ヨシオとシゲル
もりくぼの小隊
プロローグ
肘と膝を一直線とさせた身体を弾ませる。見えるのはゴールリングのみ、頭で描くのはゴールを決める理想的な私のシュートイメージ。
頭上に掲げた腕からボールは放れ、一直線と弧を描く私のスリーポイントシュートは――ガンと音を発ててリング端にぶつかった。
失敗だと落ち込む前にゴール下に走り込み、空中を落下するボールを掬い取るようにキャッチし、ボールを片手でニ、三度床に弾ませるドリブルでスリーポイントシュートラインに戻り再びシュート体制に入――ると、同時にコート隅に
「はぁ~時間切れぇ」
弾むバスケットボールを回収しに向かいながら私は、溜め息を吐くように悔しく言葉を漏らした。
一分二十秒以内にシュートを十二本打ち、全て成功させるというスリーポイントシュート
「全然ダメダメなんだよなぁ〜……うんんぅ〜」
私は顔に溢れてきた汗が鬱陶しくて練習着で顔を拭う。スリーポイントシュートの精度を上げたくて
「なあぁんなんだろおうぅなぁ〜、んもうぅ」
練習結果が上手くいかなかった頭まで回っているネガティブイメージな熱を逃がしたくて、ヘアゴムで纏めた髪を解いて乱暴に頭を掻く。はぁ~、少しだけ落ち着いた気がするかなぁ。無駄に時間を潰しても仕方が無いと切り替えまして、水分補給をしてから片付けをしようとボトルを手に取……いやちょっ、
いや、冷静に考えなくても余分に居残り自主練してるんだから飲み物無くなるのは当たり前なんだよね、飲み物足りなくなるって絶対わかるじゃんよ。あぁ〜、計画性が無さ過ぎなんだよなぁ私てばさぁ。
あぁでもしかし、無計画な私の身体はメッチャ水分欲してる。
いやぁでもぉ、バッグから財布出すのってなんか凄くめんどくさくないかなぁ。うん、メンドクサイです。
「水飲み場、行くかぁ」
あんまり運動後に冷水飲むのはよくないんだけど、背に腹は代えられないよねぇ。そんなに距離は離れて無いし、水分補給地はあそこしかない。片付けるまでの時間的猶予もあります。よし、考えを纏めた私は体育館外へと向かう事を決めました。
うちの学校、
て、私は誰に向かって心の中でエセ敬語を発してんだ?
まぁ、だからなんだというかなんというか、私以外に水飲み場を利用する人なんて今はいないだろうと思っていたんだよね。
――まさか、先客がいるとは思いもよらず。
水飲み場に到着した私の視線の先で、水飲み機を使用している小柄な女子がいた。体操着を着ているって事は、私と同じで居残り練習してた運動部?
でも、体育館側からは私以外に残っている子はいなかったから「旧体育館側」なんだろうけど。あれぇ、あそこで部活やってるのって確か……卓球部だったけ?
等と、思い出しながら私は小柄な女子を見つめていると、水分補給を終えたのかその子が顔をあげる。マニッシュヘアな髪型が少し乱れて前髪がハラリと横に流れて私とその子の眼と眼があった。
(わ……ぁ)
気怠げに見つめてくるその潤みの強い瞳は、何だか吸い込まれそうなくらいに綺麗で、私は思わずジッと見つめ返し続けたいという不思議な欲求のままに見つめ返してしまう。練習で火照ったせいか妙に胸が熱い身体を冷ますように息を何度も漏らして、その瞳をしばらくと見つめてしまっていたようだ。
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