第6話

6「なんかつまんなーい」


 町はずれにある農地にドラゴンは出没するらしい。


 農地へ行く途中に勇者パーティーが屠った熊型のモンスター・アルケの伝言を伝えるために村のパン屋へ赴いた。


「いつもこんなことをしているの?」ザイカは不思議そうな顔つきで訊いてきた。


「人って役割があると思うんだ」


 ザイカの瞳孔が開いた。


「僕が得たスキルにはきっと意味がある。戦闘の役には立たないけれど、死者の言葉を伝えた人は皆それなりに満足そうな顔を浮かべる。その顔が好きなんだ」


「私にも役割があるのかな」


 僕は右手の親指を立てて笑顔を浮かべた。


「でも私は、その」


 ザイカが言い淀むと荷馬車が通り過ぎて積荷の果実を落として行った。それをザイカは掴んで突風のように駆け抜け荷台に戻した。


「ほら、役に立った」と戻ったザイカに言った。


「こんなこと、誰でもできる」


「違うよ。皆、出来てもしないんだ。だからザイカには価値がある」


 ザイカの頬に赤みが刺した。


『なんかつまんなーい』と僕とザイカのやりとりを見ていたコーシカが言った。彼女は腕枕で寝そべっている姿勢のまま少し上空に浮かんでいた。


『もうすぐ村に着く。それまで我慢してくれ』


『そういう意味じゃないんだけどな』と言いつつコーシカはさらに上空に上っていった。


 臍を曲げてしまった。まあそのうち戻ってくるだろう。いつもの事だ。


 

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