第6話
真子「チッ!」
「幼馴染みかよ…」
「だけどね!」
「コイツは許すワケにはいかないね!」
有美「何?」
真子「この友子サンは、あたしを攻撃して来た聖界のヤツらのリーダーを庇いやがったんだから!」
有美「え?」
真子「ほら、下でブッ倒れているヤツ!」
屋上を見る有美。
誰か倒れているのが見える。
真子「アイツの仲間2人は途中で別のチームがジャマしやがったせいで逃がしたけど、そいつにはダメージを与えてやった!」
「クローズで光弾を腹に食らったから、結構な重傷のハズだよ!」
「なんたって、あたしの光弾の威力は通常の3倍だからね!」
「ロッドの回復力でも15分は動けないハズさ!」
友子(通常の3倍…?)
(何言ってるの、この子…)
(そんな威力の光弾なんて有る筈が無い)
有美「友子さん」
「真子の言ってる事は本当なの?」
真子「本当だよ!」
「あたしを疑う気?!」
有美「うるさい!」
「ちょっと、黙ってな!」
真子「チッ!」
「なんだよ…!」
有美「本当なんですか?」
「聖界のヤツを助けたって?」
友子「別に助けた訳じゃない」
「彼女は傷付いた体で私に戦いを挑んで来た」
「そして…自滅した」
「それだけよ」
有美「自滅?」
友子「重傷の身で魔法奥義を使って力尽きたわ」
「自宅のルーターなら、まだ助かるかも知れない」
真子「だから、あたしがトドメを刺しに来てやったワケよ」
「聖界のヤツは一人でも多く始末しておかないとあたしらのジャマだからね」
有美「友子さん…」
「あたしは真子みたいに自分より弱い者をいたぶって殺すやり方は気に入らないけど、聖界側は殺れる時に、殺っといた方が良いと思う」
友子「…」
有美「あいつらは…あたし達が魔界との契約を破棄しないと殺す事を厭わない」
「命のやり取りだよ」
「友子さんが殺しをしたくないのは分かるけど、見逃してやった相手に今度は追い詰められるかも知れない」
「聖界側は聖獣の結界を守る為なら情は掛けない」
「もし…相手が知り合いだったとしても、どちらかが解約するか死ぬかしないと戦いは終わらない」
真子「そのとーり」
「おまえ、そんな甘ちゃんでよく今まで死ななかったなー」
有美「うるさい、真子!」
「歳上に“おまえ”とか言うな!」
「そんなだから、仲間からも“狂犬”とか言われるんだよ!」
真子「誰が“狂犬”だ?」
「言ったヤツ、ブッ殺してやる!」
有美「とにかく、友子さん」
「こんな事で仲間と争うのはやめて」
友子「そんな事は出来ない」
「彼女は瀕死の身で有りながら、聖獣を守る為に戦った」
「私も契約を成し遂げる為に必要な戦いは避けて通らない」
「彼女に取ってはそれが避けられなかった事」
「その意思と想いは私と同じだと思う」
「それには敬意を払いたい」
「真子の様に戦い、殺す事を楽しむ凶獣とは違うわ」
真子「オイ、コラ!」
「初対面の相手にいきなり呼び捨てとかすんな!」
「つーか、誰が“凶獣”だ!」
「狂犬の上いってるじゃねーか!」
有美「おまえがゆーな」
「友子さんを“おまえ”呼ばわりしておいて…」
友子「…」
有美「ところで、その下でクタ…死にそうな聖界側の…」
「仲間が助けに来ないね…」
真子「フン!」
「そいつの仲間は致命傷じゃないが、そこそこ痛めつけてやったからな」
「戻って来れるワケがない」
「助けに入った2人組もそいつら逃がしたら、サッサと失せやがった」
有美「そう…」
「まあ、真子は魔法奥義を1日2回使える事は聖界側にはある程度知られているからね」
「それを温存していたとしたと考えれば、2人だけで相手にはしないよ」
友子「魔法奥義を2回?」
有美「はい」
「真子は魔法能力が高過ぎて聖界側でまともに戦えるのは7人チームの“トルネード”か”極聖学園の天上静”くらいしかいません」
「真子と戦ったチームは真子の事を余り知らなかったようですね」
友子「そんなに高い能力なの?」
有美「友子さんもさっき戦って分かったと思いますが、真子の戦闘力は相当なものですよ」
「相手が標準能力なら1対1で20秒も保ちません」
「真子は戦闘能力だけなら県内で1、2位を争うレベルです」
真子「戦闘能力だけってどーゆー事よ?」
有美「とにかく、仲間同士での争いはやめてください」
「ペナルティーで魔法能力を停止されたら、聖獣を捕獲できなくなります」
「そうなると契約を達成するのも遅れます」
「蒋さんの為にもなりません」
友子「…」
「分かっているわ…」
真子(しょう…?)
(フ〜ン、兄弟か彼氏の為の契約か…くだらねー!)
「ところでさー」
「下のヤツ、どーすんだよ?」
「結構、時間経ってるけど、ピクリとも動かねーぞ」
秀美が倒れているビルの屋上を見る友子と有美。
有美「行ってみましょう」
友子「ええ…」
屋上へ降下する3人。
横たわったまま動かない秀美。
有美「クローズが解除されて私服になってる」
「脈が無い…死んでるわ…」
友子「そう…」
「彼女も納得行くまで戦った…後悔は無いでしょう」
真子「はぁ〜?」
「何言ってんの」
「後悔ありありでしょ?」
「コイツ、中3か高1みたいだけど」
「こんな若さで死んで満足するわけ無いじゃん」
「何も知らない親が突然娘の死を朝には知る事になる」
秀美の遺体を屋上から蹴り落とす真子。
友子「何をするの!」
真子「『何をするの!』って?」
「こんなとこに放置してたら、見つかるまで何日も掛かるだろーが?」
「あんたに情があるって言うなら、見つかりやすいよーに道路に落としてやるべきじゃねーか?」
「だよねー、有美サン?」
有美「何も蹴り落とす事はないだろ?」
真子「なーに言ってんの?」
「親切に抱えて下に降ろしてやるってゆーの?」
「誰かに見られたら、どーすんのよ?」
「死体がフワフワと地上に舞い降りて来るなんて、目撃したらトラウマもんじゃん」
「そっから、あたし達“魔法少女”の存在が疑われたらマズイだろ?」
「有美サンがこんな事気にするなんて、らしくねーな」
「○○殺せる有美サンなら平気でもっと…」
有美「真子…」
「あたしが…誰を殺したって…?」
真子(ギクッ!)
「い、嫌だなあ…」
「ちょっと口が滑っただけだよォ」
「もう、言わないから絶対」
「怖い目で睨まないでよ」
狼狽える真子。
友子「有美…?」
(何なの?)
(この凶獣が急に…)
(それに…今の有美の殺気は…?)
(有美の契約条件は“自分の死を回避する事”)
(自宅の火事で父親と内縁の妻?と共に焼け死ぬ運命だったと聞いていたけど…)
(いや、有美にも何か知られたくない事情が有るんだろう…詮索は止めよう)
真子「じゃ、あたしらの敵は死んだし…今夜はもう帰るよ、有美サン」
「あと、いけ好かねー、友子」
「いつか決着をつけてやるからな!」
飛び去る真子。
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