君の死に際で
ゆ〜 @WGS所属
やくそく
『自殺、他殺。
撲殺、刺殺、落殺、毒殺、銃殺、絞殺、毒殺、焼殺、呪殺……
もし死ぬならどれが良い?』
『飛び降り。誰かに突き落とされてって感じがいい。』
間髪を入れずに答えた君の覚悟はきっともう決まっていたのだろう。
『へぇ、誰に?』
『君。君が良い。お願いだよ、死ぬなら君に――
「こんなことあったよね」
「……」
君は何も言わない。
ベッドに横たわり、鼻から胃ににチューブを入れられて。
会話をすることも、考えることも放棄せざるを得なくなった君。
病室の外からは慌ただしく走る音が響いている。
「あのね、今、遺書を書いているんだ。
それで、このことも入れるか迷ってて、君はどうしたい?」
「……」
なんで遺書を書いてるのか、という問いは彼女からは出てこない。
別に良い。悲しくなんてないから。
「もし死ぬなら?って聞いた時、君の答えはどうでも良かった。
でも、君が僕に殺されたいって言った時、最後まで見届けなきゃなって。」
「……」
「だから僕は今ここにいるんだよ?それで君の最期を見届けるから。」
「……」
「もうこんな季節だよ、後で銀杏の葉を取ってくるね。これで2枚目だ。
あっ、……そうだ!遺書にも入れといてあげる!綺麗に色づいているものがいいね。」
あぁ、君を突き落としたときもこんな日。
前日の夜にいきなり、『明日の夜、ここで突き落として』って。
その1文と赤く丸のついた地図がメールで送られてきた。
「止めようなんて思ってなかった。メールが来たときから一度も。」
手書きのいびつな丸がどこか辛そうだったから。
「でもね、やっぱり怖かったんだ。君が死んでしまうこと。
一瞬、一瞬だけ
「……」
「それが悪かったんだよね、押し切れなかった。」
手の感覚はドンッ、じゃなくて。
トンっ、だった。歩くのを後押しするみたいな軽さ。
『え。』
最後の一言。
思っていた衝撃ではなかった君は、僕の目を見つめたまま暗闇に消えた。
「その後は、後悔でいっぱいで、君のことを見に行けなくて。すぐにそこから立ち去ったんだ。君が遺書を用意していたお陰で自殺とみなされたらしい。」
ごめん。やりきれなかった。
こんな風に殺風景な部屋で二人、ただ君の死を待つだけなら。
「僕は最期までしっかりとやるよ。」
「……」
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