。冷蔵庫の中に食料があった。腹に入れながらテレビを見ていて暫くすると、T(タクト)から医療具が届いた。それを患部に付けて平穏にする。

腹が満ちたら眠気が襲い、ベッドへ入って就寝に入る。

すると頭ら辺に何かが当たった。見るとチップだ。腕の機器に入れて再生する。僕の見知らない物だ。何でだ?

まあ今は深く考えるより眠気の方が優っていたのでそのまま寝る事にした。


朝起きて、チップを機器に入れて再生する。

するとメイドのメラという、かつて僕が所属していた施設の今はある原因で亡人の女性が現れた。


メラ「フリー君。このビデオを見ているかしら?実は私はこの施設はおかしいと知っているの。それなので、このビデオで内緒に教えたいのだけど、施設は実は全然世界を救う為の組織なんかじゃないの!ここは……」


メラが施設の要因を語った後に横から何者かが彼女を全身で襲い掴み動けなくした


メラ「助けて!」


メラはそのまま何処かへと連れて行かれてしまった

その者がカメラへ視線を向けた

手動で切る。そして映像は終わった


何故、このようなチップが送られてきたのだろうか?


時期もこれは今では無い筈だ

メラはこの後に殺されたのだろうか

このチップは何故かここにあった

誰かに侵入された?

セキュリティは問題無い筈だ


……………

……


まさか


僕はある考えに行き着いた。このような大層な事が出来る人間。しかも僕に対してだ。その時、僕は「そんな筈は無い」と思ったが一線に入れた。仕事を終えた後に散歩に行く事にした。


歩きで外の空気を堪能する。青空なのだが、綺麗だとは思えなかった

自然を観察しに行きたい。行きつけの自然観光スポットに行く事にした。

いつもなら風を切って向かったが今はのんびりと歩きたい。そのようにして向かっていたら到着するまで2時間程掛かった。

やはり木々の自然が安らげてくれる。

木々の中の道を歩いて行くと自然の中に住まう生き物達が仲を囲いあっていて平和な風景だ。その風景に心洗わせながら散策をしていると、少し先に人だかりが見えた。

何かあったのだろうか?

少し気になるも特に考えずに散策を続ける事にした。何かイベントでもやっているのだろうか

するとそこから「人が殺された」と声が聞こえた

人が、殺された?………

ここは危険だと感じたのでこの観光地を出る事にした


「皆さん、落ち着いて下さい!この方は死後数時間経っているので殺人犯はこの場に潜伏している可能性は低いわ!」


この声は…

前にある事で知り合った警察官の女性の声だ。名前は


フリー「マアサ」


彼女なら何があったのかを詳しく説明してくれる筈だ。

踵を返してマアサの人だかりの元へ行く

マアサが前方に立って大勢へ向けて説明をしていた

すると僕に気が付いたようだ。少し目を丸くしている。


フリー「この観光地で何があったんだ?今はここは大丈夫なのか?」

マアサ「フリー君…。久しぶりね…。まさかこうして再開をするだなんて思ってはいなかったけど…… うん、あのね さっきここで人の死体が見つかったの。」


中背の女性で、身体中が引き裂かれていた

見るからに悍ましい光景だ。この観光地は暫く開園し無さそうだ


マアサ「刃物の様な物で身体中を切り裂かれているわ。死因はそれによる出血多量と内臓破損によるショック死。」

フリー「犯人の足取りは」

マアサ「痕跡が無いの。全く。」


行き詰まりだ。それでは分からない。

……逆に言えば 何か悍ましい予感の様なものがするのだが 


マアサ「現状証拠はまだ探している最中だけど、見つかりそうには無い様な気がするのよね…… 恐らくだけど、完全にお手上げだわ。」

フリー「ここは、危険か?」

マアサ「分からない。一応、この場を今は離れない様にとは言ってあるわ。」

フリー「潜んでいるだろうか?」


僕が見た所は特にそういった人間は見当たらない


マアサ「……恐らく、最初からこの観光地に誰かが仕組まれていたのかしらね……」

フリー「それでこうなったと」

マアサ「ええ。そのとうりよ。それしか考えられないのよね……」


確かにそれ以外に考えられない様な気がする。最初からこの観光地に誰かが居て、殺人を犯したのだ。恐らく……

この人の身体の中で起こった事だ


フリー「内臓破損と言っていたが、詳しく解剖はしていないよな?」

マアサ「ええ。それは…。これからタクトの務める病院にこちらの遺体を搬送して詳しく診る予定よ。」

フリー「恐らくだが、何か発見されるかも知れない」

マアサ「まあ!そんな事まで予測をしているの?流石、フリー君ね。では、何かそういったものが見つかったら伝えるわ。良いわね?」

フリー「ああ。頼む。」


誰も変わった雰囲気の人が見当たらない事から推測した事だ。何と無くの予想だ。本当に、無根拠の直感なのだが。


観光地は一旦静かになり、マアサの説明の後に解散となった。それまでに然程の時間は掛からなかった。捜査も直ぐに終わり、解散となった。

帰宅をした僕は感じていた何気ない不穏な予感というものを考えていた

あの死体もそうだったのだが、どうも、あそこから家路に着くまで誰かに見られている様な気がするのだ

それこそ本当に気のせいだったら良いが

そういえば、マアサにこのチップを渡しておけば良かったな。この腕のチップを……

するとチップが無かった

抜いた覚えは無い

………

………………

ふと、空の模様を確認した

雨模様だ

後ろを確認する

誰も居ないようだ

部屋を出て、別の部屋を散策する

何やら毛のようなものが落ちている

動物は飼っていない

毛の先を辿ると

ある部屋の前で止まった

寝室だ

意を決して静かに開けてみる

………

………………

誰も居ない

おかしいな

ということは

既に「この家」も……?


何のことだか分からない予測を僕はした

この家も、とは何だろうか


この家も、もしかしたら……


そう思い僕は寝室の窓を開けてみた

すると辺り一面が真っ黒だった

どこまでも黒くて何も見えない。何も無いようだ。その瞬間、僕は悟った。これは何者かによる犯行だ。恐らくとんでもない事が出来る人間。その人物は今はこの家には居ない。そして、僕がこのような目に遭っている時点でその人は僕の事を何らかの人物として認識をしている

つまり、僕の知る人間の誰かがやった可能性が高い

この黒の先は恐らく普通の世界だ。窓の外に降りてみると案の定……

黒い布物だった 何故このような事をするのか?

このような事をした人物の正体を考える前に家中の痕跡を探した。しかし何もそういったものは見つからなかった。

その時、僕はある可能性に行き着いた。

チップは恐らく……


あの遺体に奪われた


この家は今は何とも無いと思うが

明日はまた、いや今からでも良かったらマアサとこの事について話がしたいな。いや辞めた方が良いか?マアサは忙しいだろう

あまり気にする事では無いのかも知れない。

が、妙な予感がするのだ。取り敢えずはこの事を頭の隅に置き、食事をして体を洗い、就寝をした。


翌日、空模様を確認したら晴れていた。

起床をし、食事を終え、身支度をし、外に出た。

……

…………

やはりだ。

何者かの視線を感じる

気に止めずに足のスイッチを押して買い物行く事にした

近所の大型の店だ。こうして直接歩足で買い物に出る事は久し振りだな。最近は仕事上の関係で糸や紙が無くなる事が多いから買い足しておく。仕事は家の中で物作りだ。ある会社の企業に就いている。昔から変わらない会社だ。

紙や必要な物などを買い揃えていく。雑貨なども欲しい。雑貨屋も行く。何か手元に置いておける小型人形が欲しい。最近のは廃れてきて、ほぼ黒くて原型が見えていない。そのような物を探し回っていたらアナウンスが鳴った


--ただいま、殺人事件が発生しました。現在は犯人は拘束をされた状態となっており、警察官数人で取り押さえている状態となっております。スタッフの皆様やお客様の皆様は、至急、店内の外へご避難をして下さい。お騒がせをして大変申し訳御座いません。もう一度繰り返します……--


殺人事件……?

またか

僕は妙な予感に囚われながらも急いで外へと出る事にした

店内は大騒ぎだ。あちこちで大移動をしている。

店の外に出ると辺り中は大騒ぎだ。そしてこの場に居るようにと警察達が誘導をして囲んでいる。

暫くすると、店の中から警察数人と拘束をされている男性が現れた。


警察「お通し下さい。この人を車の中に入れます!」


人混みを分けて警察達は車へと向かっていった。犯人はらしき男性は放り込まれるように投げ入れられ、発進をした。

事態はこれで解決らしい。彼以外に犯行をした者は居ないであろうという推測なのだそうだ。しかし決定に近いのだとか。

ふと、辺りに居る警察官達の中に一人だけ、異様な雰囲気を感じ取った。

恐らく、この警官は何かある。

よく見ると、その警官もこちらを見ている事に気が付いた。するとその警官は踵を返して何処かへと去って行った。

その瞬間、僕に付き纏われていた様な何者かの視線が消えた事から家から僕を付き纏っていた人物はあの警官である事が判明した。

しかも、何処かで見た事のある顔立ちだ。目立つ顔立ちなので誰なのか理解出来た。


……まさか、そんな事があるなんて


あの人物は前にある人物の襲撃で亡くなってしまった筈だ

僕の家に黒い布を引いていたのはどの様な意味があるのだろうか

その謎は今は一先ず置いておいた。買い物は暫くすると再開されたので用を終えて行きつけのテラスへ着く。

僕の気に入りの場所だ。日光が心地良い中椅子に座ると程良い眠気がやってきた。が、少し向こうに数人の人達と見知った顔があった。


……スバルだ


前にある事件で知り合った少年だ。僕より一つ上のほぼ同い年。霊感が高くて和服を身に纏った少年だ。正直、美少年だと思う。

地面にあぐらで座って人に何かを諭しているのだろうか?

少しづつ近付いてみた。

スバルはこちらを認識した。「おおフリー!」と大声で言って手を振り、またやっている事に戻った。

何をしているのだろうか?


スバル「……でだ、お前はそろそろ良く無い目に遭うんだ。なので、このお守りを持っている事で降り掛かる厄災みたいなのを成る可く低減出来る効果があるんだ。」

「という事は、安泰に済む、という事ですかな?」

スバル「うん。そうだよー。ただ、家からはあまり出ない様にするんだ。」

「なるほど。やっぱりおかしいよなあ…」

スバル「また何か変だからな。最近の世の中は。」

「外に出たら一気に全てが敵に見えてしまいそうな気がしないでも無い。」

スバル「分かるよ。その中にはやっぱり霊的なモノも関係しているからよ、それ持っとけ。」

「くうう。何も胡散臭く無かった。さっきの除霊?で身体が楽になったからホンモノだったと理解をしたし、お守りまでくれて本当、感謝してるよ。」

スバル「な、に、が、胡散臭い、だよ。じゃあ、気を付けて帰るんだぞ。次に貴方だ。貴方には何やら先祖の霊が苦しんでいる所為か、貴方に霊界の悪い波動が現れている」


彼はいつも通りに仕事をしているようだ。

が、彼もまた最近の世の中は変だと言ってはいなかったか?

これは何かの直感だ。彼と少し話がしたくて暫く待っている事にした

彼と人々の対話は揚々に終わっていき、彼の方から話しかけてくれた。


スバル「で、どうした?フリー。俺を待っていたんだな?」

フリー「ああ。お疲れ様。さっきの話、盗み聞きして悪いんだが、お前もこの世の中が変だと思うか?」

スバル「お前も……という事は、君も感じているのか? 最近は妙な動向が窺える様な気がするんだ。殺人事件も多発しているようだし。」

フリー「やはり君もか。何だか世の中の足並みが早いような……」

スバル「うん。不穏な予感がするな。さっきのはそれで憑いているモノらを払ったり守護札を渡していたりしていたんだ。何でも、脛に痛みが走ったり肩が重かったり口から唾液が大量に出たりとかなんとか」

フリー「憑いて…… その可能性もあるか?……?」

スバル「おうどうした?」

フリー「いいや。何でも無い。」

スバル「お前、暫く前に何者かに尾けられてたか……?」

フリー「えっ?…流石だな」

スバル「それだよ。」


スバルは俺の後ろを指差した。背中だ。何かを取ってくれたみたいだ。

見てみると黒い布だ。


スバル「これさ、少し怨念を感じる」

フリー「家にもこういう物を引かれていたんだ。相手は、死亡している?」

スバル「いや生きていると思うぞ。」


衝撃が走った

生きている


スバル「何か、考え込んでいる様子だな…。家にもされていたって」


スバルは辺りを見回した


フリー「有難う。今は尾けられていない。」

スバル「……そのようだ…… けどこうして悠長にしている場合じゃ無いだろ?どうする?俺の部屋なら貸せるが。警察には言っても聞かなかったのか?」

フリー「警察は忙しそうで。有難う。いいよ。俺は何とか出来る。と思う。」

スバル「ええ〜 何だその釈然としないの。」

フリー「またな。」


踵を返してテラスから出る。

歩きで帰るがゆっくりめだ

すると通信が来た。マアサからだ。


マアサ「ああフリー君!君のいうとうりだったのよ!あの死体、中から小型の電動刃物によって切り刻まれていたわ。」

フリー「チップのような物は無かったか?」

マアサ「チップ?そのような物は、無かったけど?」

フリー「そうか。それで十分だ。またな」

マアサ「え?!あ、ああうん」


やはり仕組まれた殺害だったのだ。

しかしこれだけでは手掛かりが掴めない。

一先ず帰宅路に着く事にした

その時、何者かのあの視線が尾いてくる感じがした

が、瞬時に消えた

家に着くと外観を確認した。特に変わった所は無かった。中に入って確認もする。特におかしな所は無かった。

生きている…… 死んでいなかった

Tへ通話をかけよう。そのような事が有り得るのだろうか

Tは直ぐに通話に出た。


T「どうした?」

フリー「T、麻薬密売人だ」

T「…っ 急に言われても何が何だか分からないな」

フリー「俺もだよT。ごめん。切羽詰まってる。」

T「それってもしかして、あの人の事を言っているのでは無いのだろうな?」

フリー「いやそのとうりだよ。あのさ…」

T「ちょ、真面目に言ってんのかよ!だってその人は」


その人物は俺達が前の事件の時に関係をしていた人物だったが亡くなってしまったのだ


フリー「俺も混乱してる。なあ、死から生が蘇る事なんてあるのか?」

T「無いよ。それとも、その線があったと?」

フリー「かもしれないんだ。多分今あの人に俺は尾けられている。根拠は幾つもあって…」

T「聞く。何だ?」

フリー「家に何故か行形黒い布が引かれていた。それが嗅いだ事のない煙草の匂いがしたのとらこの頃誰かに見られているような気がするのと、今日の昼頃に俺を目で認識をしていた人が居たのだが、その人がかなりあの人と似ていたんだ。」

T「……なるほどな。それじゃあ、切るぞ。」

フリー「考慮は」

T「勿論しておく。またな。急な仕事だ。」


通話を切った。仕事中だった所を申し訳無い

辻褄が合っていないような言い方をしてしまっただろうか?

その時、通信が掛かってきた。Tからだ。

着信すると「フリー!今家か?家だったら直ぐに出るんだ!そこはまた、危ないかもしれないんだ!お前の推測、多分当たりだ…!」

通信はそこで切れた

今この家が、危ない?

家を出たが外観的には特におかしいことは無い

取り敢えず泊まれる所に行く事にしよう。近くでサーチをする。14歳なのでそのまま泊まれる筈だ。ホテルの前で左右後ろを確認した。中で今後の行動を考えた。

家に帰れないらしい。行き詰まりだ。このホテルを暫く借りようか。このまま家に帰れなかったらこのホテルをずっと借り続けようかという能天気な考えが思い浮かんできた。仕事も出来ない。明日は図書館でも行くかな。何か読み物をしたい気分だ

気が付いたら眠っていて、朝になっていた

………ように見えた


俺は四肢を縛られていた


どうも何かの台の上に俺は乗っているみたいだった。

辺りは手術室のような部屋だろうか。幾つもの器具が置いてある。

すると宙に画面が現れた。人が映った


--フリー君。久し振りだね。私を覚えているかな?--


この声は

あの麻薬密売人だ

すると映像の人は少し笑って映像ごと消えた


気が付くと、ホテルのベッドの上だった

夢か

ああいうのは何かの感性を刺激されるので、決して心地の良い夢では無かったな……

辺りはまだ暗いようだ

夜の散歩へ出掛ける。この辺りは街っぽいな。所々街灯が綺麗だ。こういう夜風に当たると自然な光が欲しくなる。

何か、雑貨店が有ればいい。何かを身に付けて何かに変装をして忍び込んでみるのも有りだ。例えば、警察署?病院?店の店員?

発想が膨らんで来る。それなら僕を尾けている人間と濃厚接触出来るかも。

しかしさて、Tはその人が家に何かをしているかもしれないと言っていただろうか?

前方から人が早いスピードで来た

Tだ… 噂を内でしたらちょうどだ


T「フリー!お前、何こんな所でフラフラしてるんだよ?!早く来い!」

フリー「Tの病院へ行けば良かったのか」

T「そうだよ。危険だろ、こんなに外を彷徨いてたら!」


俺は直ぐにTの務める病院へと向かった

到着次第Tは直ぐに俺の身体を診た。何やら異常があったらしい。何の事か聞いた所、どうも何かの感染症に侵されているらしかった。それは日本ではまだ上陸していなくて物珍しそうだ。一週間程何処で過ごしていたのかを問われたが、思いつく限りに言ったが特にそれでは感染するルートにはならないそうだ。そしてTが考え込む。


T「もしかして…… なあフリー。家に黒い布が引かれていたって言っていたよな?」

フリー「ああ。それだろうか」

T「可能性は濃厚だ。この感染症は、一度感染すると治すのが難しいんだ。良いか?俺が治療をしてやる。」

フリー「頼む。」


どうも、病魔が進行すると命に関わるらしい。細胞が次々と腐っていくらしいのだとか。僕が死ぬのは別に気にしてはいないが……

Tは治療をした。皮膚に注射をしたり薬を飲まされたり何かの光を当てられたりしただけだが


T「これで完治だ。俺にもやっとくか。これからまた俺の病棟で安静にしろ。それで良い。外には暫く出るなよ。」


俺は前に彼の務める病院の棟で世話になった事がある。今もまたそうなろうとしているのか。今の世界は平和である筈なのにどうも物騒だ

言われるがままに部屋に連れて行かれ、横にさせられた。


フリー「なあT。あのさ、俺の予測は当たりって言ってたよな」

T「ああ。お前が感染した原因はあの人で間違い無いと思うよ。あと、当たってると思うぞ。推測。」

フリー「死んでなんか無い、生きている…?」

T「そう。」

フリー「……」

T「考え込むよな……。俺も同じだけどさ、そういう事だから感染の原因だ。」

フリー「しかし何で俺は狙われてるんだろ」

T「何か、心当たりは無いか?そうされる原因となった事が無いか出来る限りでいい。隅から隅まで思い出してみろ。」


前の事件が終わってから今までは普通の日常に戻って仕事をしたり遊びに出掛けたりという普通にありふれた日常で、特におかしなところは無かった筈だったような気がした。


T「思い当たる所は無いような顔をしてるな。これではお手上げだな。俺がマアサへ伝えておく。お前は暫く寝てろよ。いいな?」


今は頷くしか無いと思った。危険な人物から狙われている可能性がある。家にも帰れない。

僕は何かの病原菌に感染をしていたのか…

もしかしたらスバルも感染しただろうか?

あの黒い布を触っていたしな

まだ朝方なので就寝しようと身体を横に倒すと横側に違和感を感じた

手で触って調べてみると何か、小さな硬い物に当たった。手に取れるようだ。

見てみるとチップだった。服の中で右肺横辺りにあった。いつの間に?

こんなものは覚えがない。

腕の機器に入れて再生をしてみた


するとあのチップだった

メイドが何者かに連れて行かれるもの

どうして行形見つかったのだろう

服の中に入れた覚えもないな

しかし映像の暴行をした謎の人物が改めて気になった

これは多分俺を尾いている人本人だろうか

死んでなくて生きている

この病院は頑丈なセキュリティで出来ているから多分大丈夫だといいな

暫くはここに居るしか無い。仕事は無いが、ゲームはあるな。アプリから読み物や調べ物もいい。

そもそも最近の世の中は何が起こっているのだろうか

調べてみると、やたらと殺人事件や強盗や賄賂や妙な事ばかり起こっているようだ

これが世界経済というものなのだろうか。自然な事なのだろうか…

得体が流石に分からなさ過ぎる。こういうもの、なのだろうか。アプリで別の読み物をするのがいい。

その前にふとある記事が目に止まった。

国の王は今の世界に対して何かしらの対応をしているみたいだった

が、思う結果にはなってない……との事だ

この王は前に事件の元凶そのものだった

これに対してはどうだろうか

まだ分からない。そもそも何を考えているのか底知れない人間なので考えても仕方がないような気はする

あの王まで対処できてないのでは今の世界はおかしいような気がする

考えても難し過ぎるので読む物を変えた

ニュースであの観光地の殺人事件があった

やはり遺体は中から小型の刃物で切り刻まれて…

その刃物は我が国では危険性が高くて輸入禁止とされている筈のモノだった

綺麗事では通じ無いものだが、それは我が国では世の中の大災害や大殺人に繋がる可能性が高い事から輸入は厳禁とされていた筈なのだ

我が国に入ってきたルートはまだ知れず……との事だ

このような記事ばかりなので、画面を閉じて就寝がいい

すっかりと深く眠って起きたら昼頃になっていた

今度こそ、何かゲームでもやるか

通信が掛かってきた。Tだ


T「あ、フリー!レイって覚えてるか?」

フリー「ああ。前に事件で一緒になったよ。」

T「彼が、君を守りたいそうだ。今、別の勤務先で偶々一緒になってな。お前の話をしていたんだよ。今のお前はやはり、危ないらしい。何者かに尾けられているらしいぞ。」

フリー「守りたい?危ない?」

T「フリーの事を見ていたんだってさ。偶に外で見かける事があったらしいよ。得体の知れない何かから尾けられていたらしい」

フリー「それなら頼む。こちらへ。」


レイは前に事件があった時に一緒に出掛けたり仲間になったりした人間だ。会うのも久し振りだな。暫くしてレイが来て、俺の今の状況やされている事などを簡単に話された。僕を尾けている人間は見るからに得体が知れないらしい。黒くて人の形をしているようだが、ぼやけているらしい

俺には見えて居なかったのは不思議な事らしい。病院の外に出るのは危険で間違い無いらしく、外に少しでも出るのは危険らしい。

それなので、彼が俺が楽しめるようにと幾つものグッズを持ってきてくれた。少し叩けば落ち着くような物とか手に取れば透け通っていくようなものとか、伝書鳩をモチーフにした玩具まである。殆どが少し気楽しい玩具のようで良かった。子供っぽいと思われていそうに思ったが今はそれは別にいい。


レイ「いいかフリー。お前の事を尾けているのはな、あの麻薬密売人の「仮」だ。」

フリー「かり?」

レイ「あれが本体では無いって事だ。分身させた何かか、人形のようなものだ。それがお前を追っている。まあそもそもあの人なんだっていう事自体がまだ確定では無いんだけどな。匂い動きからその可能性が高いんだ。しかし死んだ筈だった…。少し前にある事件で。この辺が謎なんだ。まあ俺はそもそもその事件を見ていなかったけど。多分だけど、あの人は死んだ。けど強いのだろう。例えば、怨恨になって何かの人形に取り憑いた……という可能性も考えられる」

フリー「飛躍をした考え方だが、そういう線しか考えられないような気がするな。それ以外に考えられる線は、実は生きていた… くらいしか思い浮かばない」

レイ「そうなんだよな。或いは「死んでなんか居なかった」か……、まあ俺はフリーみたいに直接その場に居なかったから何とも言えないものはあるけれど」

フリー「あの人はあの時、確かに死んで亡くなった筈なんだ。それはこの目で確かに確認をしていて…… その後に殺人犯は死体処理をするって言って遺体共に異空間へ…… まさか」

レイ「少しおとぎ話っぽく考えているか?俺もその線は真面目に考えているんだが。でも仮の一線だよ。別の可能性としてはさっき言った線」

フリー「うん。少し難し過ぎるよな。何だかぼーっとしてくるな……」

レイ「分かるよ。が、俺達に考えられるのはその線だ。まさかフリーでもお手上げとはな。」

フリー「この僕でも考えられない事があるものだとは…。」

レイ「という事は多分、今はこれはそっとしておいた方がいいのかも知れないな。考えないようにして。」

フリー「……それしか無さそうだが…」

レイ「戻るが、それなのでお前は今はこの病院を出るなよ。絶対にな。」


頷くしか無いような気がした

お手上げだ

もう少し、情報が欲しい。分かる所でも。

再びアプリで読み物を探す。今の世界はどうなっているのか。何故家にも帰れないようになったのか。

ありありと探していると、ある記事が目に止まった。

--遺体に感染症の疑い--

あの観光地の遺体だ

記事の更新時間はついさっきだ

どうやら、遺体は感染症に感染していたらしい。内臓が徐々に腐敗をしていく症状のようだ。それって俺が感染していたと言われるものか?我が国では感染は珍しい筈だ

我が国でも流行ってきているのだろうか?

取り敢えず、家に帰りたい。僕を尾けてきているのはレイやTも時間があったら調べてくれるそうだ。何やら何も助力が出来ないような自分が惨めになってくるような気がしたのは俺が根本的に自分嫌いなのだろうか。

しかし状況的に仕方の無い事だ。寝よう。考えても分からないばかりだ。

そういえば腹が減った。ここ最近何も食べていないような気がする。

レイが持ってきてくれたお菓子の綿菓子をつまんでみる。また懐かしいお菓子で少し笑えたのは救いだ。

しかしこれだけでは足りない。院内の食堂へ行こう。食堂は中は綺麗で結構広かった。目に見えるメニューは普通の家庭料理のものから豪華なものまである。通貨は… しまった。無しだ。ゼロではないが、ほぼ無し。

すると食堂の女性が話しかけてきた。


「あんた、フリー君だね。話は聞いてるよ。お代は要らないよ。好きなものを食べておゆき。メニューから食べたいものを選んで言ってね。」

フリー「有難う。最近は散々な目にあって疲れてるんだ。なので無性にお肉が食べたいかな。この、スタミナたっぷりの具沢山ステーキで。」

「はいよ!それ食べて、沢山元気を出してね!」


何とかアプリで癒しとなるページを見て落ち着く事にした。人類の発展史や娯楽の情報など、動物の純粋な生態性などを見て心を潤していた。--この世の秘宝は何処にあるか?インド洋の海域かもしれない-- --太陽の炎を活かして卵焼きを何百個作れるだろうか?!-- --誰もかれもが出来る8つの秘法!その一、実は肋骨の一番下の骨は動き…--

心が躍ればそのように事実の事でもお遊びのような事でもいい。安らかな気持ちになれてきた。このように次々と面白そうな題の記事を見ていたらある記事がトピックに有り、目を引いた。


--殺人事件被害者の知人の言葉 「謎のタバコの匂いがした」--


その瞬間、凍りついた

そのまま何も考えられないでいたら、ステーキが来た。何処かで気になりながらも、その豪華な見た目に空きっ腹から打ちひしがれ、また心に平穏が戻った

肉汁が滴っている程濃厚なステーキだ。美味い。具も肉汁に浸ったじゃがいもや程よく焦げた塩加減の良い野菜などで食が進む。

すっかりと平らげた僕は女性へお礼を言って食堂を離れた。何となく、何者かに備えて筋肉トレーニングをする事にした。元気が出てきたのだろうか。

このような世界なら、打ち勝ってみせようじゃないか。僕は僕を守らなければならない。この病院の中で僕は勝つ為の策を練らなければならない。

その謎のタバコの匂いが僕の知る匂いなら、間違い無くあの人だと思うんだ

人形でもいい。来い。

その記事を開いて見てみる。どうも、この近辺からは遠い関東で発生した殺人事件のようだ。説明的にタバコの匂いは俺が嗅いだものとほぼ同じようだ。

という事は、それは一人じゃ無いのだろうか?

よく見ると、被害者は名前を伏せてペンネームで活動をしている者らしかった。「フリーライターのルル・フリーズ」と名前にある。本名、氷城 麻弧(ひょうじょう まこ)。

一つ気になった。この者は本名を誰にも同職場の人や仲間にも明かす事無くして最初からペンネームでやっていたに違いが無い。それ故にこのような事になってしまったのではないだろうか

俺の「フリー」という仮の名前と響きが似ている部分がある。確定だろうか…?

犯人は、俺を求めているで当たりだろうか

事件の日付を見てみると、少し前だ。少なくとも、俺が何者かに尾行をされていると思うより前の。

今は居場所を突き止めてきているのか

ここもいずれは不味いだろうか

しかしセキュリティは万全な病院だ。

が、前の事件にここで暮らしていた時にも不法侵入があったのを思い出した。あれは俺への味方として居てくれたという、悪人では無かったから良いだろうが

いや、そもそも院内の人が許したのだろうか

それなら推測するに、あの人も上手く潜り抜けてきてしまうかも知れないのだが

考え過ぎだろうか

その時「多分問題無いだろう」という思考が発生した。Tの務める病院だからだろうか?

とにかく、考えられなくなったので筋肉トレーニングをしよう。何者かにも打ち勝つ為に。

そうやって鍛えていたらTから通信が来た


T「今まだ院内に居るか?!」

フリー「あ、ああ。居るが…」

T「そこもそろそろ不味くなりそうだ。直ぐに出るんだ!」

フリー「ここも…?!」

T「妙な影を確認した。匂いも恐らく一緒だ。進行進路的にこの病院だ。直ぐに逃げろ。」

フリー「この病院に来るとは」

T「限らないかもしれないが、来ている所は同じだ。安全第一で直ぐに逃げろ。」


あからさまに動揺しているようだ。冷静なTがそこまで揺らいでいるという事はそうした方がいいのかもしれない。

Tの言うとうりに病院を抜けると直ぐ目の前にレイが居た


レイ「おおフリー!今お前を迎えに行こうとしていたんだよ!」

フリー「Tから電話が来た。直ぐにここも出ろって事だ!」

レイ「え、何それ…」


レイは疑問に思ったような顔をしたので戸惑った。Tは別の勤務先で仕事中で通信をする暇も無いとの事だった。では、掛かってきた通信は何だったのだろうか。

不気味な予感がしたが考えていても仕方が無い。

が、それがこちらに向かってきている事は事実のようだ。なので直ぐにここも離れた方がよいというのは間違い無いようだ。


……そう


今直ぐに


頭の上に何かが落ちて来たような気がした

手で掴んで見てみる

黒くて粘着性がある

…大便のような匂いだ


レイが俺の頭の上を見た

レイの顔が青褪める

「あああああああ………! ! 主様ああああ……!」

レイは俺の腕を引っ張って思い切り逃げ出した

靴のボタンもスピード最大で走っている。俺の事は引き摺らずに担いでくれた

病院があっという間に遠くになった。そして、黒色の謎の存在も確認した。

あれが俺を追いかけているものか?

戦わずに逃げたという事はレイも一目見ただけで「敵わない」と認識をしたようだ。普段力の強い彼でさえ逃げるとは。

レイは走り続けて何処かへ向かっているようだ。闇雲に走っている訳じゃ無さそうだ

暫く彼の底尽きない体力の走りで街外の自然をも超えた。ここまで来ると俺の見知った所では無い。

何処かの角を曲がり、曲がり、曲がり…… 突然目の前に洋館が現れた

レイは「ここ迄来たらもう大丈夫だ!」と言い、俺を降ろす。

ふと後ろを見ると、そこには誰も

あの謎の影も居なかった

レイは館の扉の前まで来て呼び出しを押した

中から女性が現れた。


レイ「アイラさん、こんにちは!失礼します。レイです。こちらは友人の、フリー。今、俺達は追われていて!何か、謎の影みたいなものに追われていて…!何と言ったら…」

アイラ「いいのですよ。分かりますわ。大変だったわね。こちらへいらっしゃい!歓迎するわ。二人とも、ゆっくりしていってよね。」

フリー「有難うございます。」


二人で礼を言い、中に入らせてもらう。

中は綺麗で、広いようだ。一人で住んでいるのだろうか

アイラと呼ばれた女性はある部屋へと案内した館の中央近くのある部屋のようだった

椅子に座らされると飲み物やお菓子を用意された


アイラ「ここ迄来たの、ご苦労様でした。レイ君がこの子…フリー君を抱えて走って来ていたものね。私にも分かるけど、追いかけて来ていたのは邪悪なものよ。捕まると、殺される。」

フリー「やはりか。あれの正体は物質だろうか?それとも魂?」

アイラ「魂だよ。しかも、かなり悍ましい。あれが君を追いかけている理由はな、君に対して何かの因縁があるからだ。」

フリー「因縁…?あれはそもそも」

アイラ「そうだよ。本体は別に居る。その本体が君に対して何かしらの因縁を抱いている…… 何か、心当たりは無いか?」

フリー「その人がどんな仕事をしているかまでは分かりませんか」

アイラ「そこまでは視えないねえ」

フリー「うーん。僕には覚えが無いですね。このような事をされる原因という因縁も特には思い当たる所が無いです。」

アイラ「そうか…。私にはそれは君への怨念を感じるのだよ。」

フリー「怨念?」


仮にあの麻薬密売人だったとして、何で俺に……

まさか、単純なものか?そんな単純な

単に作戦が上手くいかなかったから俺を恨んでいる……とか?生きているとしたらやりかねないな。


アイラ「何か、思い浮かんだようだね?それなのかは分からないが邪悪な感情である事は確かだね。このままだと危ないよ。今は私が取り押さえているが、いずれはこちらへも意を決してやってくるだろう。」

レイ「アイラさんは第六の目が冴えている方なんだ。」

フリー「目に見えないものが見えると」

レイ「そうだよ。何か悪いモノに取り憑かれていた場合は取り除いてくれたりするんだ。スバルみたいに。」

フリー「心強いな。」

アイラ「スバルを知っているの?」

レイ「え?!スバルを知っているのですか?!」

アイラ「ええ。年端も行かないのに色々と出来る子よね。霊感は、あの子の方が高いよ。」

フリー「彼も俺に付き纏う存在に勘付いている様子は……」

アイラ「どうだった?彼なら多少にはあったかもしれない。その時彼は何かしてくれましたか?」

フリー「いいや、何も。」

アイラ「変だね。しかしどうにか出来る存在では無さそうなのだよね。念が強すぎる。フリー。レイも、それと直接対峙をしてくるんだ。」

フリー「直接?危険過ぎる。」

レイ「どうやってそんな事ができるのですか?」

アイラ「あれは仮の姿だ。本体は別に居る。それを探し出すんだ。あれの痕跡から探し出そう。あれは妙な草の匂いがするんだ。私の鼻でそれを嗅いで、跡を追うと本体に辿り着ける筈だ。」

レイ「それならさっき、フリーの頭の上に何か……」

フリー「そういえば、あの病院で俺の頭の上に何かが落ちて来たな…… 黒くて、粘着性のある、大便の匂いのした」

レイ「だ、だいべ… うんこ?」

フリー「うん。そうだよ。あれのなのだろうか?或いは似せた何か別の物なのかもしれないしな。」

レイ「あれって、そういうの出せるのかなあ。他の生命のでは?例えば、犬猫とかの」

アイラ「あれはそういう物は出ないと思うよ。多分別のかな。大便の匂いが確かに君からしたんだ。多分、別の人間のものかな。」

フリー「なるほど。大体分かりました。あれとの対峙をしましょうか。」

アイラ「今からするかい?準備はこちらでしておくよ。」

フリー「!それはお手数な。甘えてしまってもいいのですか?あれを捕まえ、四肢を縛り付ける……」

アイラ「任せておきなさい。私が全てやるわ。ゆっくりしててね。やってきます。」

レイ「無事に完了がしたら、合図でいいですか?」


アイラは「勿論。」と言い、館の外へ向かって行った

暫くすると戻って来て「おいで」とサインを出した

言われるがままの進路で館の外に出るとなんと、その悍ましいそれが巨大な藁人形のようなものに四肢を縛られて身動き取れなくなっていた!

それは逃げようと必死に身体を動かしている。改めてよく見るとただただ黒色なだけでなくて、顔も黒くて全くの表情も読み取れない。目は光っている。何気に輪郭のようなものまで見えたが、どうも木製だか何かの人形のようだ


レイ「う、動けないのですよね?」

アイラ「ええ。そうよ。フリー君。今なら話せるわ。」

フリー「……ああ。」


僕はそれへと近付いて行く。アイラさんの成せる術で安全な筈だがそれから出ている雰囲気は物騒で底知れなく邪悪そのものだった

近くに来てみるとどうも何かの人形のようだ

目の前まで来て「君はどうして僕を狙うのか」と訊いてみる。すると鳴き声のような奇声を小さく発した。その声はとても人間のものとは思えなく、何かの小動物のような声に聞こえた

鳴き声を数回発し、突然に人間の声のようなトーンを鳴き声のように発声した。それが繰り返され、人間の声のような低いトーンの声色の方が多くなり、軈ては完全なそれになった。


「うううふふふふ」


大人の男性の声のトーンを裏声にしたような感じのものだった。「君は、どうして僕を狙っている?」ともう一度問うた。すると「どうでもいい どうでも……」と男性の低いトーンの声で返ってきた。どうでも、とは?と問う前にそれは身体自体が溶けて地面に崩れ落ちてしまった。液体状のようになり、地面に溶けていった

するとそこから妙な変わった香りのするタバコのような匂いが仄かにした、ような気がした

そしてそこに体に纏っていた黒い布のみがあった

レイが「終わったのか……?」とぼやいたが、僕は咄嗟にある可能性を考えた。ここはまずいのでは無いだろうか。


アイラ「大丈夫ですよ。フリー君。この黒いものに付いていた感染病菌は私が全て洗い流しておきました。お疲れ様でした。」

フリー「それで安心したな。多分、スバルもそうやって感染をしていないのかなあ」

アイラ「そのとうりですね!ご名答。彼も感染していませんね。」

レイ「これで… 事態は、終わったのでしょうか…?」

フリー「いやそれは怪しいと思う」

アイラ「あの人形の本体を見つけ出さなければね。」

レイ「声色は男性のものでしたよね。」

アイラ「あれは多分、本体が声色を変えているかも分からないけどねえ。」

レイ「… … 本物のようには聞こえましたがね…」

アイラ「うん。それは、重要なのかな」

レイ「勿論。男性だったらある人物の可能性が上がりますからねえ。俺達も見知っている人物。」

フリー「まあ、今は本体の居所を掴みたい。流石に何も分からない。未だに。」

アイラ「足取りとなるのは、多分あの匂いね。あれと似たような香りを感じたら、その近くなのかもしれない」

フリー「その場所を知りたいですよね。」

アイラ「手詰まりなのよね…。」


完全に途絶えてしまった。手掛かりは掴めない。レイが「取り敢えず、外に出ましょう。あれは居なくなったので、安全な筈です。」と言った。アイラは「確かに今は居ません。」と言う。「この子は家に帰りたがっているのでね。家に帰らせてあげたい。」「なるほど。そうでしたか。気を付けてお帰りね。」

アイラは僕達を迎えるように見送りを館の外へとした。「また何かあったら来てね」との事だ。

レイが行形俺を担ぎだした。「じゃ、これから帰るぞー!」と意気込んで走り出した

どうも彼か「主様」にしか出来ないような感じの素早い走りでこの街を抜けて行く。流石は人間な訳の無い…… 俺と「同じ」世界の生まれなだけある。彼の素早い走りは直ぐに自然地帯に着き…

するとそこで何やら妙な草、タバコのような香りがした

レイは気付いているだろうか

するとレイも鼻をヒクヒクとさせた。「ん?」と言って突然止まる。「フリー、この香りで正しいか?」「ああ。この匂いだ。」「と、いう事は…」

辺りを俺達は見渡した

しかし誰も見当たらなかった

この場は危険であるような気がした

レイと俺は今度は二人で一緒に走って帰りの進路を行く

自然地帯を抜けて見知った街に着き、走って帰りの道を行く。レイはやがて着いた家にまで着いてきてくれた。扉を閉めて、二人で安堵をする


レイ「お疲れ様、フリー!」

フリー「はあ、はあ!お前はほんっとうに速いよな!取り敢えずはこれで無事かもしれない。家の中もまだ油断をしていない。色々と見る。真剣に。」

レイ「おお。よくやるなあフリーは。俺も気を付けて確認してくるわ。俺はこちらの部屋を見てくる。」

フリー「頼む。……この部屋には何も居ないようだな。こちらは…?……いない、か…… こちらは……」


そうやって部屋中を見回していたら俺の見る限りでは誰も居ない事を知った

同時になにかがおかしいような気がした。レイだ。レイの音が、聞こえない。向こうの部屋を探すと言った筈だったが何も聞こえていない。

見に行ってみるとレイは何処にも居なかった。帰ったのだろうか?その場合は何か一言でも俺に言いそうなものだが

その他、家中に探し回ってみたがレイは居なかった


レイが、消えた

この家の中で


考えても呆然とするばかりだ。この家の中に何者かがいるのだろうか?このように僕一人だけが住む為の小さな家に。

しかしそのような存在は何も見当たらなかった

まさかレイは神隠しにあった?

そうでなければ、帰って行ったかだ…

或いは、実は今まで居たレイは偽物か

などは考え過ぎか

取り敢えずは寝よう。疲れた。家にはやはり何も異常は無いので、身体を洗って食事をして就寝に入る。


そういえば前に事件があった時も彼はこのように突然、居なくなっていたんだ。その時は何者かに連れて行かれていたからだ。今回は……?

やはり分からない。

就寝に入り、ベッドで寝ていると直後に頭に痛みを感じた。針で刺されたような感じの痛みだ。と同時に頭の中にフラッシュバックが起きた。あの麻薬密売人の夢だ。謎の人物が画面に現れるシーンだ。顔はよく見えないが、恐らく本人で間違い無さそうだ。

彼が微笑をした後にシーンはぼやけて終わった

すると頭の痛みも無くなった

今のは何だったんだ

息切れをしていた 暫く息切れをしていてようやく落ち着いてくると眠気が襲ってきた

それには勝てずにそのまま就寝をした

目が覚めると時刻は昼頃になっていた どうもすっかりと寝込んでいたらしい

しかし静かな昼間だ。これだけ色々とあったからだろう。

身なりを整えていると、Tから通信が来た。


T「こんにちは。今どうしてる?何処にいる?」

フリー「家の中だよ。尾行者が居なくなったから返ってきたんだよ。」

T「そうなのか?!あれが、居なくなった……!?良かったなフリー!」

フリー「うん。レイがある所へ連れて行ってくれた。あの謎の存在を居なくさせる事が出来るみたいだったんだ。」

T「ある所?それってもしかして、あの何百年も生きてるあの女性の所じゃあないかな…」

フリー「女性であるというのは正解だ。年齢迄は分からない。」

T「割と男並に背が高くて、長い髪の毛をしていて、多少に女性としての露出はあったか?」

フリー「うん。そうだよ。知っているのか」

T「驚いたな…。その人なら確かに手口にはなりそうな感じがするよな……。レイは今近くに居るか?」

フリー「居なくなったんだ。この家の中で、何故か」

T「フリーの家で!?」


事ごとに事情を話す。Tは驚いたような声を少し出したが冷静に話を聞いてくれた。Tでも何故レイが居なくなったのかは分からないとの事だ。実はレイは敵になったのでは無いかと聞いたら「それは無いと思うがな」と言われた。

取り敢えず、この家は一応まだ居ない方がいいかも知れないという事でTの務める病院に行く事にした。身支度を整えて顔を洗った後に家を出て少し急いでTの病院へ行く。Tがエントランスで腕組みをして出迎えてくれた。こうして見るとやはり美青年だ。

T「おかえりフリー。一応まだここの病院に居ろ。問題の存在は居なくなったとしてもまだ油断は出来なさそうだ。レイが居なくなった。」

フリー「正直、神隠しか実は敵だったとしか思えていない」

T「前者は多分無いと思う。後者も何か変だ。要して全く分からない。が、訳アリだろうな。今は考えられない。」

フリー「まあ家自体に何かなければ帰りたいな。」

T「分からない。調査をマアサの部下に向かわせる。いいな?」

フリー「ああ。頼む。マアサも知っているのか?」

T「知ってるぜ。俺が話したんだ。それが観光地の殺人事件の犯人でもあると確定だってな。」

フリー「やはりか!」

T「ビンゴ。それは居なくなった事も話したが油断は出来ないと言っていた。何かあったら署にも来ていいとの事だ。そうだな… 一週間。ここに居て、何事も無かったら帰っていいぞ。」

フリー「助かるよ。完全に手詰まりだ。このまま何事も無ければ良いが……」

T「ああ。それの本体が見つかればいいな。そしたら完全に安心ものだよな…。」

フリー「そうだ。本体。……全く手取りが出来ないな。こればかりは俺もまだ気を付けるしかない。」

T「俺も何か分かったら教える。じゃあまたな。」


どうにもならない会話をして終わる

どうも正体不明の何者かに踊らされぱなしだ

そもそも多発している殺人事件の犯人もそれで確定だろうか。油断は確かに出来ない。スバルへわざわざ相談を持ち掛けていた者までいたくらいだ

空が曇ってきたな。入るか。自分の部屋へ行くと何か違和感。

誰かが居るような気がした。それはいい。ただ不穏な雰囲気だ

それとは異なるまた別の……

部屋を見回す。が何も見つからなかった。誰も居ない。妙な感じをしながらベッドに入って横になる。気のせいだろうか?ちょうど頭を枕に付けて上を見るような視点になると上に何か小さな物を発見した。指で小さな丸を作ってスコープ状にして見てみる。チップだ。あんな所にそのような物は無かった筈だ。何気に興味を持ったのでそれを取って腕の機器に入れて再生をしてみる。


俺の家の部屋の中だ!


監視をされていたのだろうか?

やはり家にはまだ帰らなくて正解なのだろうか?

誰が何故このような事を……

暫く見ていると部屋の外から何者かが入ってきた

それは見るからにあの夢に出てきた謎の人物だった

夢と同じで暗い色の布を身に纏っていて姿はよく見えていないが

そうだ 麻薬密売人の……

「本体」だ

部屋の中を動き何処かに隠れたようだ

するとレイが部屋の中にやってくる。「流石に何も居ないと思うけどな…」とぼやいた。どうも俺達が走って帰って来た後の事が撮られている風景のようだ。

レイが部屋の中を確認している。するとその後ろから「本体」が現れた

レイを行形捕らえた。レイは呻く。しかし声は微量に抑えられている。そのまま部屋を二人で出て行って何処かへと行ってしまった

映像はそこで終わった

どうやら、今回も連れ去られたようだ

Tに報告しなくてはならないだろうか

この映像そのものをTやマアサへ送るべきだと思った

Tへ映像を送信する。マアサへも送信をした。

するとマアサから返事が来た

-それ、チップ?それとも自分に配信されてきた?-

-チップだ。Tの病院の上にあったんだ。張り付くように。-

-チップ?それは変よ。今貴方の部屋を探し回っていたけど、そういう映像を撮る為の媒体のようなものは見つからなかったわ。誰かの足跡の痕跡も無し。……おかしいわね。この辺りも調べたのだけどね…… この映像見る限り、これはやっぱりあの人かしら-

-マアサもそう思うか?-

-ええ… 黒色の何かで覆われているからよくは分からないのだけどね…… どうやって入れたのかしら……-

-そういった痕跡は無かったと?-

-ええ…。しかしこれは重要な証拠映像よ。こちらで取っておくわね。-


今後も注意をした方がいいようだ。取り敢えずは横になろう。事態は恐らく単純な俺への恨みからによる犯行だろうか

なら直接目の前に現れて来い

いや若しくは遂に俺を見つける事が出来たのか?

ここの病院も危ないかやはり?危機感を感じるのでTに連絡を入れてから病院を出た

この街はある一人の俺への憎悪による犯行だろうか。今も直ぐ近くのどこかに潜んでいるのではないかと思う

安易に外に出てしまった。マアサの元へ向かう事しか浮かばなかった。警察署が一番安全だろうと思ったからだ。

足取りを早くして署へ向かう。道中で左右前後を確認しながら向かった。署に着くとほぼ皆から歓迎された。「大丈夫!もう安心だよ!」「ここに誰か来ないように見張ってるからね!」「マアサさんから聞いてるよ!さあ、こちらへ座って。休んで!」

皆の歓迎が温かい。安心出来そうだ。

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僕は名無しのフリー。名の無い少年だ。 花華 @aaaaak

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