彼女が寝取られました。だがそれは1つの絶望の始まりに過ぎなかった。

アキノリ@pokkey11.1

1、1:2

上下関係

第1話 Final Voice

「...朧。お前さ。浮気したな?」

「え。あ、浮気...あ、成程ね」

「何が成程だ。ふざけるな」


俺は激昂しながら皆富朧(みなとみおぼろ)を見てみる。

茶色のその自慢とも言える髪の毛が揺れる。

それから小顔が外した視点から戻る。


朧は俺を静かな目で見てくる。

それから朧は複雑な顔をしながらも。

何も言えない感じで少しだけ震えながら俺をまた見据えた。


「...私は浮気してない」

「はぁ?何を言っている。2人でラブホに行った馬鹿はどいつだ」

「あはは。見ていたんだね。言ってくれても良かったのに」

「ふざけるな。誰だったんだ...横の野郎は」

「...」

「まあ言えないなら言えなくても良い。好き勝手にふざけやがって」


俺は公園で人も居るが構わず激怒する。

人が振り返りながら俺達を見るが気にしている暇が無い。


にしてもマジに腹立つなこの女は。

そう考えながら俺は彼女を見る。

朧は俺を見ながら無言になる。

それから沈黙が流れた。


「俺はお前をあくまで大切な彼女と思っていた」

「...」

「...裏切りだ。お前がした行為はな」

「だね。あはは」


朧はどこか儚げな感じでそう言う。

儚げっつーか馬鹿にしているだけの様にも見えるのだが...。

俺は頭にきながら朧を見る。

朧は俺から視線を外した。

それから横を見る。


「朧。何でだ。俺達は誓い合った筈だろ。将来を約束し合った筈だろ!」

「...そうだね。確かにそうだよ。うん。...うん。その通り...だよ」


曖昧な返答だった。

俺はその対応に盛大に溜息を吐いた。

それからイライラしながらもその場を去る為。

そのまま踵を返した。


「晴人」

「何だ。最後に言っておきたい事でもあるのか?文句か?」

「...違う、けど」

「...そうか。ならさよならだ。俺達は分かり合えないから」


そして俺はそのまま歩いた。

それからその場を去る。

空が灰色に見える。

最悪な状態であった。



左野島晴人(さのしまはると)。

俺の名前である。

見た感じ、冴えない凡人高校生だ。

だけど一応、頭は良い。

だからこそ俺は頭がきれるから最悪な部分を見通す力も凄いから。


「...」


予想以上にクソッタレな力だ。

だからクソッタレだと思う。

全てがクソッタレすぎて視界が歪む。


「くそ」


俺なんかが泣くとは思わなかった。

正直こんな苦しみは...父親を失って以来だ。

事故死した父。

横に立っていた俺は。

それなのに。

どうして。


「...考えても仕方がねーな。クソワロだわ。本当に」


そう思いながら俺は立ち上がる。

それから俺は朧との絆の本をぶち撒けてから怒りを発散する。

彼女が好きだからと買った本をぶち撒ける。

そして怒りを発散した。


それから俺は自室から出る。

すると母さんが丁度帰って来た。


「あら。晴人」

「...ああ。母さん。ちょっと外に出て来る」

「...そう。...何かあったの?」

「くだらない事だよ」

「...もしかして朧さんと何かあったの」


スーツ姿の30代ぐらいに見える母さん。

佐野島美奈子(さのしまみなこ)。

俺を気遣ってくれるが。

今はその優しさが痛かった。


「何でもない。すまないな」

「...別れたの?」

「...今はそっとしておいてくれ」


すると母さんは荷物を置いてから俺を抱きしめた。

シングルマザーとして忙しく働いており。

疲れているにも関わらず。


「...晴人。何があったか分からないけど。何かあったなら私は貴方の味方よ。...それだけは覚えておいて」

「そうだな...ありがとう。母さん」

「ええ。じゃあ行ってらっしゃい」


母さんは手を小さく振って俺を見送ってくれる。

俺はそんな母さんの気持ちに応えながらマンションから歩いた。

それから近所のコンビニにやって来る。

そのコンビニに入るとそこに大和楓(やまとかえで)が居た。

俺と同い年の同級生の少女。


「...あ、えと。晴人くん」

「...よお。楓」


顔は見えない。

彼女は髪の毛が長いのだ。

前髪も覆っている。

だからこそ顔が見えないが。

俺を見てから嬉しそうな表情をしているのが分かった。


「今日は...どう、したの」

「...ああ。彼女に振られたっていうか。浮気されてな」

「...そう、なんだね」


楓は俺を見ながら微笑む。

そしてオズオズと手を伸ばしてきた。

その手を俺は?を浮かべながら握ってみる。

すると楓はニコッとした。


「...晴人くん。可哀想にね」

「いや。...問題は無いよ。彼女に振られたぐらいだ。だから」

「...そ、その」

「うん?」

「...私が彼女になってあげようか?」


その言葉に俺は苦笑する。

そして楓に微笑む。

それから俯く。


「俺は今、そういう気分は去った。嵐の様にな。...仮にも本気かもしれないけど。どっちでも無理だ。すまない」

「そ、そう」


楓はニコニコしながら俺を見る。

そして手を引っ込めた。

それからおっさんがやって来てそのおっさんの会計をし始める。

俺はその姿を見てから店内を見渡した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る