第18話 山小屋(6)
沙耶は真知子と伽耶のいるテーブルに戻って椅子に座った。
「勝則は寝てるの?」と真知子。
「まどろんでたわ」と沙耶。「だけど今頃、姉さんに起こされてるはずよ。」
「ならよかったわ」と真知子。「麻衣はあなたたちが自殺したって聞いてから、ほとんど寝てないのよ。一言も口を利かないで。」
「そう」と伽耶。
「そっけないのね」と真知子。
「あなたたちって、仲がいいのか悪いのか、お母さんにはさっぱりわからないわ」と真知子。
「麻衣姉さんとは悪くないわ」と沙耶。
「あまり話してないようだけど……」と真知子。
「姉さんのことは話さなくても、だいたいわかるから」と伽耶。
「さすが姉妹ね」と真知子。「以心伝心かしら。」
「ええ」と沙耶。「今、姉さんが兄さんに何を話しているかも分かるわ。」
「やっぱりあなたたちは賢いのね」と真知子。「何を話しているのかしら。」
「兄さんに家に帰ってくるように説得してるわ」と伽耶。
「それ、本当なの!」と真知子。「お母さん、うれしいわ。私から勝則に言ってもわかってくれそうもないから、どうしようかって思ってたのよ。」
「今頃兄さんは泣かされて、言いくるめられて、それから優しくされてるはずよ」と沙耶。「いいように手玉に取られて」
「さすが麻衣はお姉さんだわ」と真知子。「それで勝則は家出をあきらめるのかしら。」
「ええ、たぶん」と伽耶。「姉さんに抱っこされてここに来るはずよ。」
「それが本当になればうれしいわ」と真知子。「みんなで家に帰りましょう。」
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